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第二十二話 自分で動く難しさ
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希に、『気を持たせるような事をしたらだめ』 『距離が近い』と注意された俺。
それがどんな事を指しているのか良く分からなくて、俺は今この状況にひどく困惑していた。
放課後ーーー
希は今日も兄貴の手伝いがあると言って、早々に下校していった。
悠宇の机には鞄があるものの、教室に姿は見当たらない。
そして、俺の席の周りには・・・
例の悠宇の取り巻きの三人と、横手さん、そして、横手さんと仲が良い栞ちゃんに囲まれていた。
昼休みに、希が「人の気持ちを自分の口から言うのは良くないから・・」と言いつつ、散々遠まわしに説明されて、横手さんが俺に好意を持っているという事が分かった。
話しかけてくれて、赤くなって、モジモジして・・・言われてみれば、そうなのかもしれねー。
と、いうことは、この、状況は・・・
悠宇の取り巻きの豊田さん、三好さん、三浦さんの三人は、悠宇が居ない間の暇つぶしだと思うけれど、俺に話しかける横手さんを必死にフォローする栞ちゃんは・・友達の恋を応援しに来たって感じだろうか。
相変わらず、優しくて穏やかそうな栞ちゃん。
そんで、栞ちゃんは、多分悠宇が好き。
今、栞ちゃんは横手さんの恋を応援している。
イコール俺には興味が無い。
一時は栞ちゃんの事を好きだと思っていたハズなのに、この現実を目の前にしても俺の心は動かなかった。
改めて希に言われた事を思い出す。
『見た目や印象だけじゃなくて、今度は自分で動いて、ちゃんと好きな人を見つける』
これ、結構ガツンときた。
今まで、自分から動いた事が無いって、改めて気付かされたから・・。
わーわーと盛り上がる三人組の会話に、適当に相槌を打ちながらそんな事を考えていると・・
「で、真咲君は、気になる子とかいるの?」
「そーそ!彼女とか、いたりして!?」
豊田さんと、三好さんの質問に、横手さんがビクッとする。
気になる子、と言われて、一瞬頭に浮かんだのは・・・あの日の悠宇の泣き顔だった。
・・・・・何で、今思い出すんだ。
「いや、いないけど。」
俺の返事を聞いて盛り上がる三人を見て嫌な予感がする。
このままここに居たら、悠宇が良くされている「質問攻め」が始まるような気がして慌てて立ち上がった。
「ごめん、俺、ちょっとトイレ。」
「あ~じゃ、また今度話そうよ~、週末予定なかったら、どっか遊びに行こ~」
「あ、私も行きたい!」
真っ赤になって、行きたいと言ってくれる横手さん、
ちょっとだけ、胸がズキリと傷む。
悠宇も、こんな気持ちでいたのかな?
好意って、答えられないとこんなに辛いもんなんだな・・・
単純にうらやましいと言っていた自分が恥ずかしくなる。
でも、告白されているワケでもないし、どうしていいかも分からず俺は席を立って急ぎ足で教室の入り口に向かった。
ガラっ・・・ーーー ドンッ。
勢い良く扉を開けて、一歩廊下に踏み出した瞬間に肩口と体に衝撃。
頬に相手の髪が当たって、フワリと、甘いムスクのような香りがする。
「あ、ワリィ・・・・」
ぶつかったのは・・・・悠宇だった。
少し下にある、俺を見上げた悠宇の瞳が大きく開かれた。
「っ!聡太!ごめんっ」
顔がぶつかるのは避けれたものの、悠宇の両腕の下に俺の腕が潜り込んだような形になっている。
慌てて離れようとする悠宇の腕を下からぐっと押し上げるようにして脇をかかえ、そのままズズズッと教室の外に押し出してから、ドアを閉めた。
「今、教室ちょっと戻りにくいから、屋上付き合って。」
「っ、うん。」
悠宇が女子達の誘いを一生懸命断っていたのを思い出し、今戻ったらまたしつこく誘われるんじゃないかと思って押し出したけど・・・
今、これ、抱き合ってるみたいになってる。
一度離れようとした所を俺に抑えつけられたから、自分から動かない悠宇。
ごめん、と差しこんだ手を引き抜く瞬間、悠宇の耳がまた赤くなっている事に気がついた。
それと同時に香る甘い香り・・・。
何故か、このまま腕を回してギュッと抱きしめたい衝動に駆られた。
☆
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