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第五十一話 俺は王子様 side 朝比奈 悠宇
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聡太の家に誘われて、思わず「うん」って言ったけれど・・
いざ部屋に着くと一気に緊張が押し寄せてきて、
明らかに挙動不審になってしまう自分が恥ずかしい。
俺だって、いつか聡太と一つになりたいって思っていたけれど、
いざとなるとどうしても色々と考えてしまって・・・
間違いなく・・俺が・・入れられる側・・だよな・・・?
いや、聡太に入れようとか思ってるわけじゃないんだけど・・・
飲み物を取ってくると言って、キッチンに下りて行った聡太を待つ間、
そんな事ばかり考えてしまって。
他の事を考えようと、手を大きく広げて大袈裟に深呼吸をしてから部屋を見回してみた。
すっきりと片付いた部屋に勉強机、その横に大きな本棚、ローテーブルと、その前にはオーディオセット・・
あ、CDも沢山あるな。
そして・・・ベッド・・・・・
「・・・ッ。」
意識したらダメだ。
何か・・・別の事に意識を持っていかないと・・・・別の・・・
部屋で一番自己主張をしている大きな本棚には、ずらりと本が並んでいた。
気になる事はすぐに勉強する聡太。雑誌なんかも結構多いな。
ファッション誌も沢山ある。そういえば、聡太の私服って見たことがないな・・・
今度休みの日に誘ってみようかな・・・ふふ。
それから・・あ、この間のスウィーツ特集だ!
付箋・・・こんなにいっぱい付けてくれてたんだよな。
全部、一緒に行きたいな・・・・
隣は・・・・『 最強☆モテ髪ヘアアレンジ 必勝BOOK 』
手に取ってパラパラとめくる・・どんな顔してこれを買って帰ったんだろう・・
全て、俺を想って・・・・
何もしなくたって完璧なのに、それに気づかずに一生懸命努力する聡太。
それが全部俺のためなんて、すごい事だよな・・・
そう思うと、胸がじんわりと暖かくなってきた。
パラパラ・・・・・・・・
あ、これ・・聡太がしてた髪型だ!
聡太の方が断然似合ってたな。
それからどのページをめくっても、聡太以上にカッコいい人はいなかった。
聡太の想いがあちこちから伝わって、自然と緊張がほぐれる。
他にはどんな本を読んでいるのかな・・・そのまま本棚に目を滑らせると・・
推理小説が多く並んだコーナーに、ひときわ分厚い背表紙の本が一冊。
何気なく引っ張りだしてみると・・
重いっ・・ん!?これは・・・『 同性愛 HOW TO 完全版 』
・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!
「んぐっ・・げほ!!!っ」
思わず叫びにならない咳が出た。
これ・・・これこそ・・・!!!!
いったいどんな顔して買って帰ったんだよ!!!!
あんなに目立つ外見で・・・ちょっと・・自分の事分かって無さ過ぎる・・・・・!!!
聡太のことだし・・・なんとなくは予想してたけど、こんなに堂々とあるとは・・・
あまりの衝撃に本棚の前で立ち尽くしていた時だった。突然背後から扉を開ける音がしてーー
ガチャーーー
「あ・・・・・」
本を見つけた驚きで、階段を上がる音が聞こえなかった俺はその本を手に持ったまま振り向いてフリーズしてしまった。
「ん・・・・・・?あ、その本?」
聡太はテーブルにジュースとお菓子をのせたお盆を置くと、
そのままどっかりと床に腰を降ろしてじっと俺を見つめている・・・
こんなの見られたの知ったら、気まずい・・・よな・・?
そう思って何か声を掛けようとした次の瞬間ーー
「フッ。俺、バッチリだから。どんと任せろ。」
聡太から予期せぬ言葉が飛び出した。
「え?・・・あ、うん・・・・。
ふっ・・・あはは!も~俺、聡太には敵わないな!ふふふっあははは!」
全く恥ずかしがる事もなく、何故か堂々とした表情で親指を立てる姿がツボにハマって、俺は笑いが止まらなくなってしまった。
「悠宇、やっと本当に笑ったな。」
「・・・!」
そう言って、優しく微笑みかけられて・・・
天然なの、わざとなの・・・・?
抜けてるような、それでいていつも俺の事を気遣ってくれる・・・
そんな聡太に俺は本当に敵わないや・・・・。
「悠宇、ちょっとこっち来て。」
「うん。」
少し、真面目な顔になる聡太。
ドキドキしながら近づいて、聡太の前に正座する。
そんな俺を見て、また優しくふっと笑ってくれて。
俺の右手を聡太の右手が優しく持ち上げる。そして、そのまま手の甲に軽く口づけられた。
「悠宇を見てたら、希の兄貴が希の事を、『大切なお姫様』って言ってるのを思い出した。」
「うん・・・・・」
「悠宇は、キレーでカッコ良くて、優しくて。俺の大切な王子様だ。」
「聡太・・・・」
『王子様』その言葉がじわりと胸に落ちる。
俺は間違っても女の子に間違えられるような外見じゃない。
この外見が決して嫌なワケじゃないけれど、
何人もの女の子と付き合ってきた聡太は俺を抱けるんだろうかって正直すごく不安だった。
「お姫様」じゃなくて、「王子様」に例えてくれたその事が、
男として、そのままの俺でいいんだって言ってくれているみたいで。
無意識で言ってるんだろうけど、俺はそれがすごく嬉しかった。
俺の手を持ち上げたまま、少し下から伺うように俺を見る視線はどこまでも優しくて。
少し長い髪の間から見えるその切れ長の瞳に射すくめられて俺はもう動けなくなった。
☆
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