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第四十九話 俺のヒーロー side朝比奈 悠宇
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聡太が扉の前にいるのに・・・
俺、なんて格好で・・・こんな状態を見られたら、どう思われるんだろう。
俺の頭は混乱していて、どうしていいか分からずにじっと固まる事しかできなくて。
そんな俺を見て、ニヤリと先生が笑う。
それは、どこかこの状況を楽しんでいるようで・・・
シン・・・・・・
静かだ・・・・
聡太、行っちゃったのかな・・・・俺は、どうしたら良かったんだろう。
俺、これから先生に・・・・そう思うと、目の前が真っ暗になってきて。
ドガァァァァァァンッ!!!!!!
突然、入り口の扉が物すごい音を立てて揺れた。
ビリビリビリビリッ・・・・
薬品棚の薄いガラスが割れんばかりに震える音がして・・・
「は・・・・・何、あいつ・・・蹴破る気かよ・・・」
ドガァァァァァァンッ!!!!!!
ピ・・・ピキ・・・・・・・・・・・
二度目の衝撃の後、入り口にある乳白色の小さなはめ殺し窓にひびが入った。
「・・・マジか・・・・・・
・・・真咲!今、開ける!!ちょっと待て!」
めんどくさそうに、髪をクシャリとかきあげながら立ち上がる先生は、チラリと俺を見て苦笑した。
「なんだよ、その顔・・・・ふ。ほら。」
そう言って俺の手の拘束を解くと、バサリと着ていた白衣を投げかけてきた。
どんな顔、してたんだろ・・・きっと情けない顔だろうな・・・。
「お~い、真咲、今開けるから、じっとしてろよ・・・」
ガラガラ・・・
ドンッ!!
ガシャン!
入り口に立つ先生を思い切り押しのけて、俺に向かって一直線に走ってくる聡太。
衝撃でよろけた先生がホワイトボードにぶつかって大きな音がした。
「いてーーーばか力・・・・ッ」
「悠宇ッ!!!悠宇!!!!大丈夫か・・・・!?」
白衣ごと、俺を強く抱きしめる聡太。
俺を見つめるその顔は、今にも泣きだしそうな顔をしていて。
とっくに帰ったハズの聡太が突然現れて、少し現実感がなくなって・・・
俺を見て、整った綺麗な顔がくしゃりと歪められる。そんな顔も様になるな、なんて思ったり。
・・・・・本当に来てくれたんだ。
その温かさに、やっと気持ちが落ち着いてきて・・・
聡太にしがみついて強く抱かれるその腕にひどく安心した俺は、張りつめた緊張が解けたせいか体の震えが止まらなくなってしまった。
「っ・・・・お前、悠宇に何したんだよ・・・・・・」
立ち上がって先生に歩み寄る聡太は、今まで見たことがないような表情をしていて。
「おい、真咲・・・マジになんなよ・・・遊びだろ、遊び。」
「は?お前の遊びに悠宇を巻き込むんじゃねーよ。」
ガンッ!!!
聡太が横にある机に強く拳を振りおろす。その音に先生が一歩後ずさった。
「真咲・・お前そんな顔もするんだな・・・・ハッ。
でも、男同士でそんなマジになってどーすんだよ。
どうせ別れるのに・・・・。」
「・・・・アンタと・・・一緒にすんなよ・・・・。」
「は?何言ってんだよ・・・・」
「アンタが高校の時に付き合ってたのって、男じゃねーのか・・・?
自分がうまくいかなかったからって、俺達に当たるなよ・・・」
「真咲・・・お前どこでそれ・・・・・」
青くなって下を向く先生。でも、それは一瞬で。
「希の兄貴に聞いた。アンタ達、同級生だったんだな・・・。
でも、アンタがすげー仲良かったダチと仲違いしてから人が変わったみたいになったって聞いただけだよ。それで・・・悠宇にこんな事して・・・もしかしたら、そうなんじゃねーかって、思っただけだ。」
「・・・ああ・・・森田、な。
ふっ。そんなんじゃね~よ。それに、もうそんな昔の事覚えてね~し。はは。
それにしても真咲、ドアあんな事して・・・・
俺達がいなかったら、蹴破った後どうするつもりだったんだよ。
ここの学校の事、知ってるだろ。ただの停学じゃすまね~ぞ。」
ここは県内一の進学校で・・・校則もすごく厳しいし、風紀にも力を入れている。
俺のせいで、聡太が停学や退学になったかもしれないなんて。
聡太がいなくなる・・・そう考えるとすごく怖い・・・・。
「もし居なかったら・・・・?
もしかしたら居るかもしれねぇのに、そんなんで諦めたら俺一生後悔するから。
それで居なかったとしても、他を探すだけだ。
悠宇の事に比べたら、そんなんどーでもいい事だろ。」
「はは・・・っ お前、スゲーな・・なんなんだよ・・・そんな朝比奈が好きかよ・・・。
男同士だぞ!?」
「だから、何だよ。好きな人だろ。男とか、女とか関係あるのかよ。」
「男同士には、先がね~だろ。結婚もできね~し。」
「先・・・・?結婚したら、もしお互い好きじゃなくなっても一緒に居れるのか?
そんなの意味あんのかよ。
お互いが好きで、ずっと一緒にいる。それだけだろ。」
「・・・・。
そんな風に考えた事なかった、な。」
「俺は悠宇と出会えて本当に良かったし、ずっと一緒にいたいと思ってる。
男とか女とか・・先生のつまんねー意地で俺達にちょっかい出すの、やめてくれよ・・・・」
「は~・・・・お前、頑固だな。ま、今日は疲れた・・・もういいよ。
帰れよ・・・・。」
ホワイトボードにもたれかかって項垂れる先生。
一体、先生に何があったんだろう・・・
怖い思いや、痛い思いをさせられたけれど、時々見せる表情が気になって・・・
先生も何かに傷ついてるんじゃないかって思う。
だからって、こんな事許される事じゃないけど・・・・。
こちらを振りかえった聡太の表情はとても優しくて。
一瞬で気持ちが和らいだ。
聡太が屈んで俺の顔を覗き込む。
その目は心配の色を浮かべていて。
「悠宇、その・・・・白衣・・・・。」
「あ・・・」
俺、聡太と先生のやり取りに気を取られて服を着るの忘れてた・・・。
白衣の下、身体の熱は納まったけれど、ひどい有様で・・・。
「う・・あ・・ごめん、ちょっとあっち向いてて・・・。」
「・・・おう。」
「ちょ・・真咲!そんな目で見んな!オマエ、コエ―よ!」
身なりを整える間、聡太と先生のやり取りを聞く・・・
聡太・・・・どんな顔してるんだろう・・・
「・・・・・・」
「おい、勘弁してくれよ・・・ちょっと味見しただけで、何もしてね~って!な!朝比奈!」
「は、え!?俺に振らないでください!味見って・・・・」
「味見・・・・・」
「聡太、リピートしないで!!!」
ムッとした表情の聡太に腕を引かれて立ち上がる。
「歩けるか?」
「うん、大丈夫。」
「だから、何もしてね~から!ちょっと・・」
「先生、もう黙っててください・・・・」
聡太に手を引かれて、先生の横を通り過ぎて廊下に出ようとした時
後ろから声を掛けられた。
「おい、朝比奈!お前結構悪くなかったぞ~!
真咲と三人でってのも、ありかもな!ははは!」
聡太がものすごい勢いでドアを叩きつけるように閉めると、中からクックッといつものからかうような笑い声が聞こえた。
☆
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