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第四十一話 気持ちの整理
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もう時間も遅いから、少しだけということでファミレスに移動した俺達。
ドリンクバーからジュースを持ってきて、一息つくと迫さんから切り出してきた。
「聡太君、話って何?」
少し不機嫌な迫さんは片手で頬づえを着いて、手持無沙汰にストローでクルクルとメロンソーダをかき混ぜながら聞いてきた。
「今日、何であんな事したんだ?悠宇とはしばらく会ってなかったんだろ?」
「あんな事・・・?朝比奈君、昔の事話したの?」
「ごめん。でも・・付き合ってるとか、友達に嘘は付けないよ。」
「友達・・・?いいね、朝比奈君にはこんなに心配してくれる友達がいて。私の友達は朝比奈君のせいで居なくなっちゃったのにね。」
言われて俯く悠宇。少し眉を寄せて悲しそうな顔で・・・・
その手にギュッと力が入るのが分かった。
悠宇のそんな顔を見ると、自分の事以上に胸が痛くて。
悠宇の存在が俺の中ですげぇ大きなモノになっているのを実感する。
なんとか、してやりたい・・・。
上手になんて話せる自信はねぇけど、なんとか伝えたいと思った。
「なぁ、迫さん・・・悠宇とは一年近く同じ委員として一緒に過ごしたんだろ・・・?」
「そうだけど・・・それが何?」
「じゃあさ、悠宇がそんな事するヤツじゃないの、分かるんじゃねぇの?」
「・・・ッ・・それは・・・・。
何よ、聡太君なんて、高校に入ってからだったらまだ二ヵ月位しか経ってないじゃない。聡太君こそ分かってないんじゃないの!?朝比奈君が嘘を付いたせいで、私はのけ者になったんだよ!!!」
興奮した迫さんは少し声が大きくなって、回りの人達が俺達を見ているのに気がついて声のトーンを落として続けた。
「私は、中学の時朝比奈君より友達を選んだ・・なのに皆私を裏切って・・・・
もう一人になるのは嫌なの。
だから・・・今日は彼氏のフリしてもらったんだよ・・・。
今の友達はステータスで繋がってるようなもんだから・・・。」
「嘘をついて、それで友達なのかよ・・・・・
中学の時の友達に、素直に自分の気持ち言った事あるのか?」
「・・・私が黙ってれば、丸く収まるじゃない。
朝比奈君の事、少し気になってるなんて言える空気じゃなかったし、ましてや告白されたなんて言ったらそれこそ嫌われちゃうよ。」
そう言って俯く迫さんの言葉を聞いた悠宇がバッと顔を上げた。
「・・・・っ、迫さん・・・・それは違うよ。
俺、牧さん達と少し話したんだけど・・・牧さんは自分の気持ちを迫さん達に伝えて応援してもらったけど、迫さんの気持ちは一度も聞いたことが無いって・・ずっと友達だったのに、聞いたこと無かったって言ってて、告白された事も教えてもらってなくて。それで、迫さんにバカにされてるって勘違いしたみたいなんだ・・・あの時は俺じゃ誤解が解けなくて、ごめん。」
「・・・・そんな・・・・・私は言わないのが一番良いと思って・・・・」
「俺が言うのも何なんだけど・・・・ちゃんと言葉にしないと伝わんねぇと思う。
そりゃ、思い込みで酷い事する奴らが悪いに決まってるけど・・・
迫さんは、結局友達も悠宇も信用してなかったんだろ?
