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第十八話 お勧め!スウィーツショップ side朝比奈 悠宇
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ドヤ顔した聡太が連れてきてくれたのは、とても可愛いカフェだった。
クリーム色の看板にブラウンのふちどりがされたピンクの文字で「 feliĉeto」と書いてある。
聡太が、「フランス語で、小さな幸せって意味なんだぜ。」って、またまたドヤ顔で教えてくれた。
店内は女子高生や仕事帰りのOLさん達でとても賑わっていた。
皆、会話を弾ませながら、幸せそうにケーキを頬張っている。
よし、俺も選ぶぞ!
ケーキが並ぶショーケースを見て、さらにテンションが上がった。
フルーツを中心に、すごく繊細な飾り付けでどのケーキもキラキラして美味しそう!
「聡太~~~~!どれもすごく美味しそう!めちゃくちゃ悩む~~~~!」
嬉しくてショーケースを見つめたまま、横に立つ聡太に話しかけたんだけど・・・
返事が無い。不思議に思って横を見ると、聡太はかちーんと固まっていた。
ん?どうしたんだろう・・・
すると、後ろに並ぶOLさん達の会話が聞こえてきた。
「男の子二人でケーキ屋さん来てる!」
「甘いもの好きなんだね~」
「あ、茶髪の子の顔見えた!めちゃくちゃカッコいいよ!」
「甘いもの好きとか可愛い~」
「隣の子、大きいよね~」
目立つ事が苦手な聡太の事だ、俺達が浮いてるの気にしてるんじゃないか!?
ちょっと背伸びして、聡太の耳に顔を寄せて耳打ちした。
「聡太、こういう時は、堂々としていた方が目立たないんだよ。」
チラッとこちらを見た聡太は、一瞬何か考えてから・・・
「すみません、そこの、ショートケーキと、ベリーベリーのチーズタルトください。カフェオレのセットで!」
小さな声で「わかった」と言った後、急に背筋をシャキッと伸ばしてキリッと注文をした。
ぶっ・・・!わ、分かりやすい堂々ぶり!素直で可愛いな~。しかも二つ頼んだ!!!
思わず噴き出す俺をキョトンとした顔で見下ろす聡太、そんな顔も可愛くて自然と笑みがこぼれる。
聡太といると、元気をもらえるな。
「あ、俺は自家製イチゴの生パイとコーヒーのセットで!」
「はい!空いているお席にお座りになってお待ちください。」
店員の女の子が聡太をチラチラ見ながら注文を受けてくれた。
前に俺の十分の一でもモテたいって言っていたけど、十分モテてるのに・・・
そんな店員さんの視線に気づく事無く、店内を見回す聡太。
「あ、悠宇、窓のとこ空いてる。行こうぜ。」
混んだ店内で空席を見つけて嬉しそう。
聡太はちょっと鈍感な所があるから、俺にとってはそれが救いかも。
でも、逆にストレートに気持ちをぶつけてくる子がいたら、すぐにうまくいっちゃうのかな・・・
しばらく彼女なんて作らないで欲しい、なんて勝手な考えが頭を過る。
せっかく楽しい時間なのに、またこんな事で考え込んでしまった・・・
お客さんがどんどん入って来て、すぐに動かない俺に痺れを切らした聡太は俺の腕を取って、「ほら、早く。」と言って席まで連れて行ってくれた。
「わ、見て!あの子たちカッコいい~!」
「あれ?背が高い子、友達の事ひっぱってるよ!可愛いっ」
「なにあれ~可愛い~」
「聡太、目立ってるよ!?大丈夫なの??」
「え?悠宇が堂々としてたら目立たないって・・・・」
「え、コレもその理論を適用したの!?あは、あははは!」
聡太の天然さに、左腕を引っ張られながら右手でお腹を抱えて笑った。
「なんだよ・・・・席、とられちゃうだろ!だいたい、女子の「可愛い」は意味がわかんねぇ。」
「あはははは!確かに!」
すごく楽しい気分で気分で席に着く。ちょっとドキドキするけど、それ以上に楽しいが勝ってる!
