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第四十三話 友達の距離 恋人の距離。
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今日はいつもより一段と早く学校に着いた。
ドアを開けて教室を見渡す。初めての一番乗り。
シンとした空間、誰も居ない教室は少しひんやりとしていて独特の香りがした。
席に着くと、横にある窓から校庭を見下ろしてパラパラと登校する生徒達をぼんやり見つめる。
こんなに沢山の人の中から、悠宇は俺を選んでくれたんだ・・・・
綺麗な形の瞳の淵が赤く色づいていて、悠宇は俺のものだと言ってくれて・・・・・
あまり感情が表に出ないと言われる俺だけど、好きだと言ってくれた悠宇の顔を思い出すだけで今なら希のオーバーリアクションを超えられる自信がある。
誰かと付き合って、こんなに満たされた気持ちになった事なんて無かった。
今までは、付き合い始めると次は幻滅されねぇようにって努力して・・・・・
でも、悠宇への気持ちは違う。
喜ばせたい、幸せにしたい・・そのための努力は全く苦じゃなくて。むしろ楽しみだったりする。
「おっはよ~う!!!」
昨日の余韻に浸っていると、希がやってきた。
いつも遅刻ギリギリだった希は、何故か最近やたらと早く来るようになった。
そんで、相変わらず朝からテンションが高い。
でも、今日の俺は負けないぜ・・・・・・・
「おはよう。」
「お、聡太、何か良い事あったの?」
「わかるか?」
さすが希だな。ふっと笑って希を見つめる。
希は俺達の為にすごく協力してくれた。感謝しても、しきれなくて。
「~~~!!聡太!そんな目で見ないで!らしくない~!何か、照れるんだけど!!」
そう言って教室を少しキョロキョロと見渡したかと思うと
希は慌てた様子で手を伸ばしてきて、俺の目をぽふっと覆ってきた。
え・・どんな目・・・・・・感謝の気持ちを込めた顔したつもりだったんだけど・・・
慣れねぇ事するもんじゃねぇな。キモかったかな・・・・・・。
「ふふっ 二人とも、朝から何してるの」
「!悠宇!おはよう!!!」
「朝比奈君!おはよ~!!!」
「希、もう手ぇ離せよ・・・」
「だめ、今日の聡太の目、なんか凶器だから皆に見せらんない。」
「はぁ・・・・・?・・・悠宇いる・・・?」
「あは、いるいる。」
そう言って、俺の肩に手が置かれる。
じわり。触れた所が暖かく感じて・・・
「森田君、昨日は本当にありがとう。
話したいことがあるんだけど、今日放課後時間とれる・・・?」
「いいんだよ~!僕に出来ることなら何でも言って!友達、だもんね♡
放課後、リョーカイでっす。でも、二人お勧めのスウィーツショップは無理だよ?」
「あはは。大丈夫!」
暗闇で二人の会話を聞く。
目元に人生で初めて出来た大切な友達の希の手、肩には大好きな悠宇の手。
二人の手の温もりを感じて、じーんと感動する俺。
なんか俺、幸せすぎて怖いんだけど・・・良い事の後には悪いことがって・・良く言うよな・・・?
ふと視界が開けると、ニコニコした希、横には優しい瞳で俺を見下ろす悠宇がいて。
いつものマイナス思考が吹っ飛んで、俺も自然と笑みがこぼれた。
「よ~っす!」
「はよ~」
「高梨、木下~おっはよ~!」
「おはよう高梨君、木下君も!」
ガヤガヤと教室が賑やかになっていく。
人気者の悠宇は皆に囲まれて楽しそうに話している。
「でさ、高梨が告ったんだけど・・・振られてやんの!」
「木下~~~!おま、それ言っちゃう!?」
「だってよ、あんなん偶然見ちゃったら言っちゃうだろ!」
「木下君、そこは言わないであげてよ!」
「あ~朝比奈は優しい・・・木下!お前は鬼だ・・・・!」
昨日俺の恋が実って、高梨の恋は散ったのか・・・
明るく振る舞う高梨をちょっと尊敬する。
「俺も朝比奈位イケメンだったらいけたのにな~~~!
いいな~その顔・・・よこせぇ~!!!」
「ぎゃーーーー高梨が失恋でおかしくなったぞ!!!」
「ちょ!高梨君落ち着いて!!!!」
「も~また高梨!!!!朝比奈君が穢れるから離れて!!!」
「いえてる!あははは」
「女子、酷いな!」
相変わらず高梨と木下のコンビは息がピッタリで、クラスが爆笑に包まれる。
隣の席でガタガタと暴れる3人。
高梨が悠宇の顔に掴みかかろうとして、それを羽交い絞めして止める木下。
悠宇は高梨の手から逃れるように椅子に座って身を引いている。
高梨・・・相変わらずお前・・・悠宇に近いな・・・・・。
こんな事で嫉妬なんて、子どもっぽいって分かってんだけど、じっとしてられなくて。
あいつらだってじゃれてんだし、俺も混ざっても大丈夫だよな・・・・?
立ちあがって悠宇の席の後ろに回り込むと、そのまま少しかがんで悠宇の頭に顎をのせ、
手を悠宇の胸の前で交差させてグイッと椅子ごと傾けるようにして引き寄せた。
椅子ごと俺にもたれかからせて、優しく抱き込む。
悠宇の柔らかい髪の感触、近づいた時に香る甘い香り・・・
もっと近づきたい気持ちを抑えて、高梨に話しかけた。
「高梨、昨日の事は同情するけど・・・悠宇の顔は、やれねぇ。」
ふっと笑ってそう言うと・・・・・・
「キャーーーーーー!!!!」
「格好いい・・・・」
予想外の反応・・・・・・・・。
「おい~~!!!女子!俺と反応違いすぎじゃないか!?
ほら、真咲も朝比奈に触ってるぞ!!穢れないのかよ!」
「穢れるワケ無いじゃん!!!馬鹿なの高梨!!!!」
「むしろ、ナイスショットでしょ!!!!!誰か、写真!!!」
「ひどすぎるっ・・・!!俺、失恋したてだぞ!」
「高梨、あきらめろ・・・真咲の顔をよく見るんだ・・」
「・・・・あ、お前もか・・・・」
「高梨、お前には俺がいるだろっ!!!」
「木下ぁぁぁぁ~~~!」
「高梨・・・俺の胸、貸してやるぜ・・・」
「さんきゅ・・・・・て、元はお前がバラすからだろーが!!!」
「チッ。気づいたか・・・」
「も~バカだ二人とも~~~!」あはははは
いつもの流れで教室がまた賑やかになる。
ふと静かな悠宇が気になって下を見ると、悠宇の耳が少し赤くなっていてーー
そういえば、高梨や木下が近くても何も変わらないのに、赤面症って言ってたの、
もしかしてこれって俺にだけ・・・・?
そうかもしれないと思うと、すげー嬉しくて。
思わず抱き込んだその手にギュッと力を込めた。
☆
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