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第八十四話 友達がくれるモノ、恋人がくれるモノ side朝比奈 悠宇
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お昼休み、思わず泣いてしまった俺に聡太はちゃんと気持ちを伝えてくれた。
フラれたわけでもないのに、涙が出るなんて・・自分でもその女々しさにビックリしたのに、聡太は自分を好きでいてくれる証拠だと喜んでくれて。
けれど、松本君の気持ちに気付いていない事がどうしても気になってしまう。
今頃告白されていたりしたら、それを聞いて聡太はどう思うんだろう。松本君だって男の子だ・・二人きりで聡太に迫ったりしたら・・・聡太を信じているのに、一人になるとつまらない事を考えてしまって・・・
そんなくだらない事を考える自分が心底嫌になってくる。
あてもなく一人で地元を歩いていると、迫さんに出会って・・・とんでもない事を聞かれて困ったりしたけれど、優しい励ましに心のモヤが少し晴れた。
ウィンドウ越しにニコニコと俺達に手を振って軽い足取りで去って行く姿を見ていると、俺をこうして元気付けてくれたように、昔みたいに皆を引っ張って明るく前を向いて進む迫さんの未来が見えるようだった。
「悠宇、俺達も出よーぜ。」
「聡太は食べなくていいの?」
「おう・・ちょっとそんな気分じゃねーし、早く話してーことがあるから。」
「・・・早く話したい、こと・・・?」
少し辛そうな表情で話したい事があると言われて、つい不安が表情に出てしまう。
俺は、またこんな風に顏に出してしまって。
こう何度も続くと、さすがに嫌になるんじゃないかと思って、また落ち込んでしまう。
「悠宇、そんな顏すんな。昼にも言ったけど、ちゃんと話してなくて不安にさせちまったから昨日からの事を早く言いてーだけだよ。心配する事なんて・・・・あ、・・・ある、かもだけど、ねーから!」
「え!?あるの?ないの?」
少し焦って動揺しながら話す聡太に不安が募る。
いつもなら可愛いと思える聡太の言動も、つい動揺してしまって。
俺、聡太が好き過ぎておかしくなりそうだよ・・・。
聡太を見つめたまま次の言葉を待っていると、いつも通りふわりと笑いかけてくれて・・・机に置かれていた聡太の手が俺の頭に伸びてきた。
椅子に座ったまま隣に立つ聡太を見上げると、いつもよりさらに高い位置にある聡太の顏は少し新鮮に感じて・・・。
高くて形のいい鼻や、前髪の間から見える瞳の綺麗さがいつもより強調されて見えるようで、こんな場所なのに少しドキドキしてしまった。
つい見惚れてぼーっと見つめていると、頭に置かれていた聡太の大きな手が俺の頬に伸びてきた。
あれ・・・?てっきり、いつものように髪をクシャっとされると思ってたのに・・・。
聡太は俺を見つめながら、耳にかかる髪をくるりと指に巻き付けて弄んで、そのまま俺の頬に人差し指を沿わせて唇まで滑らせたかと思うとパッと手を離して目を逸らした。
何、今の・・・
すごく甘い雰囲気で、あのままキスされるのかと思った・・・意識すると、一気に顏が熱くなるのを感じる・・
やばい、こんな所で変な気持ちになるなんて・・・
「・・っ・・聡太、出ようか・・・」
「おう・・・・」
赤くなった顏を隠すように俯いて立ち上がると、隣のボックス席には東上坂の制服を着た生徒が見えて・・・危ない、これ以上赤くなったらきっと変に思われる。
やっぱり外で二人でいるのは危ないかも・・落ち着いて話す為に、約束通り俺の家に向かった。
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カチャン・・・
「どうぞ。」
「ん?・・・こないだの紅茶じゃねーんだな。」
ローテーブルを挟んで聡太と向かい合って座る。
紅茶をテーブルに置くなり、香りの違いに気がついてくれて。
「そうなんだ。聡太が好きそうだと思って、買っておいたやつなんだよ。」
「俺の為に・・?」
俺の言葉に優しい笑顔で応えてくれた聡太は、カップを手にとって香りを確かめてからゴクリと飲み込んだ。
「あ・・・チョコの匂い。甘くて、うまい。」
「あは。当たり!フレーバーもので、ここまで甘さもしっかりあるのって珍しいんだよ!喜んでもらえて良かった。」
「悠宇・・・ありがとうな。」
目の前の聡太がすごく優しく微笑むから、胸がぎゅっと締め付けられる。
好きな人が喜んでくれて・・俺、すごく幸せだ。
「俺、悠宇を不安にさせちまって。すげー反省してるんだ・・昨日からの事、話していいか・・・?」
「聡太が反省する事なんて・・話し、ちゃんと聞くから。俺も、ごめんね・・・」
「ああ。でも、その前に・・悠宇、俺の手の届く所に来てくれよ。」
小さなローテーブル越しに、目の前の聡太が俺に向かって手を伸ばす。簡単に届く距離。また、スルリと頬を撫でられる。
「・・っ・・・うん・・・。」
聡太に近づくと、ベッドに上がるように言われて・・
ゴロリと横になった聡太が腕を広げて優しく微笑む。
俺・・今、絶対顏真っ赤になってると思う・・
聡太はどうしてこんなに余裕があるんだろう・・・
恥ずかしくてまた少し俯きながらその広い胸にそっと頭を乗せると、俺の体を聡太がギュッと抱きしめて、髪に顏を埋めてため息をついた。
「はーーー・・・悠宇・・やっと捕まえた・・・あんな不安にさせて、悠宇が離れて行ったらどうしようかと思って気が気じゃなくて・・・。学校じゃ、ゆっくり話せねーし・・・」
「聡太・・・」
「・・・・昨日の夜は、松本が悠宇にちょっかい出してるように見えてたから、何とかしたくて俺から誘ったんだよ・・。その時にさ・・松本ん家と俺ん家の境遇が似てる事が分かって・・・で、ちょっと距離が縮んだんだよな。」
俺の為だったんだ・・・・その気持ちが嬉しくて。思わずパッと顏を上げると、俺を見下ろす聡太と目が合った。
見つめあったまま、前髪を梳かすようように優しく撫でられて・・恥ずかしくなってまた聡太の胸に顏を埋めると、クスリと笑う声が聞こえた。
「本当、俺・・悠宇が可愛くてしかたねーよ・・・」
「・・・っ・・・!」
もう顏上げられない・・耳まで赤くなってる気がする・・・。
俺の頭を何度も撫でてから、少し間を空けて聡太が再び話し始めた。
「それで、お互い親父が居なくてさ。苦労が分かるっつーか・・・だから、心を開いてくれたんだと思うんだよな・・」
・・・境遇・・か・・聡太の家は母子家庭で、お母さんの代わりに色々と妹さんの面倒を見てるんだよな。
突然お父さんが居なくなる。
それはきっとすごく大変な事で・・・
「それで、さっきだけど・・・俺達の事を松本に話してきた。せっかくダチになったんだし、希みたいに受け入れてくれたらって思ったんだけどな。」
「ダメ、だったの・・・?」
「・・・松本は・・俺を好きだって言ってくれた。」
告白・・・
思わずビクリと肩が揺れてしまう・・
そんな俺に、聡太は大丈夫とでも言うように、ギュッと強く抱きしめ直してくれて、そしてその続きを話し始めたーーーーー
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私の携帯だけかもしれませんが、「!」が「?」に変換されて表示されている箇所を幾つか見つけました。
原因は不明ですが、適宜修正しています。
読みにくくて申し訳ありません…
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