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第六十二話 キラキラってやつ。
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あの日の宣言通り、松本は俺達のクラスに良く遊びに来るようになった。
悠宇や希と話しつつ、取り巻きの女子とも話したりと、ウチのクラスにすっかり馴染んでいる。
悠宇の交友関係に口出しなんてできねーけど、友人といえども好意を寄せているヤツが近づくのはなんとなくモヤモヤしてしまう。
くだんねー嫉妬だって分かってるから言わねーけど・・・
キーンコーンカーンコーン・・・
チャイムが鳴って少し経つと勢い良く扉を開ける音。
松本は、上の階からこの短時間で来たんだろーに、息を切らす事もなくニコニコとした笑顔で教室に入ってきた。
その手には、缶ジュースが二つ握られている。
「あ、松本君だ!カッコいいよね~!」
「うちのクラス、朝比奈君とかカッコいい人が多いから、他クラスまで気にしてなかったね!」
女子達のヒソヒソ話が聞こえる。
そうだな。うちのクラスには悠宇がいるからな。
悠宇の事を褒められると自分の事のように嬉しくて。
他のヤツにいざ好かれるとなると不安なのに、この気持ちってなんなんだろーな。
松本はそんな会話が聞こえているのかどーか分からねーけど、
女子と目が合う度、爽やかな笑顔で挨拶を交わしていた。
キラキラオーラだな・・・
でも、悠宇のとはちょっと違う。
何て言うか、うまく言えねーけど・・・。
「聡太には無い、キラキラだね。ふふっ」
「!? 俺、口に出てたか!?」
壁にもたれてぼんやりと松本を見つめていた俺は、勢い良く希の方に振り返った。
「ふふふっ 顔に書いてた!!」
「・・・そうかよ・・・。」
「でも、そうだな~朝比奈君のが癒しのキラキラだとしたら、松本君のは攻めのキラキラ、だね。」
「・・・・!希、俺、初めてお前を尊敬したかも。」
俺の胸にひっかかっていた物が、希の言葉でストンと落ちて。
希の手を握って、尊敬の眼差しを向ける。
「・・・聡太・・・何その感動しましたみたいな顔・・・良かれと思って言ってるんだろーけど、初めて・・とか、ちょっと失礼だからっ!」
プリプリと怒った風に俺の手を払いのける希。そんなやり取りが、なんだか良くわかんねーけど面白くて・・・二人でクスクスと笑い合っていると・・
カコン
「やぁ、楽しそうだね。」
松本が持っていた缶の一つを悠宇の席に置いて、ニコニコと俺達に声をかけてきた。
悠宇に差し入れか・・・
自分の鞄に視線を落とす。
実は俺も、悠宇に差し入れを持ってきてたんだけど・・
俺なんて、もう6限が始まろうとしているのに未だ渡すタイミングがつかめてねーっていうのに、サラリと置きやがって・・・俺がクリアできないハードルをいとも簡単に越えて行く。これだからキラキラ系は・・・。
「松本君、いらっしゃ~い☆せっかく来てくれたんだけど、朝比奈君は隣のクラスの委員長のトコに球技大会について話しに言ってるよっ」
コミュ力抜群の希は、松本とは数回会っただけだっていうのにもう普通に話している。
入り口の方をチラリと見て、こちらに振り返った松本は、声のトーンを落として神妙な顔で俺達に質問してきた。
「ね、朝比奈君って・・・付き合ってる人、いるのかな?」
「は・・・・・・?」
「んんっとぉ~どうなの、かな・・・」
「知らないの?」
「そう言う事は、本人から聞けば?」
「えー!ねえ、ちょっとでもヒントくれない?」
「なあ、そんな事聞いてどーすんだよ。ソレがお前に何か関係があんの?」
何で悠宇が居ない時にコソコソこんな事聞いてくるんだ・・・?
俺の返事を聞いて、一瞬黙った松本はすぐに笑顔になって俺に話しかけてきた。
「真咲君、もしかして俺の事キライ?」
「は?何でそーなんの。」
「朝比奈君にはあんなにニコニコしてるのに、俺にはほとんど話してくれないから。」
「あ~聡太は人見知りが激しいんだよ!僕もここまで仲良くなるの結構時間かかったし。」
「あ、そうなんだ!良かった~・・朝比奈君とばかりじゃなくて、俺とも仲良くしてよ」
「・・・おう。」
「さっきの続きだけど、朝比奈君って良く告白されてるけど、理由も無しに全部断ってるんだってね。あんなにカッコいいし、理想が高いのかな~って思っちゃってさ!実は彼女が居るのに隠してるとか・・・・」
こいつ・・・本当に、友情で近づいてるのか・・・?
