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第八十二話 お似合いの二人 side 迫 実羽
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「お!見ろよ、すげー美人じゃね?」
「本当だ!いこーぜ!」
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「すみませーん!一人ですか?時間あったら、遊ばない?」
「時間ないんで・・・」
「いいじゃん!帰るトコでしょ?ちょっとだけ!おごるし!」
「予定あるから、ごめんなさい。」
「嘘嘘!ね、そんな怖い顔しないで!ほら、立って話しててもしんどいじゃん、どっか寄ろ!」
電車を降りたところで絡まれちゃって、
・・はぁ・・・うっとおしいな・・・って本音が思わず顔に出ちゃう。
髪を明るくしてから、余計ナンパされるようになったかも。もう黒に戻しちゃおうかなぁ。
馴れ馴れしく肩を触られてイライラしちゃうけど、変に怒らせても怖いから極力態度に出さないようにして相槌を打つ。
しつこい二人にため息をつきつつ、ふと顔を上げると向こうから歩いて来る背の高い男の子に目を奪われて・・・
ハッとする程綺麗な顔で、背が高くて・・・周りの注目を浴びて綺麗な栗色の髪をなびかせて歩いているのは間違い無く朝比奈君だ。
でも、少し元気が無い顔をしてる?
ぼんやりと遠くを見つめてゆっくりと歩く朝比奈君は少し危なっかしく見えた。
「朝比奈君!!!」
まだこちらに気がついていない朝比奈君に、手を上げて呼びかける。
「え?何、待ち合わせだったの?」
「あ・・うん。そうなの。」
しまった・・・久しぶりに朝比奈君に会えた喜びで、ついこの二人の事を忘れて大声で呼びかけちゃった・・!
朝比奈くん、厄介な事に巻き込まれたって思うかな・・・。
「え?・・・・あれ、君の彼氏?」
私の呼びかけに、立ち止まって手を挙げた朝比奈君に気がついた二人が顔を見合わせて驚いた顔をしていて・・・
「ごめんね、先約は俺だから。」
私の表情を読み取って、すぐに状況を察した朝比奈君が足早に近づいてきてくれて、肩を掴む手を払って私達の間に遮るように立ってくれた。
ニコニコしているけれど、どこか威圧的な雰囲気を醸し出す朝比奈君はすごくカッコ良くて。
男の子達はそんな朝比奈君を見上げながらアワアワしている。
今更好きになるとかそういうんじゃないんだけど、こんな風に男らしく庇われると単純にキュンとしちゃう!よね?
ナンパしてきた人達にとっては、嫌味な位カッコイイ彼氏なんだろーな。道行く女の子も、じっと事の成り行きを見ていて・・・ふふ、真咲君には悪いけど、こういう誤解はどうしても優越感を感じちゃう!
動かなくなった二人に向けて再びニコリと微笑んでから、朝比奈君が再び口を開いた。
「もう、行ってもいいかな?」
「あ、本当に予定あったんだね!邪魔してゴメンね!・・じゃ、俺達行くから!」
「お、おい、いこーぜ!」
一瞬目を見合わせた二人は、逃げるように立ち去って行った。
こんな人が現れたら、逃げたくなっちゃう気持ち分かるな。
私、途中から面白がっちゃって、ちょっとだけ可哀想だった・・かな?
「迫さん、大丈夫だった?」
高い位置から、少し首をかしげて優しく微笑む朝比奈君。
夕日を浴びた明るい色の髪はキラキラと透き通るように輝いて、綺麗な二重の奥にある瞳は不思議な色をしていて、じっと見つめていると吸い込まれてしまいそう・・・
久しぶりに会ったけど、笑顔の破壊力が増してる気がするんだけど・・・。
凄く整った顔だから話しかけられたら緊張しそうなモノなのに、フワリとしたその優しい笑顔を向けられると暖かい気持ちになって、もっと話したいと思ってしまう。
朝比奈君には、そんな不思議な魅力があるんだよね。
性格も良い上にそんな笑顔で話しかけられたら、誰だってその瞬間に恋に落ちちゃうんじゃないかな・・・
中学の時みたいに、東上坂でも女子を虜にしてるんだろうな。
でも、こんな人が一時でも自分を好きでいてくれたなんて、今思うと何だか夢みたい。
友達に戻れてからは時間が合わなくて会えてなかったけど、今日の思わぬ出会いに感謝だね!凄くいい雰囲気だった真咲君との事もあれからどうなったのか気になってたし・・・。
でも、さっきの様子だと何かあったのかな・・・
自分が苦しめていた時期があるくせに勝手なんだけど、真咲君が誤解を解くのを手伝ってくれたおかげで、幸せでいてほしいって思えるようになったし、腐ってばかりだった自分も少しづつ前を向いて進めるようになっていて・・。
出会った頃のように友達として支え合える仲に戻りたいって、純粋に思ってるんだよね。
「うん、助かったよ。ありがとう!朝比奈君は、何してたの?ちょっと元気なくない?」
「・・・・うん・・・」
「なになに?真咲君と喧嘩とか?これでも恋愛相談は良く受ける方なんだ!良かったら、相談に乗るよ!」
「・・・聡太と約束があるから、それまでになっちゃうんだけど・・ちょっと話してもいいかな・・?」
「もちろん!」
真咲君の名前が出て、少し照れて下を向く朝比奈君は可愛くて・・・
さっきまで男の子って感じだった朝比奈君が、急に可愛く見える。
「よし!そうと決まったら、時間も無いし行くよ!」
少し元気が無い朝比奈君の背中を、ふざけるように押しながら歩く。
カフェに入って甘い香りに包まれると、困ったように笑っていた朝比奈君も表情が少し明るくなった。
本当、一体何があったんだろう・・・
二人で並んでメニュー表を見る。
チラリと横を伺うと、口元に手を当てて、長い睫毛を伏せて真剣にメニューを見つめる朝比奈君。そんな朝比奈君を店員のお姉さんがじっと見つめていて・・本当、何をしていても様になるな・・・
今までのお詫びを兼ねて今日は思い切り元気付けてあげよう!と、朝比奈君の横顔を見ながら誓った私なのだったーーー。
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