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第七話 王子様という男
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いつもは一緒に飯を食う希を置いて先に屋上に上がった俺は、フェンスにもたれてあぐらをかき、ヘッドフォンをつけた。
そういえば、入学式以来毎日希と昼飯を食べていたから、久しぶりの一人だ。
賑やかな希が来る前にゆっくり音楽でも聴こうと思ってたんだけど‥なんだか物足りねー・・・
結局、希は昼飯を食い終わっても来なくて、自分で置いてきたくせに少し寂しくなった俺はもらった菓子を広げてモグモグと頬張っていた。
ーーー ガチャ ーーー
来た!
ちょっと嬉しくて、勢い良くドアの方を見ると・・・
そこにいたのは小さくて華奢な希ではなく、すらりと背の高い朝比奈だった。
「真咲君!ここにいたんだね。」
そう言って、太陽を背にして首を少し傾けながらにこりと微笑むと、ふわっと揺れた栗色の髪が日に透けてキラキラと金色に近い色に見えた。
抜けるように白い肌が光の下だとより際立っている。
あまりにも様になるので、無意識に見とれていて返事が遅れてしまった。
俺、今絶対アホ面になってた自信ある・・・・
それにしても、すごい破壊力。
これが王子の実力か!!
悔しいけれど、女子が好きになるのも仕方ねーと認めざるを得ない。
「・・・・おう。何か、用か?」
女子達の相手に忙しいであろう朝比奈は、どうやら俺を探していたらしい。
「うん、用ってわけじゃないんだけど、入学式に話してから、全然話せなかったから追いかけてきたんだ。俺、真咲君と友達になりたくて。」
そう言いながら、朝比奈は俺の横にストンと腰を落とした。
ん?今、俺と友達になりたいって言った?俺?俺と?
クラスでは女子からはもちろん、その明るい性格で男子からも人気がある朝比奈がなんでわざわざ俺と友達になりたいのか分からなくて、返事もせずにぽかんと朝比奈の顔を見つめてしまった。
「あ・・迷惑、だったかな・・?」
「ぜ・・全然!迷惑なんかじゃねーよ。」
「よかった〜!聡太って、呼んでもいい?森田君がそう呼んでるの聞いて、憧れてたんだ!なんか二人を見てると羨ましくて…それに、聡太って、すごく面白いから仲良くなりたくて。 」
言い切って、クスクスと思い出し笑いをする朝比奈。
俺の、何を思い出してんだよ‥・・・
「え?むしろ、俺は朝比奈が羨ましいんだけど‥
あんなにモテモテで・・・・あそこまでモテても大変そうだけど、あの十分の一位はモテてみてーけどな‥」
つい本音が漏れる俺。
あ、なんか余裕無い奴って思われたか!?
今さらだけど、ちょっと恥ずかしくなってきた・・・・
「ぷはっ・・・十分の一!!!控えめだよ!!!
俺なんかより全然カッコいいのに、何言ってるの!
でも、聡太ってそういうの興味あったんだね!
飄々としてて女の子とも話さないし、気にしてないんだと思ってた!」
あははと大笑いする朝比奈の目にじんわり涙が浮かぶ。
引かれてなくて嬉しいけど・・
やっぱ俺ってイメージと違うのかな。
「やっぱり、想像通りだった・・・実は、入学式以来ずっと見てたんだけど、一見クールに見えるのに時々天然で…俺、聡太のそのギャップ、すごく好きだな。」
!!
え、何これ、スゲー嬉しい。
こんな風に、ギャップの素の方を好きって言われるのって初めてで。
「そーか・・・」
本当にうれしくて、なんて言っていいかわかんなくて、
うつむいてそれだけしか言えなかった。
そんな俺に朝比奈はふわっとほほ笑んで、
「俺のこと、好きって言ってくれる子は確かに沢山いるんだ。
けど、話した事もない子だったり・・・
男子からは敵対視されることもあるしね。
大抵の人が俺の見た目に理想を持って接してくるから・・・
あ、でもそれが嫌ってわけじゃなくて、やりたいように、したいようにすると誤解を産んじゃう事も多くて、どうしていいか分からなくなる時があるんだ・・・」
えへへっと笑う朝比奈はちょっと寂しそうで。
バラ色の人生を歩んでるって勝手に思っていたけど、朝比奈にも悩みがあるんだな・・
確かに、女子は友達になるというより彼女になりてーんだろうし、男子も朝比奈に変な事言うと後で女子が怖えーから少し言葉を選んでいるようにも見える。
それでも男女ともに人気があるのは間違いねーし、毎日皆の輪の中にいたから、そんな風に思っていたなんて意外だった。
人に与える印象への戸惑いは、俺も良く分かる。俺の場合は負の方向に、だけど・・・・。
素で、楽しく過ごせたらどんなにいいか・・・
朝比奈の話を聞いて、自然と何かしてやりたいと思った。
そして心から笑ってほしい。
「俺なんて、クラスから距離ありまくりで、希以外友達いなくて寂しいから!朝比奈、仲良くしようぜ。」
「距離ありまくりって・・!ふふ、本当面白い!あ、俺の事も名前で呼んでよ!聡太、これからよろしくね。」
目を細めて柔らかい笑顔で手を差し出してくる朝比奈。
少し釣った目元が笑うと全然印象が変わる。
やわらかくて、優しい笑顔。
・・・・なんで、ちょっとドキッとしちまうんだ俺・・・!
「そうだ、ゆっ・・んんっ、コホン。
悠宇、これ・・・甘いもの、好きだろ?貰い物だけど、一緒に食おうぜ。」
ドキドキを隠すように話題を変える。
名前を呼ぶの、結構緊張するな・・咳払いして、テレをごまかす。
敵対心を持っていた自分がバカみたいだ。
こんなに格好良いヤツが、中身まで綺麗で。
そして、俺なんかと友達になりてーって言ってくれてるなんて・・
持っていたお菓子を悠宇に差し出すと、悠宇はハッと目を見開いて少し固まった。
「あ、ごめん、悠宇なら嫌って程貰ってるよな!」
そんな事に気がつかねーなんて、ちょっと恥ずかしくなってパッと手を引っ込めようとすると、その手を不意に掴まれた。
何故か、悠宇に掴まれた手首が少し熱く感じて…
「いやいやいや!俺が甘いもの好きだって何で知ってるのかなってビックリしちゃって!」
「女子と話してるの聞いちまって、ワリー、盗み聞きとかするつもりじゃなかったんだけど。」
「そっか、そういえばそんな話してたかも。覚えててくれたなんて、嬉しいよ。ありがとう!ありがたく、頂きます!」
美味しそうにお菓子を食べる悠宇は、澄んだ青空を背にしてとても絵になっていた。
☆
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