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第五十七話 止まった気持ち side 山本 敬
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朝比奈と真咲とあんな事があって、気まずいかって?
フッ・・・俺はそんなに繊細じゃない。
「そっか~お前、森田の弟だったのか~
すげ~偶然だよなぁ!
全然似てねーから気がつかなかったよ。ははは!」
そう言って横に座る森田の肩を抱き寄せる。
持っていたおにぎりを落とさないように慌てて持ち直しながら
俺の肩にポスンと寄りかかる森田は華奢で可愛い・・まさに俺の理想のタイプだ。
少し離れて、塔屋裏の壁と自分の間に朝比奈を隠すようにして座る真咲。
ただでさえ目つきの良くない真咲が、本気で睨んでいて、
手に持っているココアの缶はメキメキと音を鳴らしている・・
それは今にも潰れてしまいそうで・・・
てっきりスカしたヤツかと思っていたが、
昨日といい、感情をストレートに表現するところ案外嫌いじゃない。
今朝も、そうだった・・・
・
・
・
キーンコーンカーンコーン・・・・・
「皆、おはよ~!全員出席だな。
よし!じゃ体育館に移動しろよ~!
あ、朝比奈!後で運んで欲しいモノがあるから科学準備室な!」
教室に入るなり、真咲があまりにも俺を睨むから、ついからかいたくなって・・
用もないのに朝比奈を呼び付けた。
「俺が行きます。」
思ったより、勢い良くガタンと立ち上って、無表情で自分が行くという真咲。
今までそんな事言ったことね~のに、皆が変に思うのなんてお構いなしか・・?
それともそこまで頭が回らないのか・・
本当、面白いヤツ。
「クックッ・・・・真咲、俺は委員長に頼んでるんだよ。」
「いえ、絶対に俺が行きます・・・」
絶対に・・・!!!かよ!何だよそれ。
そんな真咲の反応に、クラスの皆が唖然としている。
面白いもの見れたし、これ以上は勘弁してやるか・・・
「真咲は面白いな・・も~イイよ、一人でやっから。クックッ・・・ほら、皆は移動しろ~」
ガヤガヤと教室を移動する生徒達と一緒に体育館に向かう。
何でこんなにワクワクするんだろう。
真咲の反応を見ていると、とっくの昔に忘れた懐かしい感覚に襲われる。
高校時代か・・・あの頃に、戻れるワケでもね~のにな・・・。
生徒と過ごす日々はそれなりには楽しいけれど、
毎日毎日キラキラした生徒に囲まれても、未来、希望・・・俺には全部関係なくて。
物心ついた時から男が好きな俺には、約束された未来なんてない。
進学、結婚、出産・・・次々に未来に向かっていく生徒達。
綺麗な物の傍にいればいる程、自分が灰色に見えてくる。
そもそも、今では何で教師になろうと思ったのかすら思い出せなくて・・・
こいつらは俺が担任を持つ初めての生徒だ。
入学式の日から朝比奈と真咲は群を抜いて目立っていた。
背が高くてスタイルがいい、小奇麗な顔をしたヤツ。
そんな朝比奈の第一印象は、まさに「王子様」だった。
色素の薄い肌に明るい色の髪、大きな二重の目元はほんの少し釣っていて・・
品のある顔ってこーいう顔だな・・なんて、教壇から思ったのを思い出す。
見かけもさることながら、朝比奈は中身まで完璧だった。
教師としてはありがたい存在。ニコニコと誰にでも愛想を振りまいて、優等生。
何でもそつなくこなすヤツ。
女がほっとかね~だろうな~と思っていた通り、常に女に囲まれていた。
俺個人としては、つまんねーヤツって印象。
そんなに愛想振りまいて、嫌な事も人の代りに引き受けて。
一言で言うといい子ちゃん。自分ってヤツはねーのかよっていつも思ってた。
真咲は・・デカイ。とにかく第一印象は無口でデカイヤツ。
良く見ると顔は整ってるし、背が高くて頭は小せぇし、手足が長くて・・
恵まれた体型してるな~
これまた、女がほっとかね~だろ。なんて思ったっけ。
いつもスカした雰囲気で周りと距離を取ってる。
高校の時の俺と雰囲気が似てるな~って、
昨日までは思ってた。
そんな印象の二人が・・まさか付き合ってるなんて・・・
お互い、ノーマルに見えてたのに、
二人の雰囲気はどこか甘くて・・・
どんな女だって落とせるだろうに、
この優等生とスカしたヤツが付き合ってる・・・!?
