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第七十七話 俺の不安と聡太の不安 side朝比奈 悠宇
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手を洗いに行く二人を笑顔で見送りながら、昨日までとは明らかに違う松本君の態度と二人の距離に戸惑う自分がいて・・・
会話の途中、さり気なく聡太に触れる松本君を見ていると胸が苦しくなる。
男同士で仲良くしてるなんて別に普通の事だけど、それが友情じゃないかもしれない事は俺も聡太が好きだからなんとなく分かるんだ・・・
松本君とのわだかまりが解けてほっとして、でも、松本君が聡太を好きかもしれないという不安が押し寄せてくる。
人を好きになる気持ちは自由なのに、それを嫌だと感じてしまう自分が嫌いになりそうだ。
聡太は優しくてかっこ良くて・・それなのに可愛い一面もあって。モテるのは分かっていたけれど同性までその魅力に気がついたかもしれないなんて。
女の子とは自然と距離を取っている聡太だけれど、仲良くなった男の子とのスキンシップは多い方だと思う。そんな仕方の無い事が益々俺を不安にさせる。
今日1日、松本君が聡太に絡むたびに必死に笑顔を作っていたけど、もう限界で。
もし、聡太が松本君を好きになったらどうしよう。
聡太を信用しない訳じゃないけれど、松本君はかっこいいし人懐っこくて明るくて・・・
あんなにアピールされたら、心変わりしたっておかしくないんじゃないか・・・
俯いてそんな事を考えていると、目の前が暗くなっていくような気分になる。
そんな時、森田君の陽気な声が俺を現実へと引き戻してくれた。
「・・・ねぇ!朝比奈君って虫が苦手だったんだねぇ〜。あんなに動揺してる姿、初めて見たよっ!ふふ。」
「う、ん・・びっくりさせてごめんね。俺本当に苦手で・・・もう、遺伝子レベルでダメなんだと思う。」
「遺伝子レベルって!大げさだよぉ〜〜!」
「いや、でもすごく怖くない?あの素早い動き、早くなくてもあのフォルム・・ほら、こんな風に・・・・・・あ、やってて怖くなってきた・・・」
「ブハッ!!!真剣な顔してなんて動きしてるのぉ〜!!!も、ふっふっふふふ・・あはっあははは!」
俺の必死の動きに森田君がお腹を抱えて爆笑する。怖さを伝えようとしただけなんだけど・・・
でも、こうやって笑い飛ばしてくれると、何だか俺の沈んだ気持ちも一緒に吹き飛ぶような気がする。
一人で考えてたって、仕方ないよな。俺は俺で、聡太に真っ直ぐぶつかるしかないんだから。
「ふふ。そんなに面白かった?」
「イケメンが真顔で虫の動きだよ!?ツボった〜ぁ!ブクク・・!」
む・・し・・その単語はあまり聞きたくなかったけど・・・
「はぁ・・本当嫌な季節になってきたなぁ・・」
「本当だねぇ。・・くくくっ・・」
思い出し笑いをする森田君は、その可愛いクリクリした瞳に浮かんだ涙を指でゴシゴシと拭っている。
俺、一体どんな動きだったんだろう。そう思うとさっきまでの真剣な自分がなんだかおかしくなってきて・・・
「ふふふ。こう、だっけ・・・?」
「くっうふ、あはは!やめてその動き!あ〜思い出させないで!やっと落ち着いてきたのに!!」
「笑いすぎー!ははは」
「うふふふ・・ごめんごめん!」
お腹を抱えて楽しそうに笑う森田君を見ていると、元気が出てくる。
「今日・・俺ずっと色々つまらない事考えちゃってて・・でも、森田君のおかげでちょっと元気出てきた。」
「・・・松本君の事、でしょ・・?僕もちょっと気になってて・・聡太に対していつもと明らかに態度が違うもんね。」
俺、そんなに態度に出てたかな・・・。
森田君、気がついてたからあんな風に明るく声を掛けてくれたの?森田君の優しさに、朝から張り詰めていた気持ちが和らいで、つい不安を口に出してしまった。
「う、ん・・友達なんだって思いたいけど、二人を見てたら不安になっちゃって。聡太の気持ちが変わったらとかそんな事ばかり考えちゃうんだ、フリーだったらどうしてもアピールされやすいし・・・皆に、聡太と俺は付き合ってるんだって当たり前に言えたら・・少しは安心できるかもしれないけど、そんな事出来ないし・・」
「ふふ。聡太も同じような事考えてると思うけどね。二人して、モテモテで羨ましいったらないよ!そりゃあ、付き合っている人がいないっていうだけで、朝比奈君も聡太もそういう対象で見られる機会が増えるワケだもんね。でも、まさか松本君が・・・・」
森田君が何かを言いかけたその時、その二重の大きな瞳が俺の後ろを見て一層大きく見開いた。
「悠宇・・・」
後ろから突然声を掛けられて、慌てて後ろを振り向くと無表情な聡太と驚いた顔をした松本君がいて。
突然現れた二人に俺と森田君は固まってしまった。
いつもだったら軋む扉の音で誰かが入って来た事に気がつくのに、つい話に夢中でその音が耳に入らなかったんだ・・
聡太になんて思われたんだろう・・松本君と聡太の仲に嫉妬してるなんて、まるで聡太を信用してないみたいじゃないか・・・
松本君だって、例えそれが真実だとしてもこんな話しをされて嫌な気持ちになるに違いなくて。
「い、今の話って・・・」
「松本、悪い・・・その話、後でさせてくんねぇ?悠宇、ちょっとついてきて・・」
そう言って俺の腕を取って聡太に立ち上がらされる。
・・怒って・・るよな・・?
嫌われてしまったかもしれない・・・そう思うだけで、頭が真っ白になる。
俺は腕を引かれるまま、黙って聡太に着いて行った。
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