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第五十六話 モテない俺
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「聡太・・今まで女の子には、どうして振られたの・・・?」
突然の悠宇からの質問‥
どうして、か?
『真咲君って、イメージ全然違ったんだよね‥なんか、鈍臭くて、カッコ悪いの。大っきくてカッコイイだけに、余計にそれが目立つんだよねぇ〜』
やばい、嫌なこと思い出した‥
このセリフ、人生で何回リピートしただろう・・・。
スプーン片手に、じっと下を向く俺に悠宇が慌てて話しかけてきた。
「こんなにかっこ良くてなんでもできて・・・
ちょっとおっちょこちょいだけど、最高の恋人なのにって思ったら
不思議になっちゃって!!無神経だった、ごめん!」
そう言って、ギュッと目を瞑ったかと思うと、
両手を勢い良くパシンと顔の前で合わせて、がばりと頭を下げる悠宇。
あ、この仕草・・・
少し前、体育館でこの仕草をしていた悠宇を思い出す。
あの時は好きかどうかまだ分かってなくて・・・
でも、この仕草が可愛くて、つい触れたくなったんだったよな・・・。
一見すましたような整った顔、けれど、実際はニコニコとよく喋る。
いつもは育ちが良さそうな繊細な動きをしているのに、
こう言う時に見せるいつもと真逆のオーバーなリアクション。
何かちょっと古臭いその仕草、似合ってないけど、似合ってる。
悠宇は俺に勿体ないくらい本当にカッコ良くて可愛くて・・・・
こんな俺だけど、悠宇にだけはずっと好きでいて欲しい・・・
それに、聞かれたところで無神経とか思ってねぇし。
うーん・・・何で振られるか、か・・・
「んー・・・前もちょっと言ったけど、俺がドン臭くて格好悪いから、らしいけど。
あ・・・そういえば、さっき悠宇は俺の作った菓子、すげー喜んでくれたよな?
高校入る前、最後にできた彼女にはそれで振られたんだった。」
「え?どーいうこと?」
合わせていた手をゆっくりと下ろして
少し首を傾けながら、悠宇の大きくて少し釣った二重の瞳がパチリと開く。
可愛い・・
俺、今までは悠宇の事を中身はもちろんだけど男としてカッコいいし綺麗だと思っていたけど、一つになった後は無性に可愛く見えて仕方が無い。
今直ぐにでも無茶苦茶にかまい倒して抱きしめたい・・・
でも、あんまがっついて余裕がないと思われても格好ワリ―し。
そんな衝動をぐっと抑えて俺は続きを話した。
「バレンタインに、彼女が手作りのチョコレートケーキをくれたんだ。
少し不格好だったけど形より何より、作ってくれた気持ちが嬉しくて・・
俺も彼女に喜んでもらおうと思って、
ホワイトデーに手作りのホワイトチョコケーキを渡したんだよ。」
「まさか・・猛練習、した・・・?」
「おう。当然した。」
「それで・・・・?」
「ん、作ったって言ったら、最初は喜んでくれてたんだけど・・・
中身を見てからどんどん機嫌が悪くなっていって。
当てつけだって言われて、その場で振られた。」
「・・・・・そう・・・・。」
「食ってももらえなくて・・・
俺が何か良かれと思ってやった事は、だいたい裏目に出るんだよ・・・。」
「そんな事が・・・
あ、だからさっき、作って喜ばれるって嬉しいって言ってくれたの?
