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第五十八話 誓いと努力
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昼休憩、思わぬ邪魔が入ったけれど悠宇は意外に穏やかで。
壁と俺の間に悠宇を閉じ込めて先生を威嚇する俺のブレザーを
後ろからツンツンと引っ張って、小声で「大丈夫だから」と囁く悠宇。
トラウマになっていたらどうしようかと思っていたけれど、大丈夫そうでちょっと安心する。
俺が先生の事を許せねーって気持ちは変わらないけれど、
やった事、言う事は最低のくせに、先生の妙なテンションで怒るに怒りきれなくて。
俺達をかき乱して、上機嫌で去って行く先生の後ろ姿を唖然と見送ってから
二度と来るなって言い忘れた事に気がついた。
言ったところであの先生の事だし、また茶化されるんだろうけど・・・
本当、山本先生は、良くわかんねー人だな・・・
隣に座る悠宇は、そんな先生の事なんて見てなくて、
俺の発言に顔を真っ赤にして、勉強なんていいから・・
とかなんとかブツブツ言っている。
真っ赤になって俯いて、拗ねた子どもみたいに少し唇を尖らせていて。
そんな姿を見せられて、俺は無意識に悠宇に向かって手を伸ばしていた。
「悠宇・・可愛い。」
そう言って悠宇の頬をツーっと撫でてそのまま唇に触れる。
「・・・・ッ」
「ちょっと聡太!また僕が居る事忘れてない!?」
「大丈夫、気づいてる。」
「な・・っ!!!余計、ダメだから!!!」
希の大声で悠宇が慌てて俺から離れて・・・そして、三人で顔を見合わせて笑い合う。
そんな事をしていると、あっという間に昼休憩の終わりが近づいていて・・
予鈴が鳴る少し前、俺達が教室に帰っていると後ろから悠宇を呼び止める声がした。
「朝比奈君ッ!!」
自然と三人の足が止まって、そのまま声のする方に振り返るとそこには俺の知らない女子がいて。
「あ、真野さん。どうしたの?」
二コリとほほ笑む悠宇を見て、少し赤い顔をしていた真野さんの顔が一層赤くなった。
あ・・・この顔・・・これは、横手さんが俺に見せる表情と同じだ・・・
それに気がつくと、ドクンドクンと妙に心臓がざわついて。
どういう、知り合いだろう・・・・
「朝比奈君、ちょっとだけ、時間あるかな・・・?」
言われて俺達に視線を寄こす悠宇。
一瞬・・・俺にすごく寂しそうに笑いかけてきて、視線を真野さんに戻した。
「うん。」
「あの・・・ちょっと着いてきてもらっていいかな・・・」
「あ、じゃあ僕達先に帰ってるね!」
ほら、聡太!そう言って希に背中を押されて教室に向かう。
気になって振り返ると、悠宇と真野さんは廊下の曲がり角に消えて行ってしまった。
「聡太、そんな不安そうな顔しないで~
二人は付き合ってるんだから、大丈夫だよ!」
そうだ、悠宇はモテるんだった・・・
半端じゃなく・・・・
最近何だかバタバタしていてすっかり忘れてた・・・。
「これから、何回もこんな事があるんだよな・・・」
「そうだね・・・」
いつも元気な希がしんみりと下を向いて呟く。
悠宇は俺のだって言いたいけれど・・
さすがに俺だってこの関係が大っぴらに出来るもんじゃ無い事は分かってる。
色んな子に告白されて、もしイイ子がいたらどーすんだ・・・?
「大丈夫」そう信じていても、好意を寄せられる機会が多い程不安になる。
「聡太ぁ~・・朝比奈君は・・聡太の事が凄く好きだから大丈夫だよ・・」
「希・・・」
落ち込む俺を、一生懸命慰めてくれる希。また心配させたな・・・
かなり下にあるその頭をクシャリと撫でる。
「そうだな・・・俺、もっと悠宇を夢中にさせられるように頑張る・・・。」
「・・・聡太の頑張るは、ちょっと怖いケド・・」
「・・・・?」
ぽそりと呟いた希の声は俺には届かなくて・・・
優しくて、カッコいい悠宇を皆が好きになるのは当然の事だ。
今、悠宇は俺の事を好きで、真野さんはきっと振られてしまう。
好きなヤツと付き合えるって本当に難しい。
真野さんの事を思うと、また胸がズキリとする。
直接断る悠宇はもっと心が痛いんだろう・・
もっと悠宇を大事にしてやろうと心に誓う。
「希、サンキュ、元気出た。」
「よかった!でも、暴走しないでねっ!」
「任せとけ。」
「ぷッ!だから何でそういうトコ自信満々なの~!
ふふっ・・無表情で親指立てるのヤメテ!僕それツボなんだから~・・っふっふふ・・・・」
別に、無表情のつもりもねーんだけど・・・希が楽しそうだから、まぁいいか・・・
俺の動きがツボに入ってしつこく笑う希と一緒に教室に入ると、隣のクラスの委員長が駆け寄ってきた。
「朝比奈君は今日学校に来てるよね?風邪治ったのかな?」
「風邪?もうすぐ帰って来ると思うよ!」
「あれ?風邪じゃなかったの?
昨日山本先生が委員会の途中にやってきて、朝比奈君が体調不良で帰ったって言ってたんだ~
もう予鈴鳴りそうだし、これ、昨日の資料渡しといてくれるかな?」
「・・・!あ、そうだった!昨日、朝比奈君体調悪かったんだよ。あはは・・・資料はまかせといて!」
山本先生・・・悠宇の立場が悪くならないようにしてくれたんだな。
まあ、あんな事になったのは先生のせいだし・・当然か。
結局球技大会が何に決まったのか気になって、
隣のクラスの委員長に手を振って見送る希の手元にある資料を覗き込むと・・。
そこには今年の球技大会のタイトルがデカデカと書いてあってーーーーーえ?
希の手から資料を奪う。
「わ!急に何??」
「クラス対抗鬼ごっこ」
「へ・・・・・聡太、何言ってるの!?」
「球技大会、クラス対抗鬼ごっこらしいぞ・・・。」
「え?球技・・・・え!?」
希の大声で木下達が集まってくる。
「どしたの森田~?」
「ちょ、皆・・・見てこれ!今年の球技大会、クラス対抗鬼ごっこなんだって!!」
「はぁ!?球技のトコ無視していーのかよ!?すげーなソレ!!!」
「えええ~・・サッカーとかフットボールとかで活躍して彼女ゲットする予定だったのに・・・」
「あはは!なんだよ高梨、そんな事思ってたのかよ!!そんな邪な気持ちじゃ彼女なんて出来ねーぞ!」
「でも、楽しそうだな~!」
鬼ごっこなんて、もう10年以上もしてないな・・・
「ちょっ!!この、特賞のトコ見ろ!!!」
木下が指さす先を皆で見下ろすと・・・・
<<特賞 フィールドワーク 訪問先 ディズニーランド>>
クラスが一気に盛り上がる。
悠宇とディズニーランドか・・・デートみたいで、なんかいいな。
そう思うと悠宇の顔が見たくなってきて・・・
早く帰ってこねーかな、なんて思いながら、俺はざわつく教室の中じっと入り口を見つめた。
☆
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