アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第四十七話 晴れない気持ち side 朝比奈 悠宇
-
ガラガラー パタン ・・・・
「聡太、ああいう時は適当に笑ってたらいいんだよ。ただでさえ聡太は目立つんだから。」
「・・・・・・・・」
「先生に目をつけられたら大変だよ?あんな素直で、聡太が心配・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・ちょっと、聡太、聞いてる・・・・・・・?」
早足で歩く足を止めて振り向くと、廊下に居る生徒がチラチラとこちらを見ていて・・
なんだろ・・・・・分からなくて聡太に視線を向けると・・・
「悠宇、手・・・」
クスクス笑いながら、視線を手元に落とす聡太
言われて気づく。俺、聡太の手を握ったままだったーーーーーーーー
「あ!」
慌ててバッと手を離したけれど、もう遅くて・・・
女の子達の笑い声が聞こえる。
「今の見た!?」
「朝比奈君と真咲君仲良しだね〜」
「そ・・・聡太・・・言ってくれてもいいでしょ・・・」
恥ずかしくて、ぶっきらぼうな言い方になる。
恋人って存在が初めてな俺は、こういう所を人に見られる事がなんだかむずがゆくて・・・
もし男と女だったとしても、間違いなく恥ずかしいと思う。
俺達は、男同士だし・・ふざけてるって思われるだけだろうけど・・・・・。
「俺はつないだままが良かったし、怒りながら手を引いてくれる悠宇が可愛かったから言わなかった。」
そう言うと、ふわりと俺の頭に手をのせて優しく撫でられて・・・
ビックリして聡太を見ると、切れ長の瞳がゆっくりと細められて優しく微笑まれた。
「もう・・見られてるから、撫でるのヤメテ。」
愛おしそうに見つめるその視線に耐えきれなくて、目を逸らしながら言う。
本当・・・・何でそんなトコだけ大胆なんだよ・・・。
「あ、本当だ・・・俺撫でてる・・・無意識だ。ワリ。」
「・・・・・・・・。」
「ヨシヨシだ・・・・!何か朝比奈君が可愛く見えるね。」
「本当、いつも大人っぽくて格好イイのに、真咲君といると可愛い!」
「・・・・・・行こう・・・・聡太・・・森田君待ってるよ・・・」
「ははっ。本当悠宇はそういうトコ、可愛いよな。」
「可愛いの意味、分かんないんじゃなかったの・・・・」
「女子の可愛いは未だに使い方が分かんねぇけど、悠宇が可愛いってことは分かった。」
ドヤ顔で言いきる聡太に返事をする気も無くなって・・・
女の子の視線を背中に感じながら、早足で教室に帰った。
「聡太に朝比奈君!遅かったね!僕もうお昼食べちゃったよぉ~!」
ニコニコとあどけない笑顔の森田君に癒される・・・
さっきの事もあるし、先生も様子がおかしかったし・・・なんだかドッと疲れてしまった。
「ごめんね、遅くなっちゃって。今日はもう教室で食べようか」
「そうだな。」
「こんなに遅くなって、寄り道でもしてたの~?ニシシ」
「希、何その笑い方・・・」
「いや~聡太がまた朝比奈君を困らせてたんじゃないかと思ってさ~」
チラリと俺を見た聡太は、目が合うとフッと不敵な笑みを浮かべて・・・
ん・・・・何か、嫌な予感・・。
「悠宇に廊下で手ぇつながれて、ちょっと注目浴びてきてた。」
「へ???え・・?朝比奈君、そんなおおっぴらにしちゃうの!?意外~!」
「聡太!そこだけ切り取って言わないでよ!!」
「あはは!出た、聡太はすぐはしょるからね~!何か理由があったんだ?」
「聡太ー!今のは、わざとだろ!もー。」
「はは。ワリィ。ちょっと嬉しかったから、希に自慢したかった。」
そう言われると、これ以上責める気にはなれなくて。
