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第六十四話 side 朝比奈 悠宇
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聡太が入って行ったのはモノトーンな雰囲気の洋服屋さんだった。
前に聡太の家に行った時に着ていた服もここのなのかな?
一見シンプルだけど、縫製が凝っていて、聡太に似合いそうな服がたくさんあるな。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「あ、いえ!俺は付いて来ただけなんで、大丈夫です・・。」
「え?そうなんですか?でも、試着だけでもいいので是非着てみてくださいね。お客様、背も高いし何でも似合いそう!」
「あ、はい・・・ちょっと色々見てみます・・。」
店員さんの接客をかわしつつ、キョロキョロと店内を見回していると奥の方から俺を呼ぶ声がして、声の方に駆けていくと聡太が手にシンプルな無地の白いシャツを数枚持って立っていた。
「悠宇。サイズって何?」
俺を見て、シャツを見て・・真剣な表情の聡太。
聡太の服を見にきたんじゃないのか・・・?
「え?俺のサイズ?」
「そう。」
「えっと・・・そのシャツの長さなら、Mかな・・?」
「そう、だな。細身だし・・よし、決めた。」
俺にシャツをあててゆっくりと頷いた聡太は同じデザインのシャツを5枚握ってレジへと向かって行く。え?聡太には、Mじゃあ小さいよね?俺のってこと???
頭がハテナでいっぱいになる。
だって、死活問題って・・・・何でそれで俺のシャツ買う事になんの!?
「ッ!!聡太、待って・・・!」
「何だ?」
「それ、俺のなの・・・?」
「そうだけど。」
「聡太の死活問題なら、買わないとだよね。でも俺のなら、俺が買う!!」
良く分からないけれど、聡太の事だからきっと何か意味があるハズで。
俺のなら、俺が払わないと!
そう意気込んで、シャツを受け取ろうと聡太に向かって手を差し出した。
「・・・・・。」
「・・・聡太・・?」
ちょっとビックリした顔で固まった聡太は、すぐにふわりと笑ってくれて。
俺の差し出した腕の上を聡太の長い腕が通り越して、頭にその大きな手がのせられた。
ポンポン・・・
ゆっくりと頭を撫でられて。
「悠宇、ありがとう。買うな、じゃなくて、迷わず買わねーと、って言ってくれて。
何かすげー嬉しかった・・」
「え、だって聡太の死活問題なんでしょ・・?それなら買う意外の選択肢無いよ。」
「・・・。早く買って、二人になれるトコに行きてーんだけど。」
少し困った顔の聡太は、そう言うとまたレジに向かって行って・・
慌てて追いかけて、聡太の手を掴む。
「でも、俺の・・・」
「悠宇、もうこれ以上可愛いこと言わないで。後で話すから、ちょっと待っててな。」
そう言われると何も言えなくて。
お会計が終わるのを待って二人で店の外へ出る。
夕方のこの時間は帰宅途中の学生が多くて・・・
聡太が街に出ると、女の子達が何度も振り返ってコソコソと話している。
皆が夢中で見つめる程に、どこにいてもカッコ良くて目立つ聡太。
そんな聡太が俺の恋人なんだよな・・・。
はは、俺、何考えてんだろ・・自分で自分の思考回路が恥ずかしくなる。
そんな事を考えていると、前を歩いていた聡太が振り返った。
「すごいな、皆が悠宇の事見てる。こんなんじゃ、懐かれても仕方ねーよな・・」
そう言ってハハッと笑われて。
「懐かれる?仕方ない?どういう意味・・?でも、皆は、聡太を見てるんだよ・・・。」
「フッ・・んなワケねーだろ。色々話してーことあるし、公園行こうぜ。」
少し吹き出す笑顔も様になっていて、聡太の笑顔が沢山見られることがすごく嬉しい。
やっぱりこの笑顔は俺だけのものだ。
もうこれ以上聡太を皆に見られたくない。
俺って、こんなに自分勝手でわがままだったんだ・・
「あ、公園じゃなくて、俺ん家来る?」
「え?いいのか?」
「うん、俺の家共働きで遅いし。聡太に時間があるなら俺ん家でゆっくり話そうよ。」
ふと時間を見ると、時計の針は16時半を過ぎたところだった。
「・・・・・俺も今日は時間気にしなくていーから、行く。」
二人で連れ立って電車に乗る。
俺・・部屋片付けてたっけ・・・?
聡太と二人きりでまったりできるなんて楽しみだな。
電車の中、隣同士に立ってガタゴトと揺られて・・・
聡太は話しかけても少し上の空。
いつも以上に無口になった聡太を、つり革を握ったままゆらりと覗き込む。
「・・・ッ!」
「聡太、どうしたの?体調悪かった?電車に酔った??」
「や、・・・・悠宇の家、初めて行くと思ったらなんか緊張してきた・・」
「・・・・!」
「親いねーって言うし・・・色々考えちまった・・ハハッ。心配させてごめんな。」
「いろいろ・・・・」
親がいないから来てなんて・・そういえばドラマとかではそのセリフの後は・・・俺たち、付き合ってるんだし、そう言う意味に取られ・・るよな!?
俺は自分が言った事が急に恥ずかしくなってきて、聡太の顔を横から覗き込んだまま次に何て言えばいいか思いつかなくて固まってしまった・・・
「悠宇、何て顔してんだよ。」
そういって吹き出した聡太は、俺の頭を強くグシャグシャとかき混ぜた。
「ご・・ごめん、俺・・変な顔してた?」
「スゲー可愛い顔してた。」
「ッ・・・!」
「また、赤くなった。ハハ、早く二人きりになりてーな。」
見下ろすように見つめられながら、熱を持つ頬をサラリと撫でられる。
そんな事を言われると、益々緊張してきて・・
聡太の顔から視線を外して、下を向いて赤くなった顔を隠す。
二人きりで家・・か・・。
「ごめんごめん、何もしねーから安心して。」
俺を気遣って、そう言って笑う聡太はとても優しい顔をしていて・・・
なんだ、何もしないのか・・・なんて、一瞬思ってしまった自分にビックリしてしまった。
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