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第八十八話 朝比奈君という人2 side松本 依
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「このっ!朝比奈ッ!」
「えっ・・誰!?わっ!!やめて!」
山口が後ろから羽交い締めにするけれど、咄嗟にその腕を掴んで体を前に倒す朝比奈君。そして、そのまま背負うようにして持ち上げたかと思うと勢い良く横に振り落とした。
ドサッ
「ッ・・」
「あ、ごめん!でも、急にこんな・・」
「バカ!二人がかりで抑えろ!」
「分かってるよ!」
「鈴岡君・・俺、君達に何かした・・!?」
「お前の存在がムカつくんだよ!」
「え・・っ・・・!?俺、・・」
鈴岡の発言に朝比奈君が目を見開いて驚く。
何か言おうとしていたけれど、その間を与える事なく起き上がった山口と井上が両サイドから朝比奈君の腕を掴んで壁に向かって抑え込んで・・
「・・・ッ・・・!離して!」
どうやって救ったらいい?立ち上がったまま、皆の勢いに飲まれて足が震える・・・
くそっ、しっかりしろ俺!
「やめろー!朝比奈君を離せっ!!」
息を大きく吸い込んで、自分を奮い立たせるように叫んでから鈴岡に向かって思い切り飛びかかった。
ドンッーーー ドサッーーー
「くっ・・・松本っ!このッ!!」
鈴岡を抱えたまま、硬いコンクリの床に倒れ込む。
受身も取らずに体を打ち付けたから、全身が強い衝撃に襲われて・・
でも、うまくいった・・・そう思った次の瞬間ーーー
ガッ・・・・!!!
「邪魔すんじゃねー・・!」
「ぐっ、ゲホッ・・・」
「松本君!くっ・・何てひどい事ッ!」
捉え込んで横に倒れた鈴岡の足が思い切り俺の腹を蹴り上げて、目の前が霞む。
あまりの衝撃に、埃っぽい床に倒れ込んだまま腹を抱えて動けなくなってしまう。
くそっ・・・俺はなんて非力なんだ。
それに比べて朝比奈君は、二人が怯んだ隙に井上の足を払って体勢を崩させて、山口と揉み合いながらも俺を心配してくれていて・・・
「ッ・・!松本君!!大丈夫!?」
「おい!鈴岡、早く手伝え!逃げられるぞ!くそっ・・!」
「朝比奈、お前顔に似合わず乱暴だな・・・でも、これで終わりだ!」
再び二人に抑え込まれてしまった朝比奈君に鈴岡がジリジリと近寄っていく。
「よし、マットに押し倒すぞ!」
「わっ!」
ドサッーーーーー
「・・ッ!!いたっ・・・!!」
三人掛かりで押し倒されて、仰向けでマットに沈む朝比奈君に鈴岡が馬乗りになる。
腕と足もすぐに二人に抑え込まれてしまって・・・
「うっ・・・く・・・ハァ・・・」
身をよじって逃げ出そうとするけれど、さすがに三人掛かりには敵わない。
・・・助けないと・・・でも、俺が全力でぶつかってもこのザマだ・・どうしたら・・
横たわる朝比奈君を見下ろして、鈴岡がニヤリと笑ってポケットからスマホを取り出した。
「山口、写真頼むぞ。」
「ん、分かった。」
「井上、そのまま腕は押さえとけよ!俺が脱がすから・・・」
「えっ・・脱がす!?っ・・・!何で!?・・・あ、やめてっ!!!」
脱がせると言われた途端に酷く狼狽する朝比奈君。
どうして急にそんな不安そうな顔を・・・?
さっきまで、殴られても抑え込まれてもあんなに果敢に抵抗していたのに・・・
確かに、高校生にもなって脱がされるとか嫌だけど、そんなに怯えるような事か?
「何その顔・・・ふーん・・・朝比奈ってやっぱホモなの?だからそんな脱がされたくねーの?感じちゃう〜ってか?クックック・・・」
「違っ・・」
「おい、写真じゃなくて、動画とっちゃう?」
「ハッ、それいーな!」
「撮るぞー・・よし、いいぜ。」
「じゃあ始めるか・・・ん?
