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第七十五話 変わる関係
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キーンコーンカーンコーン・・・
昼休憩を告げるチャイムが鳴る。
いつものように屋上に向かう俺達、俺の右隣には悠宇がいてその隣には楽しそうに笑っている希がいて・・・いつもと違う事といえば、俺の左隣に松本がいる事だ。
いつもは悠宇にベッタリだったのに、昨日松本と俺が同じ境遇だって知ったせいか、今日は休憩の度に俺に話しかけてくれて・・
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「俺も、誰か・・の、一番になれるようにこれから努力してみる。朝比奈君の事も、何とかするから・・・何か、ちょっとだけふっきれた気がするよ。」
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昨日の帰り際、松本が俺に宣言した言葉を思い出す。
その時の松本は、目が少し潤んでいて泣きそうな顔をしていた。いつもの強気な顔じゃなくて、少し情けねー顔をしていて。
言い切って、顔を赤くして俯いた松本を見て、今まで色んな苦労があったんだろうなって想像して・・・良い言葉が思いつかねー俺は、俯向く頭をゆっくりと撫でるしかできなかった。
そして、「ふっ切れた」と言っていた通り、今日の松本はいつもと違うスッキリとした良い表情をしていた。
俺にかまう松本を見て、希が不思議そうな顔をしていたけれど、松本の家庭の事情までは言えねーしな・・・
それでなくても毎回休憩の度にやってくるから、二人に昨日の事を話す時間もなかった。
そして、階が違うのにチャイムが鳴ると殆ど間を空けずに現れる松本は、昼休憩も弁当持参で現れて今に至るわけだ。
「わ!俺、屋上で食べるの初めてだ!」
「俺達、いつも屋上で食べてるんだよ。気持ち良いよー!」
「ほらほら、皆〜!こっちこっち!」
「ふふ。森田君もうあんな所にいる。いつも場所を取ってくれるんだよ。」
「すばしっこくて何か可愛いね。」
「あは、そうだね。」
悠宇と松本が穏やかに会話をしていて・・・
詮索とか、妙なイタズラを仕掛けない松本の様子に安心する。
悠宇と松本の事、解決してよかった・・・
でも、突き落としたヤツがまだ居るわけだから、気は抜けねーな。
座りながらチラリと悠宇を見上げると、少し寂しそうな顔をして俺を見つめていて・・・
え・・・何だ・・・何かあったのか・・・?
無意識に頬に手が伸びそうになって、悠宇の後ろから顔を出した松本に気づいて慌てて手を引っ込めた。そうだ、今日は希だけじゃなくて、松本もいたんだった・・つい、いつもの癖で触れたくなっちまうな・・・
「・・・。俺、真咲君の隣!」
「あ、おう。」
「松本君、どうしたの??いつの間に聡太と仲良くなったのさ!?」
「昨日、朝比奈君の家に遊びに行ったら真咲君が居てね、夜ご飯一緒に食べて帰ったんだよ。」
「え、聡太と・・ご飯、食べたの・・・?」
いつもニコニコしている悠宇から、一瞬笑顔が消える。
けれど、松本が悠宇に話しかけようと俺の影から身を乗り出した時にはもういつもの笑顔に戻っていた。
そうだ・・昨日、一人にさせといて俺達は飯食ってたとか寂しいよな・・・
「あ、うん、色々あって遅くなっちゃたから・・・」
「色々・・・」
「え〜!僕も朝比奈君の家に行きたいよ〜!!皆でこっそり遊んでずるい!!」
「俺は昨日朝比奈君のシャツ濡らしちゃったから、謝りたくてさ。こっそりじゃないからね。はは」
「森田君も是非来てよ。俺はいつでも大丈夫だから!」
「行く行く!隣町とか、ちょっと旅行みたいで楽しみだな〜。」