少し昔を思いだして胸がザワリとする感覚と、ちょっとの好奇心。
どうせ、すぐに別れちまうだろ・・・俺が現実を見せてやる。
見た目的に・・朝比奈が受ける側だろうな・・・
カッコいいヤツなんてタイプじゃねーけど、
なんとなく二人に興味が湧いてきた俺は、朝比奈にターゲットを絞ってイタズラをする事にした。
本当、最初はちょっとビビらせたら引くつもりだったんだけど、な。
いつもニコニコ何考えてるか分からない朝比奈が本気で抵抗する姿に俺も夢中になってしまった。
抱きしめると意外に華奢で・・細い腰なんてたまんねー。
嫌がって、怯えて・・綺麗な顔が恐怖に歪む。
釣った目元から涙が零れて・・・
朝比奈の体は綺麗に引き締まっていて、乳首やアソコは薄いピンク色で・・・
想像以上のエロい体・・・
前を肌蹴て座り込む朝比奈を見下ろして、ズクンと下半身が疼く。
俺、教師として、どーなの。まあ・・・ここまでヤッたら、一緒か・・・
最後まで、ヤリてーな。なんて思いながら、白くてキメの細かい肌に舌を這わせてアソコを擦りあげる。
この位の歳のヤツなら、快感を与えりゃ一発だろって、舐めてた。
俺がどんなに愛撫を繰り返しても、
目を瞑って眉を寄せ、浅く息を吐きながら快感を逃す朝比奈。
そんなに真咲が好きかよ。妙な嫉妬が俺を支配する。
される事はあっても、ほとんどした事の無いフェラチオまでして・・・
ようやく勃ち上がった事が嬉しくて、からかうように指摘すると、
この世の終わりみたいな顔をして涙を流して・・・
こんな顔もするんだなって思うと同時に、そんなに思われている真咲がうらやましくなる。
でも、朝比奈・・本気なのはお前だけかもしれね~よ?
期待なんかしたって、男なんて、所詮そんなもんだろ・・・?
朝比奈の想像以上の色気に当てられて、先に進めようとした時だった・・・
帰ったハズの真咲が訪ねてきて・・・
無視をしていると、扉からものすごい衝撃音。
どうせ、ハッタリだろ・・・
俺は真咲という男を甘く見ていた。
二回目の手加減なしの蹴りでガラスにひびが入った。
こんな事で人が集まってきたら、大変な事になっちまう・・!
慌ててドアを開けようと立ち上って、ふと朝比奈を見ると・・
さっきまで苦しそうに泣いていたのに、心底ほっとした顔をしていて・・・
綺麗な顔がなんとも情けない表情になっていて、思わず笑みが溢れた。
ドアを開けてからは散々でーーーー
感情の起伏の少ないスカしたヤツだと思っていた真咲は全く正反対で・・
朝比奈の為に怒って、そして・・・退学も厭わない。
俺は、あの時こんな感情あったっけ・・・・
『女の子と付き合うよ・・・男同士、未来なんて無い・・もんね・・・。』
大学進学で遠距離が決まった時、泣きながらそう言われて俺はどう思った・・・?
そーだな、仕方ね~なって・・そう言って・・。
あいつは、何を考えながら俺に別れを切り出したんだ?
俺は、それまでにちゃんと好きだって伝えてたのか・・・?
