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第十五話 とっておきの場所
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放課後、希は兄貴の手伝いで急ぐといって、さっさと帰ってしまった。
希と俺は帰宅部で、悠宇は通学時間が長いからすぐには部活に入らないけれど、慣れてきたらサッカー部に入りたいと言っていた。
二人になって、すこし沈黙。
いつもなら、悠宇が色々と話を振ってくれるんだけど・・・・
やっぱり今日はいつもと違う気がする。
何か、悩んでるのか?疲れてる?
俺はまた中学の時みたいにガッカリされるのが嫌だったから、自分を隠してクールに振る舞うつもりだったけれど、結局モテる事もなく、ドジばっかやってて・・・悠宇はそんな俺もいいって言ってくれた。
今度は俺が元気づけてやりたい。
「悠宇、俺行きたいところあんだけど、いいか?」
スウィーツが好きだと言っていた悠宇のため、休憩時間に必死にググった近場の美味しいと有名なケーキ屋に連れて行ってやるつもりだ。
「うん、聡太にまかせる!じゃあ、行こうか!バス何時のがあったかな・・・?」
時計を見ながら二人で教室を出る。
「朝比奈君ばいば~い!」
「また明日ね!」
教室を出るまでに繰り返されるこのやり取り、悠宇を見て女子達が嬉しそうに声をかける。
いつも通り、明るい悠宇。
やっぱり俺の気のせいだったか?
校門前のバス停は、下校時間になると長蛇の列ができる。
悠宇は目立つからまた囲まれるだろうしな・・・
「・・・なあ、悠宇、ちょっと2駅位歩かねぇ?寄り道しよーぜ。」
「寄り道?ふふ、いいね、俺帰り道歩くの初めてだよ。そういえば聡太、今日はバスケ大活躍だったね。」
「俺はなんもしてねーけど、悠宇は何本もシュート決めて、すげーカッコよかった。」
「っ・・・ありがと・・・・」
あれ・・?
なんか、前より会話が続かねー・・・
もしかして、元気がねーんじゃなくて、俺がつまんねーーからか!?
話題・・・盛り上がる話題・・・・・・
な・い・・・!!
考えれば考える程、どれもつまらなく思えてきて何も言えなくなる俺。
無言で坂を下って少し歩くと、左手に長い上り階段があって、かなり上に鳥居が見えている。ここは絶景ポイントで、市街地から高校まで続く道にいくつかある寺や神社が全部見渡せるんだ。
あ・・そうだ・・・
「悠宇、ここ、上がろう。」
俯いて歩く悠宇の肩をポンと叩いて、階段を指差した。
俺が肩に触れると、俯いて歩いていた悠宇が少しビクリとしてこちらを見上げて・・・
「っ、バスから見てたけど、見上げるとかなり長いね!うん、行ってみる。」
やっぱりおかしい。単純に俺が嫌われたのか?
悠宇は優しいから、俺の誘いを断れなかったとか・・・
それ、あり得るな。
そんな事を、グルグル考える。
俺、気がきいたこと言えねーし、話題もねーし。
友達になって後悔してる、とか?
そう思った瞬間、胸がズキリと痛んで・・
や、ヤベー・・今ちょっと泣きそうになっちまった!
今までだってガッカリされてきたじゃねーか、今更何傷ついてんだよ。
はー・・今日、誘わねー方が良かったのかな・・・・
無言で階段を上っている悠宇。今、何を考えてるんだろう。つまんねーって、思ってたら申し訳ねーな・・
「はぁ~やっと上った~・・・なんか、凄い達成感。」
「・・悠宇、後ろ向いてみて。」
「・・わ!!すごい!!バスがあんなに小さく見える!
学校も・・・・・」
少し強い風が吹いて、悠宇の髪がなびく。
「気持ちいーね。」
気持ち良さそうにニコニコと伸びをする悠宇を見て、俺も頬が緩む。
「よかった・・」
「え??」
俺の方を向いた悠宇が、ビックリしたように目を開く。
俺、今スゲー情けない顔してるんだろーな。
「・・・・・悠宇、今日いつもと違う気がして・・・
元気ねーのかなって思って誘ったんだけど・・
益々元気なさそうで、よく考えたら俺盛り上げたりできねーし、
俺といたらツマラナイねーよなってちょっと後悔してて。
でも、この景色見て喜んでくれて良かったなって。」
今度はうまく、言えたよな‥?俺の気持ち‥
「・・・・・・・・・」
そんな俺の言葉に、悠宇は眉をぎゅっと寄せて、泣きそうな表情になる。
「俺・・また、変な事言ったか・・・・?」
フルフルと頭を振る悠宇。でも、何も言ってくれない。
こんな時、何て声をかけたらいいんだ?
うまく言葉が出ない。もどかしい・・・・・・・・
無意識に、手が伸びて、泣きそうな悠宇の目の下に親指を当てた。
すっと右目を擦って手を離す。
悠宇はびっくりした顔。そして、本当に涙がポロっとこぼれた・・・・・。
☆
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