悠宇が居る時はべったりくっついてアレコレ話してるくせに、
いねーとこでそんな探るみてーな事して・・
純粋な好意とは違うその雰囲気にイラ立ちがつのる。
「松本、もうやめろよ。俺、悠宇のいねーとこでそういう話しすんのは嫌なんだけど。」
「ッ・・ ごめんごめん!純粋に疑問だっただけ!忘れて!じゃ、俺戻るね!」
少し焦った顔をしたかと思うと、慌てて教室を出て行く松本。
悠宇を侮辱されたような気がして、ついキツく睨みつけてしまった・・・
俺の取り越し苦労って事もあるかもしれねーのに・・・悠宇の事になると、ついムキになるトコ治さねーと、いつか悠宇に迷惑かけちまうかもしれねーよな。
「なあ、俺・・言い方きつかったか?」
「ん~・・キツイ、けど、僕はあれで良かったと思う・・。」
それにしても、悠宇の事を詮索していた松本は何か嫌な感じがして・・・
ーー出来れば距離を取って欲しいーーなんて、何の確証も無いのにそんな事を言うのはどーなんだろう。
せっかく出来た友達の悪口なんて聞きたくねーだろうし、
松本も悪気はねーかもしれねーし・・
「聡太っ、森田君っただいまっ!」
そんな事をグルグルと考えていると頭の上から悠宇の明るい声が降ってきた。
漠然とスッキリしない気持ちだった俺は、悠宇が帰ってきた事が嬉しくて勢い良く顔をあげた・・・・
んだけど・・・
「ッ!悠宇!それッ・・・!」
「朝比奈君、どうしたの!?」
帰ってきた悠宇は、カッターシャツの右側の首元から胸の下までびっしょりと濡れていて・・・
悠宇の薄いピンクの乳首が透けて見えていた。
「や~、さっき教室に戻ろうとしたら、入り口から出てきた松本君が目の前でつまずいてジュースがかかっちゃったんだよね。今日体操服無いし、どーしよ。あは、ついてないなー。」
何でも無いと言ったようにあははと笑う悠宇。
今日は暑かったせいもあって、ブレザーを脱いで長袖のカッターの袖を折り返して着ていた悠宇は松本のジュースをモロに浴びてしまったみたいだ。
着替えや水泳で見る裸と違って、濡れて透けた体は妙に色気があって・・・
「聡太・・・・?」
じっと悠宇の透けたカッターを見ていた俺に、不思議そうに問いかけてきた悠宇は
目が合うとニコリと笑いかけてくれて、そのまま自分の席に着こうと後ろを向いたーーー
ハッ!!俺・・見とれてる場合じゃねぇ!
悠宇のこんな姿、誰かに見せるワケにはいかねぇ!
ガタン!!
慌てて着ていたブレザーを脱ぎながら立ち上って、目の前に立つ悠宇の肩にバサリと掛ける。
それから、濡れた部分が見えないようにブレザーの前を両手で無理やり閉じた。
あぶなかった・・・
だ、誰も見てねーよな!?
パッと顔を上げると、クラスのヤツらがこっちを見ていて・・
俺達の席は教室の奥の端だから、前方から一斉にこちらに集まる視線が痛い。
え、何だ?悠宇を見てるのか・・・?
そう思って悠宇に視線を落とすと、耳元から首筋がみるみる赤く染まっていって・・
「そ・・聡太・・・急に朝比奈君を抱きしめたりして・・・どうしたのさ・・・・」
恐る恐る希に声を掛けられて、状況に気づく。
俺はただ隠しているつもりだったけれど、何も知らないヤツから見ると悠宇を後ろからブレザーごと抱きすくめているようにしか見えなくて。
え・・・どうすんだこれ、でも手を離したら悠宇の体が・・・・・・
俺は今、かつてない程の究極の選択をせまられているーーーーー
☆
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