聡太、ごめん。思い出したく無い事言わせちゃって・・。
俺、聡太がしてくれる事、全部嬉しいから。
こんな事言ったら聡太に悪いけど、今までの彼女が聡太を振ってくれてよかったよ。
だって、そうじゃないと俺の事好きになったりしなかっただろうし・・
俺は、ありのままの聡太をもっと見たいから・・・!」
必死な表情でそう言った悠宇は、
突然、ごちそうさま!と手を合わせて叫んで席を立ったかと思うと、
そのまま俺の横にやってきて少し屈んで勢い良く俺をぎゅっと抱きしめた。
「俺・・聡太に絶対悲しい思いをさせないから!」
俺の髪に頬を擦り寄せながらそう言ってゆっくりと髪を撫でられて。
いつも下に見る悠宇を見上げる。
見上げた先には、ぎゅっと目を瞑った悠宇。
相変わらずの、綺麗な顔・・・でもその行動は可愛くて、じわりと胸が暖かくなる。
トクン・・トクン・・少し早い心臓の音が、俺を好きだって言ってくれてるみたいだ。
「俺、いつ出会っても悠宇の事は好きになってたって自信があるんだけど。」
そう言って俺を抱きしめる悠宇の腕にそっと手を重ねると、
驚いたように開いた瞳と視線がぶつかって。
「なんか、照れる・・・でも、嬉しい。」
「悠宇が俺の事好きなんて、何かずっと信じらんね―と思ってたけど・・
こうしてるとすげー実感出来るな・・・。」
そう言ってほほ笑み掛けると、悠宇の顔がカッと赤くなって、
俺を抱きしめていたその手をパッと離して少し後ずさりした。
「・・・ご飯、邪魔しちゃったね。食べて、お迎えに行かないとね・・。」
突然素に戻って照れる悠宇。
いちいち、本当に可愛いんだけど・・
メシ食ってるだけで、何回可愛いを連発してんだ俺・・・
「おう。あ、悠宇の事先に駅まで送って行くから!」
「あは。女の子じゃないんだから!小春ちゃんを俺も一緒に迎えに行くよ!
森田君にもお礼したいし。そこからは、一人で帰るよ。」
「・・・・分かった。」
俺だって、女扱いしたいワケじゃない。
けど、ただただ悠宇が大事で、心配になってしまうんだ。
女の子だから、こうしてやらないとって・・そういう義務的な事じゃなくて、
俺にとって大切過ぎて・・・。
そんな「好き」の大きさに自分でも驚く。
メシを食って、二人で希の家に向かう。
俺と希の家は小中の校区は違うけれど、徒歩20分程の距離で
二人でたわいも無い事を話しながら歩いているとあっという間だった。
ピンポーン・・・
「や、聡太君!・・・君が、朝比奈君?」
「光さん、今日は本当にありがとうございました。」
「あ、初めまして、朝比奈です!今日は俺のせいでご迷惑を・・」
「ふふ。迷惑だなんて。小春ちゃんもすごく可愛かったし、
何より希がお兄ちゃん風吹かせて張り切っててね、俺もすごく楽しかったんだよ~。」
「そう言ってもらえると、助かります。」
「ありがとうございました!あの・・森田君は・・・?」
「すっかり寝ちゃって・・・ふふ。今小春ちゃん抱っこして連れてくるから、
ちょっと待っててね。」
光さんは、あの後山本先生と何があったか全く触れてこなくて・・
そんな気遣いがありがたい。
少し緊張していた悠宇も、光さんのほんわりとした雰囲気に和んでいる。
「森田君のお兄さんって、見た目は全然似てないけど、中身はちょっと似てるね・・。」
「ん、そーだな。ほわっとした雰囲気が似てるよな・・。」
タオルケットに包まれて、すやすやと眠る小春をお姫様抱っこで連れてきてくれた光さんがニコリとほほ笑んで俺の胸に小春を渡してくれて・・・。
「おまたせ、さ、小さなお姫様をどうぞ・・・」
「はい。今日は本当にありがとうございました。」
「森田君によろしくお伝えください!」
希の家の前、小春を抱いて悠宇と別れる。
悠宇と一つになれて、益々好きを実感できて・・・
幸せなハズなのに、きっかけが山本先生だと思うと胸が痛む。
明日、学校に行けば嫌でも山本先生と会う事になる。
悠宇は大丈夫だろうか・・
そして、俺は山本先生に対して普通に振る舞えるんだろうか。
もう、手は出して来ないとは思うけど・・・
そんな不安が頭を過る。
もう、あんな怖い思いをさせたくない。何があっても俺が守ってやる。
帰り途、俺は固く誓ったのだった。
☆
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