『お互いが好きで、ずっと一緒にいる。それだけだろ。』
真咲の言葉に動揺する。
未来が無いと言ったあいつに、それを言ってたらどうなった・・?
何も変わらなかったかもしれないし、変わったかもしれない・・・
『俺は悠宇と出会えて本当に良かったし、ずっと一緒にいたいと思ってる。」
状況は違えど、こんなに激しく相手の事を思って、伝えた事・・・俺には無かったな・・・。
こんな、クサイセリフ言えるかよ・・・
でも、真咲は平気で言ってのける。
それを聞いた朝比奈は幸せそうな顔をしていて・・・
こいつらがどうなるのか、傍で見るのも悪くないかもな。
そう思って、いつもあいつらがたむろしてる屋上に来てみたら想像以上に威嚇されて・・・
必死に朝比奈を守る姿、可愛いじゃねーか。
「な、真咲~もうそんな怒んなよ!
お前のその顔、俺トラウマだわ~はは!」
「先生・・・何なんですか・・・もう俺達にかまわないでください・・」
「真咲~ぃ そんな冷めてー事言うなって!なあ朝比奈?
まあ、どこまでお前らの言う事が本当か、
俺が三年間見ててやろーじゃねーの。
あ、朝比奈・・・真咲とのセックスがマンネリ化したら俺の事呼べよ~
俺はスゲーテクもってるからな。飽きさせね~よ?」
「・・・悠宇・・・俺、飽きさせないようにスゲー勉強するから!」
「そっ、聡太!!!!もう、もう十分だから!!!!」
慌てた顔をした真咲が朝比奈の肩を両手でガシッと掴んで妙な事を口走る。
ほんと、こいつ見た目と違う・・・意外に必死で真剣で・・・
こういうの、いいな・・・
俺もちょっとは真剣になってみても・・・なんて、柄にも無く思ったりして。
そんな事を思っていると、俺に肩を抱かれて
じっと黙って話しを聞いていた森田がブルッと震えて・・・
チラリと見ると、真っ赤な顔をして俺と二人を交互に見て慌てていた。
「クックッ・・・森田は可愛いな~
でも、あの森田の弟じゃ、俺は勝ち目ねーかな。」
「へ・・?」
「フッ。お前の兄貴は、高校ん時ブラコン森田って呼ばれてたんだゼ。」
「ぶ、ブラコン!?何で・・・?」
「お前の兄貴、カッコいい顔してんだろ?
スゲー人気でな。でもな、どんな子が告白してきても、
弟の方が可愛いって言って一度もOKしなかったんだゼ。」
「・・・そ、そんな・・・断る口実だと思いますけど・・・」
真っ赤になって俺を見上げる森田の大きな瞳、控えめだけど鼻筋の通った鼻に可愛い唇・・・・
これは・・ブラコン森田の気持ちが分かるな・・・・
「まぁ、それは分かんねぇけど、な。
でも、お前が弟だって分かって納得だわ。
俺も、お前スゲータイプだぞ。」
「!!!」
口を開けてさらに真っ赤になる森田。
矛先が自分に向かって驚いてるんだろう・・・
「聡太・・・本当に十分だから・・これ以上勉強しないで・・」
「いや、勉強に終わりは無いから。」
「何キリッとして言ってるの~!俺、ついていけなくなっちゃうよ!」
真咲と朝比奈は、俺の事なんてすっかり忘れて痴話喧嘩をしている。
本当こいつらは、飽きね~な・・・俺も、久しぶりに本当の自分を出せた気がする。
「真咲、お前はもうちょい冗談が分かるようになれよ!はは!」
「・・先生の冗談なんて、分かりたくないですけど。」
「はは、固いヤツ~!またくるぜ~!」
なんとなく清々しい気持ちで、俺はドアの方に向かいながら手をヒラリと振って校舎へと戻った。
「聡太・・・朝比奈君・・・何があったのさ~!!!」
ドアが閉まる直前、後ろから、森田の叫び声が聞こえた。
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