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第九十六話 俺の選択
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木下に不思議そうな顔で「邪魔しねーの・・・?」って聞かれて・・・
意味がわからなくて黙っていると、木下の隣で悠宇と希を見て笑っていた高梨がふいにこっちを見て話に入ってきた。
「そういえばそうだな。真咲って朝比奈が誰かにちょっかい出されてると必ず助けに入るイメージある!」
「だよな!クラスの他のヤツとか、森田がターゲットの時は無関心な顔してんのに、朝比奈の時は参加するんだよな。」
「それはーーー」
俺は特別仲いいヤツなんて悠宇と希位のモンだし、希なんて自分から渦中に飛び込んでいく事がしょっちゅうなんだから、落ち着いて答えればいいだけの質問だったのに・・・
付き合っている、そしてそれを隠している。
その負い目のせいか、俺は妙にテンパってしまって・・・
「それは・・・悠宇は、俺のーーー」
「ちょっ、ちょっと!!二人とも!聡太は面白い事なんて言えないんだからいじめないで!もー・・・ね?聡太?」
「・・・・・。」
どうせ鈴岡にバレちまったんだ・・
体育館のあの様子じゃ、皆に知られるのも時間の問題のような気がする。
それなら、コイツらに位自分の口で言っちまった方がいいんじゃねーか・・?
難しい顔をしたまま、ずっと無言でいる俺を木下と高梨が不思議そうな顔で見つめている。
入学してから、短い期間とはいえ二人とも一緒に過ごした仲間で・・・
こいつらが鈴岡達とは違うって事位、俺にだって分かってるつもりだ・・・。
「悠宇、いいか・・・?」
「うん、俺は、大丈夫。聡太がいいなら・・・」
少し不安そうに俺を見つめていた悠宇に問いかけると、
希を抱きしめる腕にグッと力を込めた後、ニコリと綺麗な笑顔を見せてゆっくりと頷いてくれた。
「悠宇、ありがとう。木下、高梨・・・希はさ、知ってるんだけどよ・・・」
「ちょっと待って!聡太、どうしちゃったのさ!?」
「希、いいんだ・・・いい機会かもな。理由は後で話すから・・」
「っ、分かった・・」
「なっ・・・何!?お前ら急に深刻な顔して・・・」
「・・・俺な・・悠宇と付き合ってんだ。」
「ふぁっ!?」
「えええええっ!?!?」
「冗談・・・・?」
「冗談じゃねー」
「そっ、それって!!!」
「待て、高梨!お前声でけーよ!!モゴッ」
「や、木下、お前もだって!!!ングッ」
二人はスゲー驚いてるけど、叫び声を上げるお互いの口を手で塞ぎ合っていて。
その様子はいつものふざけ合う二人となんら変わりがなくて、緊張していた俺の心が一気に溶けた。
お互いの腕を外そうとジタバタする二人を見て、悠宇が吹き出した。
「ふっ、あは!二人とも何やってるの・・・・やっぱり、驚かせちゃったかな・・?」
「んぐ、っぷは!や、するだろ!だってお前ら・・・相当モテモテなのにそんな大事な事隠しててさ!そんで女に告白されまくるってどういう神経してんだよ!!!」
「んっ、ゲホッ・・・!たっ、高梨・・・お前は本当自分の事ばっかだな!男同士ってとこにびっくりしねーのかよ!ふは、まあ、そういう俺もそっちのが気になったんだけど。」
「ふぁー二人がバカでよかったー・・どうなるかと思っちゃったよぉー」
「木下君、高梨君・・・・」
いつも通りの高梨のグチに木下のツッコミを見てスゲー安心する。
「二人とも、ありがとな・・・」
「真咲・・・まあ、偏見とかあるかもしんねーし、言いにくいとは思うけどな。何か二人見てたら違和感ねーつーか・・その・・妙にしっくりくるっていうか・・・。俺はいいと思うぜ。」
「木下君、ありがとう・・。」
「俺も、何か信じられないけど・・ほら、俺女の子大好きだからさ、分かんないってゆーか・・でも、全然アリだと思うぜ!俺的には公表して欲しいくらいだけどな!」
「ねえ、高梨・・・二人が公表したら、自分がモテるとでも思ってるの・・?」
「そりゃそうだろ?部活だってよ、スタメンが怪我したら補欠に回ってくるじゃん。」
「・・・俺は、公表しねー方がいいと思うけど?それにお前、補欠かどーかも怪しいと思うぜ・・」
「っ!木下!お前・・自分がモテるからって・・・!」
「公表か・・でも、本当にそうなるかもしんねーんだ。実は、6組のヤツに俺たちの事がバレちまって・・・そいつが言いふらすって言ってたからよ・・どうなるか分かんねーけど、先にお前らに言っとこうと思って。」
「6組って・・・松本・・・?」
「ち、違うよ!松本君も知ってるけど、違うから!」
「まあ、そうだよな・・・あいついいヤツそうだったし・・」
「そうだったんだ・・・言いふらされちゃうのかな・・・。僕、心配だよ・・」
「希、心配かけてゴメンな。俺も、良く思わねーヤツもいるって事は分かってるつもりだから、もし騒ぎになっても堂々としていたいって思ってる。」
「俺は・・不安が無いって言ったら嘘になるけど・・今日二人に話してさ、なんか今すごくスッキリしてる・・」
木下達を見つめて、悠宇が泣きそうな顔で安堵のため息を吐いて・・・
鈴岡に激しく拒絶された後で、こんなに暖かく二人に受け入れてもらえたんだ。それは俺も同じ気持ちだった。
「朝比奈・・大丈夫だから!そんな顔すんなよ!俺さ、お前らの事応援するからよ・・困った事があったら言えよ・・?」
「俺も俺も!イケメン二人が戦力外って事で俄然やる気出てきた!ってのは半分冗談で、お前らの事結構好きだからさ!力になるから!」
「うううーー二人ともぉ〜!!バカだバカだと思ってたけど、何か、かっこいいじゃないさぁーー!」
そう言って、希は半泣きの顔で悠宇の腕を離れて二人の間に飛び込んで行って。
二人が大げさに両手を広げて飛びつく希を抱きしめている。
今の俺には、いつもの光景がスゲー眩しくて。
『悠宇が側にいてくれる・・それだけで十分だ』
そう思っていたけれど・・
分かってくれて、味方になってくれるヤツが居るって事がこんなにも心強い事を知った。
じゃれる三人を見て嬉しそうに微笑んでいる悠宇と目があって、俺も自然と笑顔になる。
そんな光景を見ていると、不安な気持ちも少し薄らぐようだった。
「高梨ー!また朝比奈君に迷惑かけてないでしょうね!?」
「っ・・!豊田!?お前いつからそこに・・!?」
「何よ、私が来たら困る事でもあるの?」
「いや、ねーけど・・・!」
「まあいいわ。そんな事より!朝比奈君っ!打ち上げ、駅前のカラオケになったから!6時からだよー、皆も来てね!」
「俺達はついでかよ・・・」
「・・・まあ、あんたはついでかもね・・・・」
「ヒデー!!!!滅びよイケメン!今こそ我に力を!!!」
「もーうるさい!ね、朝比奈君、こんなヤツほっといて早く行こうよ!さ、いこいこ!」
高梨の叫びに教室が笑いに包まれて、他のクラスメイトが集まってくる。
俺は、豊田さんに急かされて教室の外に出る悠宇の鞄を持って、慌てて二人を追いかけた。
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