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第二十三話 俺の心臓がもちません side 朝比奈 悠宇
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聡太の腕に一瞬力が入って・・・
このまま抱きしめられるのかかと思ったら、直ぐにその腕は引き抜かれてしまった。
抱きしめられるなんて、そんな事あるはず無いのは分かってるんだけど・・
聡太は、一瞬ぶつかった視線をふいっと逸らして、無言で屋上へ続く階段に向かって歩いて行く。
俺は赤くなる顔を隠しながら慌てて後を追いかけた。
男同士、押したりのっかったりなんて、そんな事じゃれてる時に良くある事だ。
良くある事、のハズなのに・・・抱きとめられたまま押し戻されて、聡太の香りや息遣いがリアルに伝わってきて・・思い出すと、心臓がぎゅっと痛くなって、また顔に熱が集まってしまう。
ガチャ・・・
聡太の後を追って屋上に入ると、部活中という事もあってかそこには誰もいなかった。
やばい、今日は赤面しすぎだよな。
さすがに変に思われるだろ・・・・・
頑張れ俺!平常心だ!あんなの、よくある事、よくある事・・・!
話す事が思いつかなくて、聡太が腰を下ろしても、俺は立ったまま、フェンス越しに校庭を見下ろしていた。
五月とはいえ、夕方の屋上に吹く風は少し冷たくて、ブルッと震える。
ちょっとサム・・・・あ、でも頭が冷えて良い感じかも。
木下君と吉本君がじゃれ合う姿を思い出す・・・・うん、よくある事だ・・落ち着け俺・・・
あ、サッカー部の練習が見える!
こうして見ていると、一緒に走りたくなるな・・・。
よし、良い感じに気持ちが逸れてきたぞ・・・
「悠宇。」
遠くに聞こえる部活の掛け声、ふいに、低くて心地よい声に呼ばれて意識を戻す。
よし、明るく明るく・・・意識しないように、横に座る聡太を見下ろす。
「なに?
・・・・えッ!?」
あぐらをかいて座っている聡太は、俺の方に向かって両手を伸ばしていた。
思い切り、無表情で・・・・・・
何コレ、どういう意味・・・?何かの冗談?
てか、なんでそんな無表情なの・・・?!
なんでもないような顔を取り繕いながら、俺の頭の中は大パニックだ。
なんか、冗談言って笑うような雰囲気でもないんだけど・・・
手を伸ばしっぱなしの聡太は、動かない俺をじっと見上げて、「ん」と言って両手をさらに広げた。
・・・・・・・・・・・・・・。
良くある事・・・かな・・・?これは・・・・
あ、そーいや、森田君はよく聡太に抱きとめられてるかも・・・・
よし!ここで変に動揺したら意識してるみたいでおかしいし!!!!!
あくまで、ノリが大事だ。
頑張れ俺!!!!!!
俺も両手を広げて、ゆっくりアスファルトに膝を下ろす、そして両手を広げた聡太に抱きついた。
・・・・あ、・・・あれ?
聡太の両手は宙に浮いたまま、抱きしめてこない・・・・
「聡太?」
抱きついたまま、少し顔を離して聡太の顔を見ると、
目を見開いて驚いた表情をしている。
「え?え?あれ?違っ・・・た・・・・?」
急に恥ずかしくなって、聡太の肩をぐっと押して距離を取ろうとすると、
ギュっと、抱きしめられてーーー
「~~~~ッ、~あははッ!!!」
聡太のあぐらの間に膝立ちしてるから、抱きしめてきた聡太の顔は俺の胸の辺りに埋もれていて、見えないけれど、今まで見たこと無い位笑ってるって事は分かる・・・
「な、何、もー・・意味分かんないんだけど・・・」
聡太の笑いが収まらなくて、俺も緊張の糸が切れて一気に力が抜けてしまった。
しばらくして、俺を抱きしめた格好のまま顔を上げて話してくれた真相はこうだった。
自分が誘って屋上にあがったけれど、俺が寒そうにしているのを見て悪いと思った。
その時、以前森田君が聡太を椅子にした時に結構暖かかったのを思い出したから、ここに座っていいよって意味だったらしい。
しかも、ちゃんと「寒いなら、希の時みたいに椅子になってやるぞ」って話しかけてくれたらしいんだけど、てんぱってた俺は最後に呼ばれた名前しか聞こえてなかったってオチ。
「っ、ふ、悠宇はこうやって暖められたいのかとか、色々考えちゃって、びっくりして・・・一周回って何かおかしくなっちまった。聞こえて無いと思ってなかったから、ゴメンな。」
まだ笑ってる聡太。俺の唖然とした顔と慌てた様子がツボだったらしい。
「いや、俺でかいし、森田君みたいにすっぽり入らないから・・・
椅子になってもらうっていう発想なかったよ・・てか、聡太、両手を広げるなんて紛らわしいポーズしないでよ!!」
ゴツンと聡太の頭に軽くこぶしを振りおろす。
「いって~~~はは・あはは・・・は~・・久々にこんな笑った・・・
なぁ、悠宇ってさ、良いニオイするな。何か落ち着く・・・。」
ひとしきり笑ったかと思うと急にそんな事を言われてーー
ドッドッ・・心臓がうるさく鳴り響いて、胸に顔を埋める聡太に気づかれてしまいそう。
いつも見上げている聡太が俺の下にいる。
整った眉、長い睫毛、鼻筋の通った鼻、ちょっと見える口元は、わずかに口角が上がっていて、
目を閉じて、心地良さそうにしている・・・・・
すごい幸せだって、思ってしまう。こんなこと、男同士だと良くあることなのに・・・・・
ん・・・?あれ、これは、良くある事・・か!?
さすがに、なく・・ないか!?
こういうところだけは未だに掴みきれない聡太に振り回されて、心臓は爆発寸前。
俺は今日聡太に殺されるのかもしれない、と思った時・・・
「・・・すっぽり入んねーかな?
ん~・・・俺よりは一回り小さい感じするけどな。」
「え?」
ふいにそうつぶやいた聡太は、俺の脇に手を差し込んで持ち上げると、くるり、と反転させて自分のあぐらの間にストンと落とした。
え?え?
今さら、ソコに食いつくの?
どうしていいか分からずに固まっていると、俺の肩に聡太の顎がポスッと乗せられた。
「すっぽり、じゃないけど、ピッタリ、だな。ハハ。」
「・・・・・・・・・。」
耳元でささやかれて・・・せっかく今まで我慢してきたのに、
俺の顔はかつて無い位真っ赤に染まったのだった。
☆
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