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第六十話 鬼ごっこ
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6限が始まって山本先生が楽しそうに「鬼ごっこ」の説明を始めた。
ちなみに俺は「鬼ごっこ」ってフレーズ、口にするのがちょっと恥ずかしいんだけど・・
見た目はすっかり大人の皆が「鬼ごっこ楽しみだな!」なんて話しているのを聞くと、ちょっと照れちまうんだけど・・・
「皆〜、もう聞いてると思うが、今年の球技大会は鬼ごっこに決まった。
鬼ごっこと言っても、隠れ鬼だから、当日までにあらかじめ隠れられそうな場所をリサーチしとくようにな〜!
ちなみに球技大会とは名ばかりで、毎年全く関係の無い種目が選ばれている。確か去年はだるまさんが転んだ・・だったな。アレも侮れね〜ぞ〜。かなり白熱してたぜ。
うちは知っての通り進学校でテストテスト、勉強勉強・・・だろ?こういう時くらいバカみたいな事して思いっきり楽しもうぜ〜。
で、皆で俺をディズニーランドに連れて行ってくれ!!期待してるぞお前ら!!」
先生の説明で盛り上がる教室。
先生の為っつーのは納得いかねーけど、俺はディズニーと聞いて嬉しそうな顔をしていた悠宇の為に頑張ろう・・・。
先生が説明してくれた「鬼ごっこ」のルールはこうだ。
まずクラスを半分に分けて、鬼(親)と隠れる側の(子)を決める。
鬼(親)は自分のクラス以外のヤツを探し、(子)は制限時間2時間の間逃げ切る。
鬼(親)にタッチされた者は「監獄」(体育館)に集められる。
一度捉えられた(子)は、生きている仲間の(子)に触れられると生き返ることができるが、鬼が見張る体育館に侵入して仲間を救出するのは困難なため、救出に向かうよりも隠れて時間を稼ぐ方が得策。
隠れる場所は、学校の敷地内ならどこでも可。ただし、トイレなどの鍵の付いた部屋は×。
だ、そうだ・・。
監獄とか・・・結構本格的だな・・・。
それから鬼と子を決めて・・
意外に鬼になりたい奴が多くて、特に希望の無かった俺たちは子になった。
「よし、早速シュミレーションしてみるか!今日は時間も無いし、隠れるのは校舎内だけな。じゃあ、子になったやつは今から5分以内に隠れるように!」
「行け〜!チンタラすんな!バラバラで逃げるんだぞ!本気で隠れろよ!」
ノリノリの先生の叫び声に押されて、教室を飛び出す生徒達。
「聡太!朝比奈君!生きて会おう!」
「じゃーな、お前ら!武運を祈るぜ!」
そう言って希と高梨が俺達の前を駆けて行って・・
他の(子)達もバラバラに校舎内を駆け抜けて行く。
皆、ノリノリだな。
あれ・・悠宇は・・・
振り向くと、少し後ろをヒョコヒョコと走る悠宇がいた。
昼まで普通に歩いてたのに・・
心配になって、悠宇の傍まで駆け寄る。
「悠宇、足・・どうかしたのか?」
「昼休憩、真野さんと別れた後に慌てて教室に帰ってたら階段から落ちちゃって・・
ちょっと捻ったみたいなんだけど、そんなに痛くないから大丈夫だよ!」
そう言って何でもないように笑う悠宇。
でも・・・帰ってくるまでに階段なんてあったか・・?
「階段?」
「あ、地下用具室のとこだよ。急いでた子とぶつかっちゃって・・・
でも、本当に大した事ないから。」
だから遅れてきたのか・・・
俺の知らない所で悠宇に何かあるのはもう嫌だ・・・
「それじゃあんま遠くに行けねーだろ?ちょうど近いし、その用具室に隠れようぜ。」
「教室からスグだし、それじゃ聡太もすぐ見つかっちゃうから・・俺だけそこに隠れるよ。」
そう言ってニコリと笑う悠宇の手を取って、用具室に向かう。
「聡太・・」
「もう、俺の知らねーとこで悠宇に何かあんのは俺が嫌なんだよ。だから、一緒に隠れる。」
「・・・っ・・ありがと。」
4畳程の広さの用具室は、扉はあるけど鍵はなくて・・
少し薄暗いけれど、案外片付いている床に二人で腰を下ろした。
「聡太、さっきの・・真野さんだけど。」
悠宇の口から真野さんの名前を聞いて、断ったんだろうって思っていても心臓がドキリと跳ねた。
「ちゃんと、断ったから・・・」
「そうか・・・」
少し寂しそうな悠宇の笑顔。
優しい悠宇は、真野さんの気持ちを考えて傷ついているに違いない。
横に座る悠宇の肩に手を回して抱き寄せる。
抱き寄せたその手で柔らかい髪をゆっくりと撫でていると、悠宇の頭がコテンと俺の肩に寄りかかってきた。
「・・俺・・さっきからずっとこうされたかったんだ・・・やっぱり聡太の横は安心する・・」
ドキリとして見下ろすと、穏やかな顔で目を閉じている悠宇の顔があって・・・
幸せそうに口角が緩く上がった瞬間、たまらなくなってその綺麗な唇にキスをした。
☆
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