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第九十五話 鬼ごっこの結末
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「聡太ぁーおつかれさまぁー!」
「希・・・・・何がお疲れ様だよ・・・」
「何さ何さー!不満そうな顔しちゃってさ!」
「悠宇が頑張ったお陰で解放されたっつーのに、また捕まりやがって・・」
「ま、まぁまぁ・・聡太、そんな顔しないで!ディズニーは逃しちゃったけど、俺は充分楽しかったから!それにしても、久々に走ったなー!逃げ切れたし、妙な達成感あるよ!あは。」
「ほら!朝比奈君は、ああ言ってるじゃないさ!ディズニーの事は残念だけど、楽しめたらそれでOKってことだよっ!」
「・・・・・。」
「あ?!もう済んじゃった事にそんな顔するなんて、男らしくないぞ!そんな器の小さい男じゃ、朝比奈君に嫌われちゃうからねっ!」
「・・・!!!」
「そ、聡太!大丈夫、俺はどんな聡太でも嫌ったりしないから!そんな子犬のような目で俺を見ないで!ふっ、あははは。可愛すぎる・・・!」
「・・・・悠宇、ディズニー連れて行ってやれなくてごめんな・・」
「もー!気にしないでよ!聡太のおかげで2位になれたんだから!そうだ、3人で休みにどこか遊びに行かない!?近場でも楽しいとこあるハズだよ!」
「いいねぇー!」
「近場か・・よし、場所リサーチしとくな。」
「聡太に任せたら安心だね。」
「ねぇ、お話中ごめん!朝比奈君達、これから予定ある?皆で打ち上げしようって話してるんだけど・・・」
「あっ、豊田さん、お疲れ様!・・打ち上げ?」
「そう、クラスの皆で打ち上げ!行こうよ!」
球技大会が終わって、帰りのHRを待つ生徒で教室は賑わっていて。
さっきまで非日常的な雰囲気だったせいか、皆妙にハイテンションだ。
結果は・・・俺達の会話で分かっちまったと思うけど、2位に終わった。
悠宇との約束が守れなくて、俺はこう見えてかなり落ち込んでいる。
隣で楽しそうに笑う悠宇を見て、優勝してたらもっと嬉しかったんだろうな、なんて・・・
クラスの奴らを解放した後の事はどうしようもねーけど、それでも何か出来たんじゃねーかってスゲー後悔して・・・
東京は遠い・・けど、いつか一緒に行きてーな・・。
そういえば、結果発表の時の山本先生の落胆ぶりは、俺達以上だった。
1位が発表された瞬間、膝から崩れ落ちて「ディズニー!!」って叫んだ先生を見て、皆、残念な気持ちなんて吹っ飛ぶ程大笑いした。
いつもだるそうで適当な癖に、どこにそんな熱意があったんだ・・
むしろ、熱意持つのソコじゃねーだろ・・・
まあ、そんな山本先生のお陰で、僅差で優勝を逃したにもかかわらずクラスの雰囲気はスゲー明るくなった。
「打ち上げか・・・聡太と森田くんどうする?」
「僕は行く!行っちゃうよぉぉー!今日すごくテンション上がってるから、このまま帰りたくないー!」
「俺は・・悠宇が行くなら・・・」
「二人とも行くって!朝比奈君も、ね?決まり!決まり!行こう!」
「あは、うん!行くよ!」
「やったー!じゃあ私場所決めてくるねー!」
「・・もう行っちゃった・・ふふ、豊田さん元気だね。それはそうと、松本君のクラスが優勝してよかったよね!」
「そうそう、松本君、胴上げされてたよねぇ〜」
「まあ、あいつが居なかったら6組は優勝できてねーからな。これで、何か変わるといいんだけどな・・・」
「そう、だね・・・」
「んんん?何の事?」
「や、大した事じゃねーよ・・それより希、お前二回目に捕まる時も担がれてたな。」
「そう!そうなんだよ!何でだろう!他の皆は歩いて移動してたのにさぁー!」
「おーい、お前らお疲れ!」
「木下君に高梨君!お疲れ様!遅かったね。」
「おお、木下がジュースジュースうるせーから、自販機行ってた。」
「にしてもさ、マジで残念だったなー!一位との差はたった一人とかさ!・・・」
「・・・ちょっと、皆・・・何で僕を見るのさ・・・」
「いや、だってよ・・・森田、自分から鬼の集団に飛び込んでったじゃねーかよ・・」
「違う違う!あれは、人が多い所に行けば隠れられると思ったから・・・それがさ、まさか鬼だなんて思ってもみなくて僕びっくりしちゃったよー」
「何が違うんだよ、思いっきり森田のせーじゃん!あははは!本当森田らしいよな!」
「なぁ、あの時の鬼の顔!皆ポカーンとしちゃってさ!めちゃウケる!」
「うんうん。森田君らしくて、可愛いよね。」
「あ、朝比奈君優しいー・・・」
そう言って、希が大げさに悠宇に抱きついた。
ニコニコしながら受け止めた悠宇は、そのかなり下にある頭を子供でもあやすかのようにポンポンと撫でている。
何事も無かったかのように楽しそうに笑う悠宇を見ていると、倉庫で何があったのか聞ける雰囲気じゃなくて・・
なんてったって山本先生にあそこまでされても翌日には笑顔で許してしまうようなヤツだから・・
悠宇の「大丈夫」は、俺的にアテになんねーんだよな・・
じゃれる二人をヨソにそんな事を考えていると・・・
「真咲、邪魔しねーの・・・・?」
「・・・は・・・?」
不思議そうな顔で俺をじっと見つめる木下。
邪魔するって、何をだ・・・?
その意味が分からなくて、答える事が出来ない俺は木下の顔をじっと見つめた。
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