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第七十八話 聡太の本音 side 朝比奈 悠宇
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聡太に連れてこられたのは「鬼ごっこ」の練習の時に見つけた用具入れだった。
パタンーーーー
先に俺を部屋に入れて、ドアを閉める聡太。
何も言わないから不安が募る・・・
俺も何を言っていいかわからなくて、薄暗い室内で聡太をじっと見つめる事しかできないでいると、急にその長い手が俺に伸びてきてーーー
「・・・っ」
罪悪感から自然にぎゅっと目を閉じた次の瞬間、聡太の優しい香りがすぐ傍で香って・・体を包む程よい力強さに、さっきまでの緊張が嘘みたいに溶けた。
俺は、聡太に嫌われたかもしれないと思うだけで、あんなにも不安になってしまうんだって初めて知った。こんなにどうしていいか分からない気持ちは初めてで・・・
俺を抱きしめた聡太は、俺の首筋に鼻を寄せてスーッと息を吸い込んで、ため息とともに吐き出した。
「はぁ・・・いいのかよ・・・」
耳元で呟く聡太。
いいのか・・・?
安心した気持ちが一気に不安へと傾く。いいのか、の意味がわからなくて自然と体も固まってしまって・・・一瞬頭を過ぎったマイナスな思考。聡太と松本君が付き合ってもいいって事?でも、今抱きしめてくれてるし・・
「な・・・何が・・・?」
問いかける俺の声は少し震えていて、不安が自然と声に現れてしまう。
「俺達が付き合ってる事、皆に言ってもいいのかって事・・・」
少し怒ったような言い方に、さっき自分が言った事を思い出す。
そうだ、男同士で付き合ってるなんて普通知られたく無いに決まってるし、皆がどう思うか分からないよな。そんな当たり前の事、分かりきってるハズなのに俺は・・・
「言えるわけ、無いのに・・・さっきは変な事言ってごめん・・。」
「いや、そうじゃねー・・わり、言い方、悪かったよな。」
「ううん!俺が変な事言ったんだから、気にしないで!」
「あー・・・変な事じゃなくて・・・小せぇやつだと思われたくねーから言わねーつもりだったんだけど・・・本当は俺だって、悠宇が告白された時、そっちに気持ちが行っちまうんじゃねーかって、悠宇は俺のだって言いてーって思ってたんだよ。今日の事は、俺がちゃんと話せてなかったから不安にさせちまって、ごめんな。」
「聡太・・・」
俺の肩を掴んで、聡太にじっと見つめられる。いつも、聡太は真っ直ぐに俺を見てくれていたのに。聡太の心変わりを心配して、勝手に不安になってしまった自分が恥ずかしい。
こんな俺に、自分が悪かったと言ってくれて・・・。
「えっ・・・ゆ・・・悠宇!!!!俺、本当ごめん!」
突然、ひどく驚いたように眉をぎゅっと寄せた聡太に親指で瞼をぐいっと擦られて・・
次の瞬間、擦られて反射的に閉じた瞼に聡太の優しいキスが降ってきた。
「ごめん・・・ごめんな・・・泣くなよ・・・」
囁きながら、何度もキスが降ってくる。
触れられた所がじんわりと暖かくなるような、優しい優しい、聡太の気持ちの込もったキス・・・
・・泣くな・・・?俺、泣いてるのか・・・?
言われて、頬を滑り落ちるほのかに暖かい感触に、自分が泣いている事に気がついた。
聡太が与えてくれる優しさ、自分の事ばかり考えていた恥ずかしさ、聡太に愛される安心感と松本君への罪悪感・・・一気に押し寄せる感情に自然と溢れた涙を、自分のせいで泣いたと勘違いして慌てる聡太。
「松本の事、そんなに不安に思ってるなんて気づけねーで・・俺、鈍いから・・本当悪かった・・でも、俺も松本もそんなつもりねーから・・・」
「ごめっ・・俺、そんなつもりじゃ!!!俺が自分の事ばっかり考えてて・・・二人が急に仲良くなったから勝手に不安になっちゃったんだ!聡太は何も悪くないんだ・・俺が聡太を好き過ぎて、勝手に不安になっちゃって・・でも、聡太がまだ俺の事を好きでいてくれて安心して・・・ああ、うまく言えないけど、俺・・・っ・・・」
「・・それって、妬いてくれたって事だよな・・・すげぇ嬉しい・・・」
低くて優しい声が上から落ちてきたと同時に、大きな手のひらが俺の頬を包み込む。
そして、瞳を閉じた聡太の顔がゆっくりと近づいてきてーーー
少し微笑んだその顔は本当に嬉しそうで・・・
なんて顔・・俺を好きだと言ってくれているような表情が嬉しくて、聡太の背中に腕を回してぎゅっと抱きしめる。
ゆっくりと押し付けるだけのキスをして、お互いに笑い合って・・・
キーンコーンカーンコーンーーーーー
「予鈴・・・」
離れたくない。そう思った時・・・
「離れたくねぇな。」
同じ気持ちなのがすごく嬉しくて。
「ふふ、俺も思ってた。」
「悠宇は、やっぱ笑ってる顔が一番だな。」
そう言って優しく微笑む聡太の笑顔は、すごく破壊力があるって事、きっと本人は分かってないんだろうな・・・
聡太の気持ちを確認できて安心したけれど、さっきの話、松本君にもきっと聞かれてるよな。松本君は、どう思ったんだろう・・俺と聡太が付き合ってる・・・なんて・・
「俺のつまらない嫉妬・・で、松本君に知られちゃって・・・ごめんね・・・。」
「つまんなくねーよ。松本には、俺からちゃんと話しとくから・・・昨日の事も話してーし、その後悠宇の家行っていいか?」
「うん。待ってる・・・」
松本君を傷つけたくないけれど、聡太の事を好きな気持ちは俺も同じ・・・
俺がついて行っても、きっと松本君は辛いだけだから・・・
放課後の約束をして、俺達は予鈴が鳴って少し静かになった廊下を教室に向かったのだったーーーーーー
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