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第三十一話 フィールドワークside 朝比奈 悠宇
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「では、第一回目のフィールドワークの説明をする!
今回は初めてって事で、遠出は無しだ。
皆も知ってるように、この東上坂高校のある坂出市は坂の町だ。
通学途中に見たことがあるヤツが多いと思うが、山の斜面に神社がいくつも建てられているだろ?
その数は全部で30程になる。そこで、手元のプリントを見てくれ。
高校から近い5つの神社をピックアップしたルート図だ。
今回はプリントの裏面にあるスタンプシートに各神社でスタンプを押して帰ってくることと、後で各班に2枚ゴミ袋を配るから、目立つゴミがあれば拾うように。
自分の通う学校が、どんな場所で地域にどんな歴史があるのかを学ぶきっかけになればと思ってる。
各班で回る順番や寺が少し違うから、ちゃんとルート図を確認してから回るんだぞ!
先生達も巡回してるから、サボったりすんじゃねーぞ!じゃ、皆出発だ!」
先生の号令で皆席を立つ。
俺の班に配られたルート図には、前に聡太と行った神社もあって・・・
あの時のことを思い出して、少し胸がぎゅっとなる。
「悠宇・・・?」
「あ、ゴメン、ぼーっとしてた・・・!じゃ俺達も行こうか!」
聡太は俺の事をよく見てくれているから、心配させないようにしなくちゃ・・・・・。
教室を出ると、豊田さん達が廊下で待っていた。
「僕、神社とか久々に行くな~」
「俺はまだ17ヶ所しか行ったこと無い・・・30もあるのか・・
今回行くのは初めてのとこが2つあるから楽しみだな。」
「真咲君、神社好きなの~?」
「ん、まぁ。行くと何か落ち着くからな。」
「意外~!」
俺の住む街の神社は街の真ん中や大通り沿いにあったりしてあまり特別感がないけれど、この街の神社はなんだか雰囲気が違う。
皆で通学路を下りながら、たわいもない話しで盛り上がった。
「じゃあ、まずルート1の神社に向かおうか!」
聡太の横には三好さんがピッタリと寄り添っていて、
ルート図を手にどの神社が良かったかとか質問している。
質問に真剣に答える聡太。
三好さんが話す時は、斜め下にある三好さんの瞳をじっと見つめて、
答える時は少し体を前に傾けて話す。自然と女の子の身長に合わせてあげているのが分かる。
今日の聡太は、髪型のせいか切れ長の綺麗な二重がよく目立っていて、
三好さんもいつもより少し緊張しているように見えた。
じっと人の目を見て話す癖はすごく好きなハズなのに、俺じゃない誰かの瞳を見ていると思うと胸が苦しくて。そして、並んで歩く二人がとてもお似合いで、何だかモヤモヤしてしまった。
告白を受ける勇気が無いくせに、頑張っている三好さんを見てこんな気持ちになるなんて。
俺って、最低だ。
せっかくのフィールドワークだし・・・!
と、気を取り直して少し歩いたところで最初の神社に着いた。用意されたスタンプを皆で順に押す。
森田君はテンション高く、一番高い木によじ登ろうとして、巡回の先生に怒られていた。
達観して大人なようで、意外な行動に出る森田君に皆大爆笑だ。
「森田君!木登り上手だね!すごいスピードで上るからビックリした!!!」
「後ちょっとで、てっぺんだったのにぃ~~~~!!!くやしい~!」
「あはは!」
クイッ・・
ふいに、ブレザーの裾が引っ張られる。振り向くと、豊田さんが上目遣いで俺を見つめていた。
ニコっと明るく笑ったかと思うと、腕に絡みついてきてそのまま連れて行かれる。
後ろで「あっ・・・」と森田君が短く声を上げたのが聞こえた。
「ね、朝比奈君、裏手も回ってみようよ~!」
入学式の日から、豊田さんは俺に好意を寄せてくれている。
好意をかわすのもそろそろ限界なのかな・・・
もう少し歩いたら、さりげなく手を外そう・・・上手くかわす事は出来ても、冷たくは出来なくて。
「ちょっと、暗くて狭いね・・・」
そう言って、絡めた腕と体を密着させてくる豊田さん。
「細道がちゃんとあるんだね・・・あ!お稲荷さんだ・・・ん?ここにも・・・
ごめん、ちょっとお賽銭入れるね。
裏にもこんなに沢山祭られてるなんて、知らなかったな!」
財布を出す為に腕を外す。はぁ・・・少し、気を使うな・・・・
ガサッ・・・・
「きゃっ・・・・!」
後方から葉が揺れる音がして、一度外した豊田さんの腕がまた俺の腕をギュッと捕まえた。
「悠宇、よかった、どこに行ったかと思った・・・・ッ!」
「聡太・・・・!」
そこにやってきたのは、俺を探しに来た聡太だった。
☆
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