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第九十一話 俺達の戦い
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「ッ、聡太、離して!一人だけ犠牲になるなんて、そんなの・・!」
「ダメだ!悠宇、頼む・・・俺のためだと思って我慢してくれよ・・・」
男同士で付き合っている。
その事が知られたら、悠宇の今後を大きく変えてしまうかもしれなくて。
鈴岡に言われた、『気色悪い』という言葉。
その言葉が純粋で真っ直ぐな悠宇に浴びせられるのは、どうしても耐えられねーんだ。
悠宇のためなら俺は何を言われても構わない。
悠宇が傍にいてくれる・・それだけで十分だ。
俺は、そんな気持ちを込めて悠宇の腕を掴む手にグッと力を入れた。
そんな俺の右手に、振り向いた悠宇の手がそっと重ねられて。
こんな時なのに、俺を見るその顔はとても穏やかな笑顔だった・・・
「聡太・・・聡太の気持ちは凄く嬉しい。けど、俺は守られるだけじゃなくて、守りたいし、これからもし何か起きるなら俺も一緒に戦いたいんだ・・・」
「悠宇・・・」
「・・二人とも、どうしてそんなに強いの・・」
「強い・・・?」
「怖く、ないの・・?男が男を好きなんて知られたらどうなるか・・」
「俺は・・そうだな、少し不安だけど・・でも、聡太を一人で矢面に立たせるなんて耐えられないし・・それに・・実は、ずっと思ってたんだ・・俺達の関係がいっそ分かってしまえばいいのにって。これは、つまらない嫉妬からだから恥ずかしいんだけど・・・。」
見た目も心も壊れ物のように美しい悠宇を見ていると、つい庇いたくなるけれど。
時折見せる悠宇の男らしい一面を思い出す。
先生との時も、誰かが困っている時も・・そして松本との事だって。
実際の悠宇は、その笑顔の下で全て受け止める事ができる程強くて、いつだって凛としている。
俺は、つい彼氏面して自分の事ばっかりだったかもな・・
悠宇だって、れっきとした男なんだ。
好きな人を守りたい。
その気持ちは、俺にも痛い程分かる。
鈴岡達の事、何があっても悠宇となら乗り越えられる。
きっと大丈夫だ・・・
「ねえ・・・。
朝比奈君、聞いたと思うけど、俺、昨日真咲君に告白したんだ。」
「あっ・・・うん、ごめん、俺無神経に・・」
「違う違う!そうじゃなくて、さ。こんな事言うのアレなんだけど・・・
最初、真咲君が朝比奈君の事を好きなのは、ただ朝比奈君が綺麗で優しいからだって思ってた。けど、今日それだけじゃないって事がすごく分かって・・・俺じゃ全然敵わないなって。真咲君の事は今でも好きだけど、朝比奈君の事もすごく尊敬してるんだ・・。だから・・俺も二人の事を助けたい。一緒に戦うから。」
「松本・・・」
カタンーーー
その時、突然入り口の方で物音がして・・・
振り向くと、扉に腕をついてもたれかかる山本先生がいた。
そうだ、あれから先生はどうしてたんだ?
聞かれてたら面倒くせーな・・先生の事だ、面白がってロクな事になんねー気がする。
「クックック・・・お前らおもしれー事になってるな。」
「あ・・・」
先生のノリに慣れない松本が本気でビビって、一歩後ずさる。
「チッ・・・からかうんじゃねーよ・・・」
「おいおい!聞こえてるぜ?仮にも俺は先生様だぞ?ったく・・・」
ちゃかすような言い方に、自然と眉間にシワが寄る。
「真咲、そんな顔すんなって!お取り込み中にわりーんだけど、今鬼ゴッコ中なわけ。で、俺たちのクラス・・・結構捕まってるぞ・・・さっき森田が担がれてくのも見たしな。」
「え!森田君が・・・!?」
得意気にしていた希の姿を思い出す。
担がれて、か・・・希らしいな。
「そーなんだよ。そこで、だ・・・真咲!俺をディズニーに連れてってくれよ。」
「は・・・?何で俺・・・」
「お前ならクラス全員解放できる、だろ?」
扉にもたれかかって、腕を組んだままニヤリと不敵に笑ったかと思うと、突拍子も無い事を言い出す先生に唖然とする。
何、無責任な事言ってんだ・・・
確かに、牢屋になった体育館の中は逃げ場が少ねーから、スピードのある鬼(親)は殆ど外に出ているけれど、それだけ牢屋が俺たち(子)にとって不利な場所だって事には代わりなくて。
そんな危ない賭けに出るよりも、まだ後一時間もあるんだ。
他クラスの奴だっていつまで逃げ切れるか分かんねーんだし・・
それなら、このまま少しでも逃げ切って人数を温存した方がいいんじゃねーか・・?
うん、やっぱそーだよな・・・
「そう、だね!聡太なら出来るよ!絶対!!」
「!!」
「聡太、どうかした・・・?」
キラキラした瞳で俺を見上げる悠宇と、それを見て嫌な笑みを浮かべる先生。
二人を交互に見て・・・・
くっ・・・先生の言う事を聞くのはシャクだけど、悠宇の期待に俺が応えないワケはなくて。
「当たり前だろ。俺が全員救い出してみせる。」
「わー!聡太、やっぱり頼りになるな・・・俺も、一緒に行くから・・」
「・・・おう・・・。悠宇、ディズニーに連れていってやるからな・・。」
「おっ俺も、二人に着いて行く!俺は俺で、自分のクラスの奴を解放する努力をしてみるよ。逃げるばっかじゃなくて、俺も自分から動いてみたい!」
「・・・おう・・。」
「松本もいい心がけだな。よしよし、じゃあ、俺は応援してるから!しっかり働いてこいよ!」
「・・・・・」
悠宇と松本の純粋な笑顔に押されて、体育館へ向かう事にした俺だけど、やるからには全力だ。
先生を喜ばせる事に繋がるっつーのはひっかかるけれど、悠宇の喜ぶ顔は見たい。
それに、希も皆も救ってやんねーとな。
三人で作戦を立てた後、俺達は体育館に向けて一気に駆け出したーーーーーーーーー。
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