席に着いて、可愛いって、万能語だよね、とか話していると、ケーキが運ばれてきた。
「そういや聡太、二つも頼んだんだね!選びきれなかったの?」
「いや、初めて来るケーキ屋では、ショートケーキと、もうひとつ気になる物を頼むことにしてるんだ。俺は店の実力はショートケーキに出ると思ってる。でも、時々チーズ系やタルト系にのみ特化しているところもあるからな・・・ケーキ屋は奥が深いよな・・・。」
腕を組んで、ケーキを見下ろしながら真剣に語る聡太はいつになく饒舌で・・
あーなんでこんなにカッコいいのにそんな可愛いんだよ!
また新たな一面を発見。森田君にもらったオヤツを嬉しそうに食べていた聡太だけど、甘いものには相当なこだわりがあるらしい。
「ケーキ、大好きなんだね。」
「え、あ、まあ・・・・似合わないって言われてからは、あんまケーキ屋には行ってないけど・・・」
「え?似合わない?何それ!好きなもの食べたらいいんだよ。誰かにとやかく言われる筋合いない!」
似合うとか、似合わないとか、俺そういうの嫌いだ。
突然俺が怒ったから、聡太が慌てて口を挟む。
「いや、ま、もう気にしてねーから!これからは、悠宇と来れるしな。」
「あ・・・大きい声だしてごめん。そんな事で聡太が好きな物我慢してたかと思うと頭にきちゃって・・・飲み物冷めちゃうから、食べようか!」
二人でいただきますをして食べ始めた。
ん、うまい!サクサクのパイにクリームと甘酸っぱいイチゴがマッチしてる!パイが甘めなのがいいな・・幸せだ・・・
聡太はショートケーキから食べ始めるらしい。
あまり悟られないように、パイを口に運びながら、チラリと目の前の聡太を見る。
大きく開けた口にパクリと消えていくケーキ・・・少しうつむき加減の前髪の間から、切れ長の二重の瞳がパッと少し大きくなる。ごくん、と飲み込んだ後は口元をほんの少しきゅっと上げて・・・これは、絶対に美味しい表情だよね・・・。
ちょこっとの変化だけど、それが分かるのが嬉しかった。
目が合うと、聡太はさっと視線をそらしてしまった。
美味しそうな顔、見られたの恥ずかしかったのかな・・・
「悠宇、うまい?」
「うん、すごく美味しい!!!」
満面の笑みで答えると、また、ふわりと優しく笑ってくれた。
まだ心配してくれてたんだな・・そう思うと胸の奥がじんわり温かくなった。
「あの~すみません~」
「よかったら私達とお話しませんか?」
「その制服、東上坂高校ですよね!私達、一つとなりの区の西女です♪」
突然、隣のテーブルに座る三人の女の子に話しかけられた。
明るい髪に、短いスカートの派手な雰囲気の子達だ。
こういう事は良くあるけど、いつも適当に断っている。でも・・・
今日は聡太と一緒だ。
聡太はモテたいって言ってた、けれど、人見知りだからうまくいかないんだよね?
本当は協力したくないけど、ここは聡太のために・・・・
「うん、いい・・・「ごめん、俺達、二人で食いてーから!」
俺の言葉にかぶせるように聡太が断ってくれた。
「あ~~すみませ~ん、邪魔しちゃって!」
女の子達は「残念~」といいながらまた三人で話し始めた。
「さ、食おうぜ!」
そう言って、フッと笑ってまた豪快にケーキを口に運ぶ聡太。
元気が無い俺の為を思ってくれたのかな・・それとも聡太も本当に俺と二人で過ごしたいと思ってくれた・・?
どちらにしても、即答で断ってくれた事が凄く嬉しかった。
☆
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