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第八十三話 お似合いの二人2 side 迫 実羽
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「さ、甘い物食べて、元気だそう!」
「う、ん・・・そうだね!」
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窓際の小さなスクエアテーブルに二人で向かい合って席に着く。
高めの椅子にフロアから足が浮いてしまうけれど、朝比奈君は少し足を曲げる余裕があって。
足長いな〜・・あ、横の席の子が朝比奈君の事見てる・・・なんて、つい他の事に気を取られていると、朝比奈君のいただきますの声が聞こえてきた。
顔を上げると、目の前にはクレープを頬張る朝比奈君。
薄くて形のいい唇、大きなクレープに上品にかぶりついてモグモグと美味しそうに食べる姿はすごく幸せそう。
ふふ、可愛いな・・・
初めて出会った時の女の子みたいな容姿とは随分変わってしまったけれど、こういう時の表情は今も変わらないな。
「で、何かあったの・・・?あんな暗い顔して歩いてさ・・真咲君と喧嘩でもしたの・・・?」
「喧嘩じゃないんだけど・・・聡太がカッコ良過ぎるから仕方無い事なんだけど、聡太の事を好きになった人がいて・・」
「え・・・・ノロケ・・・?」
「え!?いや、違っ・・・そうじゃなくて・・!」
「どうせ、朝比奈君だって告白されてるんでしょ?真咲君も同じじゃないの?」
「聡太を好きだと思ってる子は多いと思うんだけど、雰囲気のせいかまだ直接告白されてないみたいなんだ。それと・・・今不安になってる相手は、男の子なんだよ・・。」
「んっ?え!?男の子!?」
心配している相手が男?
朝比奈君と真咲君の時も凄く驚いたけれど、意外にも二人がお似合いだったから素直に受け止められたんだよね・・・
むしろ、女の子のモノになっちゃうより全然アリじゃん!なんて思っちゃったりして・・・
でも、同性愛ってそんなに身近にあるモノなの・・・?
「そう、男の子・・・最近仲良くなった子なんだけど、聡太への態度が急に変わったんだ。スキンシップが多くなって・・・」
「それ、普通に友達なんじゃないの?」
「俺も聡太を好きだから、なんとなく分かるんだ。そういう違いが・・。」
急にしょんぼりとした朝比奈君は、ゆっくりとクレープをお皿に置いて下を向いて・・
いつも明るくて皆を気遣ってくれる朝比奈君が落ち込んでる。
真咲君にフラれたワケでも無いのに、 ライバルが現れただけでこんなに動揺して・・・朝比奈君の中で、真咲君の存在がそれだけ大きいっていうのが凄く伝わって来る。
「あ・・でもさ、私と色々あった時、朝比奈君の為にあんなに動いてくれてさ、心配しなくても真咲君は朝比奈君の事大好きって感じだったじゃん!」
「そ、うかな・・・うん。聡太の事は信じてる・・でも、好きになる気持ちってどうしようもないもんね・・・。その子、カッコ良くて明るくてさ・・そんな子にアプローチされたら、気持ちも揺らぐんじゃないか、とか・・不安にならない?」
クレープを弄びながら下を向いてボソボソと話す朝比奈君が聞き捨てならない事を言う。
カッコイイって・・朝比奈君にそれを言わせるその相手ってどんな子なの!?
県内一の進学校で、エリート集団のくせに・・・東上坂恐るべし・・・
「そんなに心配になる程カッコイイの?肝心の真咲君はどんな感じ!?まんざらでもないの?」
「その子は・・・爽やかで整った顔をしてて、女の子にも人気があるんだよね。でも、聡太はその気持ちに気づいてないと思う。実は、今二人は会ってるんだ。それで、どうなったか気になっちゃって・・・。家に帰っても悪い事ばかり考えちゃいそうで、ブラブラしてたんだよ。」
「朝比奈君無しで二人は遊ぶ仲なの?」
「俺、二人が急に仲良くなった事で不安になっちゃって、俺達が付き合ってる事がその子に分かるような事しちゃったんだ・・聡太は、その子にちゃんと自分の口から伝えたいって言って、今話してるところだと思う。」
「そうなんだ・・・真咲君らしいね・・・」
口数は少ないけれど、真っ直ぐに私を見つめるあの瞳を思い出す。
朝比奈君の為とはいえ、私も救われたんだよね・・・
その子の事は分からないけれど、こんなに素敵な朝比奈君から真咲君が心変わりするとは思えないんだよね。まあ・・・当事者としてはライバルが現れたら不安になる気持ちは分かるけど。
でも、あの時気持ちを確かめ合って見つめ合っていた二人はすごく幸せそうで・・・
「真咲君を信じて待とうよ・・私は大丈夫だと思う。」
「一人だと考えたくない事まで考えちゃって・・・今日迫さんに会えて本当に良かったよ。元気、出てきた。」
ニコリと笑う朝比奈君はまだ少し元気が無いけれど、少しでも力になれたなら嬉しいな・・
よし、明るい話題でこの暗い雰囲気を吹き飛ばそう!
