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第二十八話 二人の関係 side森田 希
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家に帰って、簡単なご飯を作って兄ちゃんの帰りを待つ。
ウチは僕が高校に上がる年に父さんの海外転勤が決まった。
専業主婦だった母さんは着いて行くと言ったけれど、もう社会人だった兄ちゃんはもちろんだけど、僕もせっかく進学校に受かったからと言って日本に残らせてもらったんだ。
今は一軒家に兄ちゃんと僕の二人暮らし。
不便もあるけれど、中々うまくいっている。
なんとなくテレビを見る気にもならなくて、リビングのソファーに座って今日の出来事を振りかえった。
父さんの転勤の話を聞いた時も驚いたんだけど・・・・今思えば、そんな驚きなんてちっぽけな物だった。
今日は・・僕の人生至上最大に驚いた日だったかもしれない。
自分の気持ちに確信が持てないまま、聡太を意識する朝比奈君と、朝比奈君を好きだと自覚した聡太。
傍から見て、赤面したり涙を流した朝比奈君の気持ちはきっと聡太にあるんだと思うんだけど・・・。
そこは、絶妙に鈍感な聡太だし、まだ気がついていないみたい。
今日だって、あの告白の時・・・・・・・
ーーーーー
甘いものに興味が無い僕は二人が楽しそうに雑誌を見るのを横目に、朝比奈君の横でカツサンドを頬張っていた。
近い、けれど男同士普通にありえる距離で雑誌を覗き込む二人。
突然朝比奈君が真っ赤になって下を向いたかと思うと、追いかけるように聡太が覗き込んで・・
次の瞬間・・・
「好き。」
そう言った聡太の瞳はスウィーツなんかじゃなく、間違いなく朝比奈君を見ていた。
顔を傾けて、前髪が斜めにさらりと流れている。
聡太の黒くて深い色をした瞳が朝比奈君を見つめていて・・・低いけれど、とても優しい声でそう囁いた。
「!!!!え!!!!!」
僕の大声が屋上に響く。
いや、だって、そうでしょ!?
今じゃないよね??絶対!!
何でもないタイミング、しかも僕が一緒にいるんだよ!?
僕の大声でぴくりと動いた聡太は、顔は傾けたままで視線を僕に移して一言、僕がいたのを忘れてたって・・・。
仲良く三人で並んでて、それはないでしょ!聡太~~~!
妙に落ち着いた聡太と、真っ赤になって固まる朝比奈君、そして何故か大慌ての僕。
そんな僕と、朝比奈君の事なんてこれっぽっちも気にしていないマイペースな聡太が、あらためて告白。
「好き。俺、悠宇が好きみたい。」
そう言った後、朝比奈君を見つめてふっとほほ笑む聡太。
おい、何でそんな一人でスッキリしちゃってんのさ!
朝比奈君なんて置物みたいに固まってる。
ちょうどそこで予鈴が鳴ったんだけど・・・
「俺、自分で人に好きって言いたくなったの初めてだ。
あ、でも、男同士だし、すぐには考えられないと思うけど・・・
振り向いてもらえるように頑張るから・・・・・。
嫌いになんないで。」
すごい殺し文句を言った後、今更ちょっとだけ恥ずかしそうにして、じゃ、先行くわ・・と言って立ち去ってしまった・・・
残された僕と朝比奈君・・・・
「あ・・・朝比奈君・・・・」
「も・・・森田君・・・・・・」
「今、僕ちょっと信じられない事が起きたんだけど・・・」
「あ、俺も・・・」
「あれから、聡太への気持ちって何か変わった・・・?」
「・・・・・・・・・。」
そこで、少し眉を寄せて何かを我慢するような、悲しそうな顔をした朝比奈君はポツリと言った。
「俺、は・・・幸せになる資格なんて無いから・・・
それに、終わりが来る恋人より、ずっと一緒にいられる友達でいたい。」
「・・・・・・・?朝比奈君・・・・・?」
「ごめん、教室、行こっか・・・・」
僕には今の、告白に聞こえたんだけど。
朝比奈君だって、聡太の事が好きなんじゃないの?
異性と違って、男同士だと確かにゴールが無いのかもしれない。
結婚なんてできないから、ずっと不確かなまま、二人の気持ちだけを頼りに繋がり続けるってことだもんね。
でも、そんなに先の事を心配しちゃう位聡太と居たいって事でもあるよね・・・?
朝比奈君が神社で話していた『昔あったこと』が何か関係あるのかな。
異性だって、両想いになるのはすごく大変な事なのに、
せっかく、二人が惹かれあってるっていうのに・・・
探偵・・・いや、友達として何か出来る事はないのかな・・?
朝比奈君は友達としてって言ってたけれど、聡太が最後に言っていた『振り向いてもらえるように頑張る』って言葉、アレが僕はすごく引っかかってる・・。
あの、聡太だよ・・?
鈍感、真っすぐな性格の上、自称『こうと決めたら徹底的にやるタイプ』の聡太。
その言葉、僕は伊達じゃないと思ってる。
朝比奈君、明日から心臓大丈夫かな・・・
ーーーーガチャ
「ただいま~希~~~~!兄ちゃんが帰ったぞぉ~」
ハッ!!!二人の事を考えていたら、軽く一時間経ってた!!!
聡太と同じくらい背の高い兄ちゃんにソファーの後ろからぎゅうぎゅう抱きしめられる。
「兄ちゃん・・・苦しい・・・」
「希、ご飯待っててくれたの?」
「う~ん、待ってたっていうか、考え事してたらあっという間に時間が経ってた!」
「何、悩みでもあるの??
俺は今日も忙しくて昼ご飯食べる時間が無かったんだよ~
お腹すいた・・・・ご飯食べながら話そうよ!」
「ふふ、悩みじゃないんだけどね、内緒~」
「なんだよ~兄ちゃんは寂しい!!!」
また、ぎゅうぎゅうに抱きしめられる僕。
しっかりしているようで、どこかほっとけない兄ちゃんのおかげで良い感じに気が抜けた・・・
明日から、二人が上手くいうように、聡太が暴走しすぎないように・・・僕がしっかりフォローしなくちゃ!
☆
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