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第四話 可愛い大男 side森田 希
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座席表を見て、超ラッキーだと思った。
だって僕の席は教室の端の一番後ろだったんだ。しかも、席に座ってみて直ラッキー!前の席の人、めちゃデカイんですけど!
僕、授業中何でも出来ちゃう!?
なんだか近寄りがたい雰囲気の人だけど、この空間を与えてくれた彼には大感謝ー!
なんてツイてるんだろーって、ルンルンで皆の自己紹介を聞いていた。
もうすぐ僕だ!緊張するーって考えていると…
『ガンッ!!!!』
うっ!!!!わ!!!!
不意打ち過ぎてかなりビックリした。
ぶつかってきた大男君は慌ててこちらを振り向いて、「ごめん」と謝ってくれたんだけど…
その時、少し長い前髪の間から見える切れ長の綺麗な二重がちょっとだけうるんでいて、凛々しい眉毛は八の字に下がっていることに気がついた。
な、なんなの!?
なんか、アレ!そー、大型犬!!!
芸を失敗した時の大型犬みたい!!
あからさまに下がる尻尾がイメージできちゃう!
涼しげな目元、キュッと一文字に結ばれた唇は、黙っていると人を近づけないクールな印象を与えていたのに、大きな体でシュンとする姿を見ているとなんだかヨシヨシしてあげたい気分になった。
気にせず自己紹介をするように促したものの、失敗が余程ショックだったのか大男君こと真咲君はボソボソと名前だけ言って席に着いてしまった。
ねぇねぇ、これがギャップ萌えってやつなの!?なんか、分かった気がするー!
一気に親近感が湧いて、それから友達になるべく毎日話しかけた。
移動教室の時間では何故だか自信満々に違う教室に行こうとしたり、旧校舎の天井の低い入り口に思い切りおでこをぶつけたり…
見かけだけは抜群にいいから、その失敗が凄くシュールなんだよね。
そんな感じで地味に抜けていて、毎日突っ込みどころ満載!
しかも、クラスの人気者の朝比奈君になんだか対抗意識を燃やしているみたい 笑
タイプは全然違うけど、外見は負けてないと思う。ただ、朝比奈君は見かけも性格も女子受けどストライクって感じだから仕方ないかな?
そんな人がクラスにいたら、そりゃ周りも見えなくなっちゃう気持ちもわかる。
女子からしたら、かなり見上げた先にあるその目は、綺麗というよりも冷たい印象を受ける風だと思うし、目が合ってもニコリとも笑わないからなんだか怖そうな奴にしか見えないと思う。何よりコミュニケーションが凄く苦手みたい。
実際口数は少ないけど、思っている事が結構顔に出ていて分かりやすいんだけどな・・・
昼休憩、そんな事をグルグルと考えていると、ふ、と視界に影が落ちた。
「…どうした? 気分でも悪りーのか?」
「んーんー ただね、聡太がね、可愛いなーって考えてただけだよーふふふっ」
最近昼休憩は、朝比奈君の横で盛り上がる女の子達を避けるように聡太と二人で屋上で食べるのが日課。
いつもベラベラ喋る僕が急に黙ったもんだから、心配してくれたのか聡太が僕の顔を覗き込んできていた。
フェンスを背に、お互い横並びに座って覗き込むように首を傾げて近づいてくるので、珍しく下に見下ろす聡太の奇麗な顔に少しだけ不思議な気持ちになる。
聡太は人と話をする時に視線を合わせるのが癖みたい。
不器用だけど、律儀な性格が良く出ているようで僕はこの癖がなんだか好きなんだ。
そんな聡太をからかいたくて、今日も軽口を叩く。
案の定、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。期待通りの反応に僕は思わず吹き出してしまう。
「なんだよ。心配してやったのに。
まぁ、元気ならいいけど・・・」
ボソボソとだけど、最初に比べて随分話してくれるようになって僕は嬉しいのだ。
なんか、いい友達ができたなぁ。
そんな、昼下がり。
☆
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