何話そう・・・あ!
恋話といえば、コレでしょ!
「・・・で、朝比奈君・・・真咲君とはどこまでいってるの・・・?」
「えっ!?」
私の質問に驚いた朝比奈君の声は大きくて・・・
周りの子達が一斉にこちらを向く。
それに焦ったように、また一層慌てた朝比奈君はオロオロしたかと思うとゴクゴクとカフェオレを飲んで気を紛らわせている。
モテてますけど何か?って感じの洗練された外見からは想像もできない位純粋な朝比奈君を見ていると、ちょっとだけイタズラ心が湧いてきて・・
「大きい声出しちゃってごめん・・・でもそんな話・・」
「いやいや〜恋話といえば、この話はお約束だよ!
常識!常識!当たり前!ふふふ。
で、どうなの?最後までしたの?」
正直、これはすごく興味ある・・
いくら綺麗とはいえ、どうやって見ても女の子が放っておかないような、ちゃんと男の子らしい朝比奈君と、大人っぽくてカッコイイ真咲君が付き合っていて。
この組み合わせでいくと・・・女の子役は朝比奈君・・だよね?
キスとかは想像できても、最後までって・・・想像できないんだけど・・・。
「そ、そうなの?お約束なの・・・・?」
カフェオレが入ったグラスを両手で持って、ストローを口に咥えたまま少し上目使いで私を見る朝比奈君は明らかに動揺していて・・・
本当に信じちゃってる・・・さすが朝比奈君、期待を裏切らない!!
「うん!お約束なの!恋話には欠かせないの!」
素直で純粋な所、全然変わってない・・・
そこが嬉しくもあり、ちょっと心配だったりして。ふふ。
「じゃあ・・・・」
〜〜〜♪♪
「あ、ごめん聡太だ!ちょっと出るね・・・・
はい。話が終わったの?・・・俺は、迫さんと一緒でね。
うん、そう・・・・駅前近くのハニーワッフルって店にいる。
うん、うん・・分かった待ってるね。」
ピッ・・・・
「ごめん、聡太からだった。すぐココに来てくれるらしいから・・。」
・・・・せっかく聞き出せそうだったのに・・・!
そんな空気じゃなくなっちゃった。
真咲君、絶妙なタイミングすぎるよ・・・・。
それからは少し私の近況を話したりして。
友達が増えた事、塾に行き始めた事、一つ一つ一緒になって喜んでくれる朝比奈君。本当にこうして笑い合えるようになって嬉しい・・・
カランーーーーーー
たわいもない話で盛り上がっていると、ドアベルが鳴って。
振り向くと入り口には真咲君がいた。
私達を見つけて歩いてくる間、女の子達が騒いでいてーーー
朝比奈君・・・こうして見ると、ライバルだらけじゃん!
でも、同性はやっぱり特別、なのかな・・・?
そこら辺の気持ちは私には分からないけれど・・・
「・・久しぶり。元気だったか・・・?」
私達の席の横に立って、テーブルに片手を付いて私に話しかける真咲君は相変わらず読み取れない表情をしていて。低い声でぼそりと呟くから一見機嫌が悪そうだけど、その目はじっと私を見つめてくれている。
元気だったかーーそれはただの挨拶じゃなくて、ちゃんと私を心配してくれている事が伝わってきて・・・
純粋で優しい朝比奈君、ぶっきらぼうだけどその裏に芯の強い暖かさを持った真咲君・・・
うん。この二人なら、やっぱり大丈夫だよ。
「うん、私ちゃんとやってるよ。頑張ってる。」
「そうか。」
たった一言、だけど少し上がった口角と細められた瞳が全てを物語っていた。
「じゃあ、私行くから・・・真咲君、朝比奈君の事よろしくね!」
「おう、まかせとけ。」
無表情で親指を立てる真咲君に後は任せて、私は店を後にした。
通りに面したガラス張りの席で、話をしている二人の姿が見えて・・・・
さっきまでとは違う、すごく優しい表情の真咲君とそれを見て顔を赤くする朝比奈君。
ああ、やっぱりこの二人すごくお似合い!!
絶対大丈夫だと思うけど、ここまで聞いちゃったからには事の成り行きはちゃんと聞かせてもらいたいな・・。
また、近いうちに朝比奈君に会う約束をしなくっちゃ!
見つめ合う二人を見て、なんだかポカポカした気持ちで家路についたのでした。
▲
久々登場の迫さん。
元気に過ごしています。
大学は良い所に行こうと塾に通い初めて、元々の頭の良さもあって
高校の実力テストで1位を取ったそうです。
迫さんの未来に幸あれ!(^v^)
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