はしゃぐ希がコンビニのカツサンドを頬張り始めたので、それぞれ持ってきた弁当を開いていると・・・
「聡太、毎回思ってたけど、僕には理解できないよ・・よくお米にココアでご飯が食べられるね・・・」
この流れ・・・きたな・・・いつもの希の口撃が始まる。
昼休憩は、こうして希が何かと俺を茶化して三人で盛り上がっている。
それはそれで楽しいんだけど、いつもやられっぱなしっつーのもな・・・そんな事を考えながら希の手元を見ると、牛乳がしっかりと握られていて・・・
「・・・希、昼はいつも牛乳だよな・・それって・・」
「聡太っ!!」
言葉を続けようとすると、悠宇が俺の肩を掴んで大げさに止めに入ってきた。
「・・・そうだよ・・・ちょっとでも、背が伸びるようにだよ!!!!分かりやすくて悪かったね!!!!」
ターゲットが自分に移って不本意そうにぷいっとそっぽを向いて怒る希。
今日は形勢逆転のチャンスかもな。
でも、確かにいつも牛乳飲んでるな・・可愛い雰囲気のせいか、希が背の高さを気にしてるとは思ってなかったんだけど・・・。
それに、いつも強気で明るくてパワフルな希は、体だけデカイ俺よりもずっと存在感がある。
大げさにプリプリと怒る希を悠宇と松本が必死になだめていて・・・
「森田君、俺はもう伸びないかもだけど、森田君にはまだまだ無限の可能性があるんだから!!気にしない方がいいよ!」
「そ、そうだよ!朝比奈君の言う通りだよ!俺も、もうあんまり伸びてないし・・このまま止まると思う!森田君にそのうち抜かされちゃうな!ははは!」
「そ、そうなのかな・・?」
「俺、まだ伸びてるけど・・・」
「聡太っ!!!!」
悠宇に続きの言葉を遮られる。
弄る側に回るのも悪くねーな・・・
まあ、俺みたいにつまんねーヤツには、身長位ねーと何もねーけど。
希の魅力に身長はそんなに重要な事だとは思えねーんだけどな。
「ふん、ちょっと人より背が高いからって・・・もう知らないからね。」
そう言って大げさに牛乳を一気飲みする希を見て、可愛くて思わず笑みが零れる。
そんな姿を見ると、結局俺は弄りきれなくて・・・
弄るのにも才能ってあんだな。容赦なく俺を茶化す希をちょっとだけ尊敬する。
「何さ聡太!バカにしてんの!?」
「・・・いや、希は小さくても存在感がデカイから。背なんかなくたって、俺なんかより十分カッコイイと思ってたんだけど・・それに、その顔にでかい身長は想像できねー」
「180の森田君かぁ・・・確かに想像できないね・・・。」
「え・・?褒められてる?」
「ああ、褒めてる」
「そ・・そっか・・・ま、いいや。今日のところは許してあげるよ。
でも、背が高いに越したことないから、僕は頑張るけどね!
あ〜今日は調子狂うな〜。聡太も腕を上げたね。ふふふ。」
「入学してからほぼ毎日希に茶化されてっからな。」
ふっと笑うと悠宇も楽しそうに笑ってくれて。
さっきの寂しそうな顔がひっかかるけれど、その顔を見て少し安心する。
「いつもこんな感じなの?三人は本当に仲良しだね。」
「今日はやられちゃったよ〜悔しい!でも、うん、僕たち仲良しだよっ。えへへ、口に出すとなんだか恥ずかしいねぇ。」
「羨ましいな・・・」
少し寂しそうに松本が笑う。
そういえば、友達の事、「それなりに」いるっつってたな・・・
ぼんやりと昨日の松本の言葉を思い出していると、突然俺の肩に悠宇がぶつかってきた。
「・・・わっ!」
ドン!
「えっ?朝比奈君どうしたのさ!」
「あ・・・あ・・・っ・・・」
「悠宇、大丈夫か!?」
悠宇の怯えた様子に心配そうにあたふたする希と、そんな悠宇をじっと見つめる松本。
俺は、ぶつかってきた悠宇の肩を抱き寄せて、怯えた様子で何かを見つめている悠宇の視線の先を追った。
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