朝比奈・・お前、体操服の下にもTシャツ着てんのかよ?じゃまくせー・・・」
その言葉を聞いて朝比奈君の肩がビクリと揺れる。
腕を必死に動かすけれど、上から体重をかけて押さえつけられているからビクともしなくて。
鈴岡の右手がスルリとシャツに滑り込んで少しモゾモゾと動いたかと思うと、そのまま一気に胸元までめくり上げられてしまった。
少し暗い室内で、細く引き締まった朝比奈君の体がぼんやりと浮かび上がる。
腰・・結構細い。
色が白いせいか妙に目を引くその体。
一瞬の沈黙。
青ざめた朝比奈君の整った顔と、その綺麗な体に誰もが釘付けになる。
「やめろ!やめて!!!!鈴岡君!」
これ以上脱がされまいと必死に懇願して身をよじるけれど、鈴岡が聞くわけもなくて・・
その手がハーフパンツにかかった時ーーーー
「アッ・・・やめ・・ろ・・」
「・・なぁ・・男相手でも、無理やり脱がすのって何か変な感じだな・・なんかエロい・・・」
スマホで朝比奈君を撮影していた山口が誰にともなくポツリと零す。
「ふはっ!山口、何興奮してんだよ。お前もホモの素質あんじゃねーの!?」
「ッ・・バカ言え!シチュエーションだよ!朝比奈にじゃねーよ!」
「どーだかな。」
「確かに・・こんな顔されたらさ、何か変な気分になるな。綺麗な顔だし・・乳首もピンクで体もすげー白いしな・・」
山口に同調するように呟いた井上は、朝比奈君の手を片手でひとまとめに持ち直すと空いた手で細い首筋にスルリとその手の平を這わせた。
「・・ッ、触らないで・・!」
「ハッ、井上までホモかよ。あー・・なんならお前らやっちゃうか?」
「・・ッ・・そーいうんじゃねーって!!!顔もこんなだし、妙に綺麗な体してっから。ちょっと言ってみただけ!冗談冗談!俺ホモじゃねーし!ほら、誰か来る前にさっさと下も脱がそうぜ。」
「ふん。そーだな。」
「・・ッ・・ごめん・・・。」
「・・・?何謝ってんだこいつ?謝ったって止めねーぞ?」
ごめんと悲しそうに呟いた朝比奈君の声は少し掠れていて・・・
鈴岡に言ったようには聞こえなかったけれど、その言葉が一体どういう意味を持つのか、その時の俺には分からなかった。
鈴岡の手が再び下に伸びた時、スマホから顔を逸らした朝比奈君が俺の方を向く。
その表情は、下唇をキュッと噛んで、少し釣った大きめの二重の瞳には涙の膜が張っていて。
目が合うと、見ないでとでも言うようにぎゅっと閉じられた瞳から、ポロリと涙がこぼれた。
殴りかかられた時はあんなに気丈に振る舞っていたのに・・・
朝比奈君にとって、これは暴力よりもよっぽど辛い事なんだ・・
現実味の無い異様な空気に飲み込まれていたけれど、その涙で正気に戻る。
今度こそ、いや、今度は俺が助ける番だ!
「う、ああああああ!!!!!」
ズキズキと痛む腹を押さえて立ち上がり、鈴岡に向かって再びぶつかって行く。
俺の叫びに驚いた鈴岡がこちらを振り向いて・・
そのまま鈴岡を突き飛ばすと、俺は鈴岡ごとポールの中に突っ込んだ。
ガシャーーーーンガラガラ・・・
「イテ・・!松本テメェ・・・!!!!」
「ッ・・痛・・・」
「ハッ・・・う、もう離して!」
「わっ・・山口、お前も抑えろ!」
「お、おう・・・!」
鈴岡が居なくなって逃げ出した朝比奈君を二人が慌てて追う。
四つん這いになって這い出そうとした所を山口に抱きつくように抱え込まれて、その重みに潰されまいと必死に耐えていて。
「朝比奈、逃がさねーぞ・・ここまできたら弱み握らねーと俺たちがやばい・・」
「うっ・・・」
「俺が脱がすから・・・井上、早くスマホ用意しろ・・」
「分かった。」
「くっ・・アッ・・何!?やめて・・」
そう言って後ろから朝比奈君の体をまさぐる山口は少し興奮しているようで・・・
手の動きに合わせて、短く叫ぶ朝比奈君の声が倉庫に響く。
その声を聞くと妙に体がぞくりとして。
階段から突き落とす程に憎んでいたはずなのに、まさか朝比奈君相手に・・本当に欲情してる・・?
後ろから朝比奈君を抱き込んで、お尻に股間を押し付けるように密着して体を触る様子はまるでセックスみたいで・・
3人を相手に一人で抵抗していた朝比奈君も大分消耗しているし、このままじゃヤバイんじゃないか・・?
俺が朝比奈君を救ってこの倉庫から出ないと!
「山口、やめろっ!!」
痛みを堪えて再び駆け出した次の瞬間ーーー
「あ、うあぁぁぁぁっ!!!!」
朝比奈君が突然悲鳴をあげてガクリとうな垂れた。
え!?一体何があったんだ!?
「おっおい山口、ヤバイんじゃねーか!?何したんだよ!?」
「え、俺!?何もしてねーよ!?」
「朝比奈君!どうしたの!?」
驚いた山口が慌てて離れると、朝比奈君の体はドサリとマットに崩れ堕ちてしまったーーー
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