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第六十三話 side朝比奈 悠宇
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「えっ・・!きゃーなになに!?どうしたの急に!」
「な、真咲ッ!俺に何の断りもなしに何やってんだ!朝比奈はやらんぞ!」
女子達が驚きの声を上げ、悪乗りした木下君達が騒ぎだして・・
後ろから肩越しにギュッと俺を抱きしめている聡太は、全く動く気配がない。
大きくて、暖かい腕に抱きしめられて、こんなにも聡太が近くて、皆がいて・・・
「キース!キース!」
「も~!高梨、何言ってんのぉぉ~!」
盛り上がる教室、慌てる森田君。緊張のせいか皆の声が少し遠くに感じる。
突然、肩をグッと掴まれたかと思うとグルリと聡太の方を向かされて・・
至近距離、見上げた先には聡太の真剣な顔があって、その深い黒緑色の瞳は俺を映していた。
・・・カッコいい・・けど、近い!
心臓がドキドキと早鐘を打って、益々顔に熱が集まる。
何、どーしたんだよ急に・・・!!!
そう思ってじっと聡太を見つめていると、少し顔を傾けて近づいてきて・・・
え、キス・・・・!?
教室で、本当に!?
なんて慌てつつも、俺はいつもの癖で聡太の形の良い唇をじっと見つめてしまった。
少し伏せた目、長い睫毛・・・そして聡太の唇が俺の頬の横を通り越したかと思うと
耳元で小さな声で囁かれた。
「悠宇、濡れたとこ透けてるんだけど・・・
誰にも見せたくねーからこのブレザーで隠してくんねーか?」
透けて、る・・・!?
あ・・・!
視線を下に落とすと、濡れた右胸の辺りのシャツが貼り付いて肌が透けて見えていた。
これ、を・・・隠すために・・・・?
唖然として聡太を見上げると、じっと俺の胸元を見ていた視線がサッと外されて・・・。
少し拗ねたように囁かれた。
「そんなの、俺にしか見せんなよ。」
聡太はそう言うと、少し開いたブレザーの前をギュッと合わせてくれて、ポンポンと俺の胸を叩いて席に着いた。
俺は男だし、裸だってなんだって今までそんな事を気にした事がなくて・・・
でも、聡太が俺の裸を特別に思ってくれている事が感じられて、なんだかくすぐったいような嬉しい気持ちになった。
ブレザーを握りしめて、クルリと振り返って皆を見るとまだじっとこちらを見ていて・・・
なんとかしないと・・・。
「さっきジュース被っちゃって、シャツが濡れたから上着貸してもらっただけ!
も~皆大げさだよ!あはは」
「なんだよ朝比奈、早く言えよ!俺、着替え置いてるから!」
ほれ、と言ってロッカーからカッターシャツを投げてよこす木下君。
「サンキュー!明日、返すから!」
なんとか平然を装ってはいるけれど・・・近づいた時に感じた聡太の体温や真剣な顔が頭を過って心が落ち着かない。
「なんか・・ドキドキしちゃった・・!」
「二人って、絵になるよね~」
「真咲君になら、私もされたい・・・」
「俺がしてやろうか・・・?」
「高梨は黙って!!」
「何でだよ!何でダメなんだよ!!!朝比奈、教えてくれよ!!」
「えっ!?それ俺に聞くの!?」
あはははは
高梨君のキャラクターに救われる・・・
なんだかんだで盛り上がった教室は6限が始まるまで賑やかだった。
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放課後、いつものように三人でバスに揺られて、駅前で森田君と別れる。
「濡れてる朝比奈君に突然抱きついたと思ったら、そんな理由があったんだねぇ〜。けど、ちゃんと言ってくれたら僕だってあんな焦らなかったのに~!」
「しゃべる前に体が動いちまうんだよな・・・」
「まあ、聡太らしいけどッ!朝比奈君を困らせるのはやめてよねっ」
「おう・・・。悠宇ごめんな・・。」
「聡太は俺の事を思ってしてくれたんだから、気にしないで!」
「悠宇のため・・ってか、俺が見せたくなかっただけだから。」
「もぉ~!ごちそう様です!じゃ、僕帰るから!また明日ね~!」
元気良く走り出す森田君の背中を見送って、俺がいつもの公園に向かおうとすると、後ろから手を取って引きとめられた。
「な、悠宇・・・買い物、いかねぇ・・・?」
「・・・・?買い物・・・?」
「死活問題だから。今日中に買いたい物がある。」
後ろから俺の手をとった聡太は、そのままどんどん市内に向かって歩いて行った。
市内に入っても、前を歩く聡太は相変わらず俺の手を引いたままで・・・
俺の左手と聡太の右手が繋がっている。
まるで、普通のデートみたいだ・・・
別に人前でいちゃいちゃしたいとかじゃないんだけど、
いつだって俺達は人目を気にしていて。
今日はドキドキの連続だな・・・
聡太は男と手を繋いでる所なんて・・・人に見られても、いいのかな。
商店街を少し歩くと、カッコ良くて目立っている聡太を見て女の子達が騒ぎ始めた。
そしてその視線は後ろを歩く俺から俺達の間にある繋がれた手へと注がれてーー
「キャ!見て!!」
「え!?なに!どーいうことー!きゃー!!イケメンが手を繋いでる!可愛い!」
気持ち悪いとか、否定的な言葉を浴びせられるかと思ったけれど、好意的・・?な反応に少し安心する。
俺が周りの反応に気を取られている間にも、目立つ事が嫌いなはずの聡太は女の子達の反応を気に留める事もなくどんどん俺を引っ張っていて・・・
何かに夢中になっている時、聡太は少し周りが見えていない。
きっと、今手をつないだままだって事も気がついてないんだろうな。
繋がった手の先、少し前を歩く背の高い聡太の背中を見つめる。
綺麗な黒髪がサラリと風になびいて、甘くて爽やかな聡太の香りが後ろを歩く俺の所まで届く。
『そんなの、俺にしか見せんなよ』
少し拗ねた顔で呟いたその言葉、聡太の独占欲が嬉しくて。
ふふっ・・・
あの時の顔を思い出して、つい思い出し笑い。
俺の笑い声でクルリと振り返った聡太が足を止めて不思議そうにこちらを見ていてーー
「ふふ。何でも無い。手、この間とは逆だね。」
山本先生から逃げるように科学準備室から二人で飛び出した時の事を思い出す。
あの時は、俺が聡太の手を引いていて・・・
わざと意地悪くニヤリと笑いながら指摘すると、周りを見回して人の多さに驚いた聡太は俺の手を離してそのまま頭をクシャリと撫でた。
「さすがに、ここじゃ目立つな。」
頭に手をのせたまま、そう言って俺に微笑みかける聡太を女の子達が見つめていてーー
そんなに甘くて優しい顔、俺にしか見せないでほしい・・・。
知らないうちに俺の中にも強い独占欲が生まれていて、せっかくの買い物なのに早く二人きりになりたいと思ってしまった。
「・・聡太、死活問題って何なの・・?」
「あぁ・・もうすぐそこだから、ついてきて。」
少し気まずそうにそう言って、聡太の指差す方を見ると洋服屋さんで・・・
服屋さん・・・?服を買うのかな・・?
スタスタと右斜め前にあるショップに入っていく聡太の後を慌てて追いかけた。
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