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第九話 気になるのは王子様
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悠宇と屋上で話してから数日。
悠宇を取り巻く女子達もさすがに随分と落ち着いてきたから、一緒に過ごす時間も増えてきていたんだけど・・・
今日は最近にしては珍しく、朝軽く挨拶を交わしてから悠宇はずっと遊びの誘い責めに合っていて話せない時間が続いていた。
まだ誰にもなびかねー悠宇に、女子達も本気でアピールしようってワケか・・・。
なんとなくやりとりを聞いていると、OKするわけでもなく、当たり障りのない言葉を選んで断っていて。
悠宇は、今までだってめちゃくちゃモテてそうだけど、真面目なのか?それとも理想が高いとか??やっぱり、内面を見てくれるヤツを探しているのか・・・?
なんてぼんやり考えていると、栞ちゃんが教室に入ってきた。
そういえば、最初は対抗意識を燃やしていたハズなのに、屋上で話して以来悠宇のことばかり見てしまって・・・
いつの間にか栞ちゃんの事を考える事が無くなっているのに気がついた。
盛り上がる女子達は、悠宇と話そうと栞ちゃんの席まで取り囲んでいて全く気付かない。
少し離れた所でモジモジとその様子を見ている栞ちゃんに気がついた悠宇は、立ち上がって爽やかスマイルで栞ちゃんと挨拶を交わし、さりさげなく取り巻きの女子を動かしてスペースを空けた。
誰も嫌な気持ちにならない、スマートな対応だ・・
そんな悠宇に対して栞ちゃんは真っ赤になって俯いてお礼を言っていた。
それからは、昨日と同じように女子が質問するのをチラチラと伺う様に聞いていて・・・
あぁ、やっぱり栞ちゃんも悠宇のことが気になるんだなって・・・
でも、そんなにショックでもなくて・・・
悠宇にそんな笑顔向けられたら、好きになっても仕方ねーか。なんてことまで思ってしまう。
「ねぇ、ねえってば!聡太!
どしたのそんな怖い顔して隣みちゃってさー
なになに?朝比奈君にヤキモチー?」
「そんなんじゃ、ねーけど・・・。」
確かに、前はモテる悠宇に嫉妬してた。
でも、皆に打ち解けようと努力していたり、期待に答えようと少なからず頑張っている話を聞いて、ただでさえキラキラしているのに、中身までイイなんて皆惹かれるに決まってんじゃん・・って思うようになっていて・・・。
そういえば、俺は希に暗いオーラが出てるからだめだなんだとよく言われる。
悠宇みたいなキラキラオーラって、頑張れば出るのか・・・?
またくらだない事を考えて、口数が少なくなった俺を見て、すっかり勘違いした希はクスクスと笑いながら俺に向かって手を伸ばす。
俺の前髪をかき分けて、眉間のシワを人差し指でなでるように擦った後、ニヤリと笑う希。
「そんなスネないでよー気持ち分かるよ?おんなじ男なのに、こうも違うかなって。
俺なんて、チビだからさー!聡太はさ、黙ってジッとしてればモテるから、大丈夫だよ!ほら、眉間のシワ伸ばして!女子が怖がって逃げちゃうよっ!」
と言って、ツンと眉間を突いた。
黙ってじっとしてればって・・・
フォローになってねーよ!
可愛い顔して、こいつはいつも中々辛辣な事を言う・・・
あっけらかんと話すその姿、でも、何故か憎めなくてつい笑ってしまった。
俺って、こんなに気にせず話したりふざけ合う友達って実は初めてで、それがこんなに心地いいなんて知らなかった。
「ちょ、そこ笑うとこ!?
ツッコむとこじゃないのー!???」
バンバンと俺の肩を叩いて、楽しそうに笑う希。
そんな俺達を見て、悠宇が話しかけてきた。
「何、楽しそう。何の話?」
「あ、朝比奈君~!聞いて聞いて~
聡太がね、モテモテの朝比奈君がうらやましくて仕方が無いんだって~」
「ちょっ、希…俺、そんなこと言ってねーよ。俺は悠宇が気になってただけだ!」
誤解を与えるような事を言う希にムッとして言い返したけれど・・
二人の一瞬の沈黙が俺にを冷静にさせた。
あれ、俺、今ちょっと変な言い方したか・・・?
恐る恐る悠宇を見ると、唖然として固まっていて・・
バッと目の前の希を見るとニヤニヤとしていて。
・・・・・・あ、男が男を気になるとか、なんかキモイよな!?
「いやいや、そーいう意味じゃねーから、ただ、悠宇が頑張ってんな、とか、ちゃんと楽しんでるかなとか気になって・・・」
「なんなの聡太、聡太に心配されるようじゃ、朝比奈君もお終いだよ!
ね、朝比奈君・・・・・・・?」
真っ赤になってうつむく悠宇。
俺、またキモイ事言った!しかもなんだよこの上から目線的発言・・・
はー・・気持ちをうまく伝えるのって難しいな・・・。
男の俺なんかが心配したからってじっと見てるとか、変気持ち悪かったよな・・?
黙って俯く悠宇を見ていると、自分の語彙力のなさがつくづく嫌になって居た堪れない気持ちになったーー
☆
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