俺だったら・・・いくら相手をこれから信頼したくても、相手が信頼してくれてねぇんじゃ無理だから・・。」
迫さんはパッと顔を上げてじっと俺を見つめている・・・・
「今さら、かもしんねぇけど、悠宇は嘘つくようなヤツじゃねぇし・・・それは信じてやってくれよ。」
俺の言葉を聞いて、迫さんは目の前にあるグラスを両手で握ってぼんやりとした瞳でじっと見つめている。
何かを思い出しているような、そんな顔・・・・・。
少しでも、伝わったんだろうか・・・
人を信頼するのって難しい・・けど、本当の友達になりたいなら嘘をついたり隠したりするのはやっちゃいけないと思う・・・少なくとも、俺は悠宇と希には本当の自分を知って欲しくて勇気を出して過去を話した。それは、とても勇気がいることだったけど・・・・。
しばらくして、迫さんは少し潤んだ瞳で目線を俺達に戻した。
そして、ぎゅっと眉を寄せて真剣な瞳で悠宇を見つめて話し始めた。
「・・・私・・・・そう、なのかもしれない・・・・信用・・信頼・・・どっちも・・・・友達なのに、気持ちを隠してた・・・。勝手に、嫌われちゃうんじゃないかって思って言う勇気が無かった・・・。
本当は、朝比奈君がそんな事するハズ無いんじゃないかって・・薄々は気づいてた。けど、実際イジメが始まって・・・ずっと友達だったのにって、朝比奈君のせいにしなきゃ自分がおかしくなりそうで・・・・
信じる。ごめんなさい。」
ポロリと迫さんの目から涙が零れた。
それをサッと拭って、すぐに笑顔になる。
「今まで、ごめん・・・私達、友達としてまた一からやり直せるかな。」
「迫さん・・・もちろん、また俺と友達になってください。」
「ありがとう・・・・」
悠宇と迫さんに笑顔が戻る。
迫さんが泣き笑いのような笑顔で俺を見て・・・良かった・・本当に。
「朝比奈君はすごく良い友達がいるんだね。さっきの・・森田君も。」
「・・・うん。迫さんにも、きっと出来るよ!迫さんの明るさに俺が惹かれたように、さっきの子達にも素の自分を見せたらもっと好きになってくれるハズだよ!」
「うふふ。ありがとう・・・!あ、聡太君の事、ユーコが気に入ってるみたいだったじゃない?また一緒に遊んでもらえるかな??」
「あ~俺・・・・・」
すぐに返事をしない俺に、迫さんが不思議そうに首をかしげている。
せっかく悠宇が友情を取り戻しかけてるのに、ここで水を差すような事を言うのも・・気が引けるけど・・
俺は悠宇が好きだから、他の子とそういう目的で会う気にはなれなくて。
どうしよう・・・・
そう思って答えに詰まっていると。
「迫さん、さっそくだけど・・・・・自分の気持ち話すのって・・本当だ・・勇気、いる、ね・・・・」
「・・・・・?」
脈絡なく話し始めた悠宇にキョトンとした顔をする迫さん。
俺も、悠宇が何を言いたいのか分からずに、隣に座る悠宇の横顔をじっと見つめた。
「・・・・・・・えと。
聡太は、俺のだから・・・ユーコさんとは遊んでほしく無い。ごめん・・!
聡太、それでいい?」
ゆっくりと俺に向き直って、俺の大好きな柔らかい笑顔で悠宇が問いかけてくる。
一瞬、意味が分からなくて・・・・
・・・・・・・・え????え・・・・
今、俺のって・・・俺のって言ってくれた、のか・・・?
顔に熱が集まる。やばい、すげぇ心臓がドキドキと煩い・・・。
ポカンと口を開けてしばらく固まっていた迫さんが、俺達を交互に見ながら問いかける。
「へ・・・・?え・・・・?それってどーいう意味の・・」
「あは・・・俺、聡太の事が好き、なんだ。」
そう言う悠宇の顔も少し赤くなっていて・・・・
「悠宇・・・・・・・。」
「ちょっ・・・!アンタ達!そんな顔で私の前で見つめ合うのヤメテ!!!!!」
俺以上に真っ赤になった迫さんの大声で我に帰る俺。
・・・嬉しすぎて、ここが何処かなんてすっかり忘れてた・・・・
そん位、俺にとっては衝撃的で最高に嬉しくて。
上手く言葉にできねぇけど、今直ぐ悠宇を抱きしめたい。
「じゃ・・じゃあ朝比奈君、またそういうの抜きで一緒にご飯とか行こうよ!
色々、恋話!?もしたいし・・・ふふっ
あ~なんか妙にスッキリしちゃった!
自分の気持ちをぶつけるの、初めてだったかも・・・
今日は、話せて本当に良かったよ。聡太君、きっかけをくれてありがとう。
友達も、恋人も・・・自分を素直に出して一歩前に進んでみるから・・・
じゃあ、私はお先に♪ふふ」
俺達に手を振って、先に店を出る迫さんは腕組みをしながら「そっかーーーそっかーーーーうんうん。」と何か一人で納得して去って行った。
「悠宇、さっきの、本当・・・?」
「聡太、返事が遅くなって本当にごめん・・・それから、俺の事救ってくれてありがとう。」
少し赤い顔、潤んだ瞳。
いつも周りの為に一生懸命で、優しいからこそ、傷つきやすくて・・・・全部、俺の大好きな悠宇。
無意識に手が伸びる・・
ひたり。左隣に座る悠宇の右頬にゆっくりと手で触れる。
悠宇の目が少し見開かれて・・・・
薄く綺麗な形の唇が微かに動く・・・その言葉は・・・・
「聡太・・・・・・・俺達・・・・すごい見られてる・・・・・・!!!!」
バッと振り向くと、女子グループが胸の前で指を交互に組んだ、お祈りみたいなポーズでじっと俺達を見つめていて・・・勢いよく振り向いた俺にビックリして一斉に目を逸らされた。
「悠宇・・・・・店、出ようぜ・・・・」
「うん・・・・・」
店を出るまで、背中に刺さる視線が痛かったーーー
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