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第三十三話 フィールドワークと俺の努力。
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昨日、初めて自分から告白ってやつをした。
好きな人がいると、学校に行くのがこんなに楽しみだなんて知らなかった。
自然と顔がニヤケる・・
昔、彼女が俺の不満を話しているのを聞いてしまって以来とにかく嫌われないようにって事ばかり考えていた俺に、悠宇はそのままの俺が好きだと言ってくれた。
それはもちろん友達としての好きだって事は分かってる。
それでも俺はその言葉が本当に嬉しかったし、そのお影で悠宇の前では好きな事を好きと言えて、同じ物を見て素直に一緒に喜べる。
思わず好きだと言ってしまう位、悠宇の事を好きになってしまった。
男同士なのに、と思わないワケでもねーけど、
実際こんなに自分から相手を喜ばせたいだとか、悲しませたくないとか強く思うのは初めてだから、性別なんて関係なくどうしても手に入れたいと思ってしまう。
悠宇は・・・男と、なんて考えてねーだろうけど・・・。
あの時悠宇の反応は限りなく0に近かったけど、
拒絶するような言葉を言われなかっただけ良かったと思う。
とにかく、自分の出来ることを全部やって悠宇に振り向いてもらえるよう頑張ろう。
わ、今俺すげー前向き・・・恋・・・って、人をこんなに変えてくれるんだな・・・
・・ヤバい・・・・一人でこんな事考えてるなんて・・・乙女だな・・・。
そんな気持ちで登校した俺だったんだけど・・・・
俺がこの学校を選んだ理由でもある神社に、悠宇と希とフィールドワークで行けるって聞いてスゲー楽しみになった。
でも、実際始まってみると悠宇の横にはずっと豊田さんがいて・・・。
豊田さんは緩いパーマのかかったロングヘアで、大きな二重に長い睫毛・・ちょっと化粧は濃いけど可愛い顔をしている。身長も希より少し低い位で・・二人が並ぶと絵に描いたように似合いのカップルだった。
外で見る悠宇は、新緑を背に温かい日差しを浴びて、栗色の髪がキラキラと輝いている。
風で前髪が揺れると、少し釣った大きくて形の良い瞳がすっと細められて・・
・・・あまりの綺麗さに、思わず悠宇に見とれてしまった。
ハッ・・何ぼんやり見とれてんだ俺!
このまま二人の距離が縮んだら、マズくねーか!?
そりゃ、普通はこんなでかい男より、華奢で可愛い女がいいよな。
いや、それ以前に男と付き合うなんて発想自体ねーのが普通だよな・・・。
男の良さ、男の良さ。。あえての・・・男の良さ!!!!!
えっと・・・なくね・・・?
俺は・・・固い、でかい、可愛くない。あ、三拍子揃ってる。
そんな事を考えて歩いていると、三好さんが傍に寄ってきた。
「ね、真咲君、今日雰囲気違うね!すごく、似合ってる!」
「え・・?あ、髪?ありがと。でも、明日からは元に戻すつもり。」
「え~勿体ない!!!あ・・でも、それ以上モテても私困るから、戻した方がいいかも・・」
「え、モテてんの?」
「え!?モテてるじゃん!!!」
え、そーなの・・・・?実感、ねぇけど・・・
希が言ってたのは冗談半分だと思ってたけど、三好さんにも言ってもらえて・・・
昔の俺だったら喜ぶような事なんだけど、今はそんな事より悠宇を振り向かせたくて。
たった一人の人に好きになってもらうのって、本当に大変なんだな・・・。
最初の神社に着いて、悠宇と回ろうと辺りを探してみてもどこにも居なくて・・・
「あ、聡太・・・朝比奈君探してる・・?」
「そーなんだけど、見つかんなくて・・豊田さんもいねぇんだけど・・」
嫌な予感がする。
希が手を口に当てて、反対の手でチョイチョイと手招きをする。
その身長に合わせて少しかがんで耳を傾けるとーー
「豊田さん、今日朝比奈君の事落としにかかってるよ・・・
肉食女子だよ・・・聡太も、頑張って!!!」
そう言って気合いを入れるように俺の肩をポスンと拳で叩くと、二人は神社の裏手に行ったと教えてくれた。
豊田さんが落としにかかってる・・・・?・・・俺も、落としにかからなくては・・・!
いやいや、焦りは禁物だ。
性別の壁を乗り越えるには、悠宇にはまず俺自身を好きになってもらわないと。
急いで裏手に向かうと、二人が話しているのが見えた。
見つけた事に安心したものの、良く見ると豊田さんは悠宇の腕にしがみついていて・・・・
・・・っ・・・。
すげえ、ショック・・・!
悠宇が他の人と触れ合ってる姿を見て、体が勝手に動く。
豊田さんから無意識に奪おうと思ってしまって・・・
悠宇を抱きしめようとしたその直前ーー二人の後ろに蜘蛛が巣を張っているのが見えてーー
・・・ここで焦って、抱きしめでもしたら悠宇まで変な風に思われる。
蜘蛛の巣のお陰で、冷静になって悠宇の肩を引き寄せるだけにした。
悠宇はいつもみたいに少し赤くなったかと思うと、蜘蛛を見ると青くなって・・・
少し釣った目元は涼しげですましたような綺麗な顔なのに、実際は表情がくるくる良く変わる。
そんな所も可愛いんだ。
豊田さんは、本当に要注意だな・・・。
話しかけてくれる三好さんには悪いけど、そこからはなるべく悠宇の傍にいた。
昼飯が終わって、皆でルート4の神社を目指す。
「あ~お腹いっぱい!まぁまぁのお弁当だったねぇ。」
「だよね、揚げ物ばっかでさ~!」
「・・・・・・よし、ルート4行こうか!」
悠宇が仕切ってやっと動き出す俺達。
同じルートの他の班のやつらも混ざって皆盛り上がっているとーー
「・・・ッ!チョコ!!!!!!」
少しして、横を歩いていた悠宇が、勢い良く俺を見上げて叫んだ。
「おいし・・!聡太、コレめちゃくちゃ美味しい!!!」
悠宇がキラキラした顔で俺を見上げる。やばい、すげー嬉しい。
このアメ、絶対好きだと思ったんだよな。
俺的に、この中のチョコがアメの中に入っている癖に遠慮なく甘いところが気に入っている。
「え、チョコ入り?・・カリッ・・わ!本当だ!甘いね!」
「コーティングが黒だったから気づかなかった・・!美味しい!」
「アメにチョコ・・・・!すごい組み合わせ・・・僕にはハードルが高すぎるね・・」
希は置いておいて・・・
皆も喜んでくれてよかったけど、悠宇の喜びが特別に嬉しいと感じて、
その嬉しそうな顔に胸がじんわりと温かくなった。
☆
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