「で~?何かあったの?先生に何か手伝わされたとか?」
「う、ん・・・ちょっと・・・山本先生に彼女紹介しようかって言われて、断ったりしてたんだけど・・」
「先生口癖だよね~」
「俺は悠宇と希が居ればいい。」
「聡太っ・・僕も入れてくれんのぉ~カンゲキ~!あはは」
そう言って森田君が可愛く両手を前に組んで体を傾けると、聡太がその頭をくしゃくしゃと撫でる。
いつもならすごく楽しいはずの時間なのに、先生の態度を思い出すとなんだかモヤモヤが晴れなくて。
「・・そう・・それ・・・・・
聡太がそれを言ったらさ、なんか先生の様子がおかしくなって・・
これ以上何か聞かれる前にって思って、慌てて聡太の手を引いて科学準備室を出たんだ。」
「そうだな・・・確かに、ちょっと変だったよな・・・。」
「ふむ・・・。なんか、気になるね・・・・。僕も注意して見てみる。」
「まあ、先生は元々変わってるトコあるもんね。俺の気にしすぎかも!」
二人が心配そうに俺を見ていて・・・
そうだよな、特に何かされたワケでもないのに、気にしすぎだよな・・・・。
気のせいかもだから、大丈夫と言っても、俺を心配してくれる二人の気持ちが嬉しかった。
キーンコーンカーンコーン・・・・
なんとなく気分は晴れないまま、昼休憩が終わって・・そして放課後になった。
ブーブーッ・・・聡太のスマホが震える音がする。
「はい。え?ああ・・うん、わかった、すぐ帰るな。」
ピッ・・・
「ごめん、悠宇。今日母親が残業らしくて・・妹、見ないといけねぇから、先帰るな・・。明日は一緒に帰ろうな。」
「あ、全然気にしないで!実はさっき生徒会の人に言われて思い出したんだけど、今日委員会があるんだよ。球技大会の種目決めだってさ。こういうの、いつも中々決まらないんだよね。」
今日は6月に開催される球技大会の予定を決めるために、各クラスから委員長が出席する事になっていた。
教室は聡太と森田君が帰った後も、すぐに帰るのが名残惜しくて雑談する生徒達で賑わっている。
この放課後の独特の雰囲気が俺は好きだ。
時計を見ると、まだ三時半で・・・四時半からの委員会までは後少し時間がある。
んーー木下君達は部活に行っちゃったしな・・・
時間をどうやって潰そうかと考えていると、ふいに教室のドアが開く音がした。
ガララ・・・・
「お、朝比奈~明日の授業でちょっと準備したい物があるから、手伝ってくれ。」
「あ・・山本先生、俺今日委員会なんで・・・」
「ん~知ってる。30分位で終わるから。な、頼むわ委員長!」
「・・・はい。」
断る理由はもう無くて。俺は先生の後について、教室を出た。
先生の事がなんとなく嫌とか、子どもじゃないんだから・・・
そう自分に言い聞かせて廊下を歩く。
俺が勝手に目的地だと思っていた職員室を通り過ぎても、スタスタと先を行く先生に声をかけた。
「先生、職員室じゃないんですか?」
「ん~明日の科学で使うもんだから。科学準備室な。」
「あ、そーなんですね。」
ついさっきの事だし、変な事聞かれないといいけどな・・・
まあ、聡太が捕まるより俺で良かったのかも・・・
グルグル考えていると、あっという間に科学準備室に着いていた。
入り口を開けて、ドアを押さえた先生に先に入るように促される。
廊下から準備室に入る瞬間、薬品の独特の香り。
準備室のドアの横にはホワイトボードがあって、その前には少しの資料とノートパソコンが置かれた大きな机、部屋の両サイドには壁一面に様々な薬品が整然と並べられた棚がある。
「ん、入って」
「はい。」
ガチャンーーーーーーーーーーー
後ろから、鍵を閉める音がしたーーー
☆
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 134