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第百話 それぞれの恋心
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ーーーーー♪・・・・・・・
歌が終わって、ドン引きした皆の気持ちを表すかのような静寂に包まれる。
やった・・俺はやったぞ、悠宇!
しらけられて恥ずかしい気持ちよりも悠宇の願いに応えられた事が嬉しくて、すぐに悠宇の方を振り向くとニコリと笑い返してくれて。
悠宇を安心させられた・・良かった・・・
そう思った次の瞬間ーーーー
おおおっーーーーーー!!!!
きゃああああぁーーーーーー
突然、今日一番の大きな歓声が上がった。
「真咲、お前めちゃくちゃ上手いじゃん!」
「かっこいい!反則でしょ!?」
「ちょっ、本当に!?え、本当に!?」
「何だよ真咲!お前!何なんだよ!!!」
褒め言葉から意味不明な言葉まで皆が次々に感想を言っているけれど、表情を見る限りどれも好意的な雰囲気で。
え、どういう事だ・・・・まさか俺・・・間違ってたのか・・・?
ぐるりと皆を見回した後、不安になって視線を悠宇に移す。
こんな失敗をした俺をどう思ってるんだろう。
ディズニーに連れてってやるなんて宣言したクセに優勝を逃しちまったのに、俺はまた期待に応えられなかった・・・。
いよいよガッカリさせたんじゃねーかって不安一杯で振り向くと、意外にもすげー穏やかな表情で俺を見ている悠宇と目が合った。
「悠宇・・・俺・・」
「聡太、すごく格好良かった。俺、やっぱりどんな時でもありのままの聡太がいいよ・・・さっきはごめんね。」
そう言って少し恥ずかしそうに笑う悠宇がすげー可愛くて、皆が俺の事で盛り上がっているのなんか忘れて、その綺麗な顔に腕が伸びそうになる。
本当、なんて笑顔だよ・・・
二人で見つめ合っていると、後ろから突然大声がして。
「真咲ーーー!」
ドンッ!!
皆を押しのけてやってきた高梨の不意打ちのタックルのせいで、悠宇にぶつかりそうになるのをすんでのところで腕をついて回避した時だった。
豊田さんが、悠宇の両肩に手を置いてヒョコリとこちらに顔を覗かせた。
「きゃー!高梨!危ないじゃんーー!」
近けぇ・・・悠宇から離れて欲しい・・けど、木下や高梨のようにするワケにもいかなくて。
モヤモヤした感情だけが俺の心を締め付ける。
「わははは!真咲!お前歌も上手いなんて聞いてねーぞ!コレはお仕置きだ!さ、朝比奈?お前は俺の期待通り歌が下手なんだろうな?早く歌え!」
そんな俺の気持ちなんてお構い無しに、悠宇にマイクを差し出す高梨。
気がつけば悠宇が入れた曲はもう始まっていた。
「バカ高梨!朝比奈君だったら下手でも上手なんだよ!」
「は?豊田、お前何意味不明な事言ってんだよ!下手は下手だろ?」
「意味不明って何よ!」
罵倒し合いながらも悠宇から離れない豊田さんは、高梨を睨みつけつつも悠宇の後ろ姿を至近距離でチラチラと見て顔を赤くしていて。
やっぱり豊田さんは悠宇が好きなんだよな・・・
俺の好きなやつを好きになった人がいて・・目の前でその姿を目の当たりにする。
二人の事をここで言う雰囲気でもねーし、ましてや相手は悠宇を好きなワケだし・・・
一体どうするのが正解なんだよ。
複雑な気持ちでその光景を見つめていると悠宇と目が合って。
困ったように二人の応戦を見ていた悠宇だけれど、俺と目が合った瞬間にハッとした顔をして高梨からマイクを受け取った。
「豊田さん、歌うからごめんね。」
「あっ!ごめんごめん!歌って!楽しみーー!」
これって・・・遠回しに離れるように言ってくれたのか・・
俺、そんな顔に出てたかよ・・情けねー・・・
たったあれだけの事に動揺しちまうなんて。
けれども、同時に悠宇の心遣いが嬉しくて。
恥ずかしそうにパッと離れて前を向いて座り直す豊田さんにニコリと微笑んだ後、すっかり後半に差し掛かった曲にその高くて澄んだ声を乗せた。
「はぁ・・・・?」
俺の横で立ち上がって画面を見ていた高梨の間抜けな声が降ってくる。
どうだ、俺の悠宇の歌声は・・・
皆に聞かせるのがもったいねーような、誇らしいような不思議な気分になんだか落ち着かなくて周りを見回すと、皆驚いたような顔をしていて・・
「きゃー!朝比奈君歌も上手いの!?」
「ちょっ、やばい・・!携帯!録画録画!」
「すげー!お前らなんなんだよ!?マジでムカつく!」
「高梨うるさい!歌の邪魔!!」
2分程で歌い終わってマイクを置くと、皆の歓声を浴びせられた悠宇は少し照れたように笑っていて。
そんな風に照れる顔も、またスゲー可愛くて。
早く二人になりてーな、今日は帰りに話す時間あるかな・・なんて、クラスメイトとハイタッチをする悠宇をぼんやりしながら見つめていると、悠宇からマイクを受け取った豊田さんが興奮して悠宇に話しかけ始めた。
「もー!!!朝比奈君完璧すぎ!」
「あは、豊田さんいつも大げさだから!」
「本当だよっ・・もー全部大好きーーーー・・・あっ・・・」
「えっ・・・」
「は!?豊田、何どさくさに紛れて告白してんの!?」
「きゃー!!紗由が告った!」
「ち、違うからっ!!あっ、違わないけど・・・あーもー!!!」
「はぁぁぁ!?朝比奈お前歌くらい下手じゃねーと世の中のバランスが取れねーだろ!?」
「高梨ーー今いいとこなのに、お前黙ってろよ!あははは!」
「付き合っちゃえよ!」
少し赤くなって、期待するような表情で悠宇をじっと見つめる豊田さんの顔ははっきりと見えるけれど、それを見つめる悠宇の表情はこちらからは見えなくて。
悠宇が俺の事を好きでいてくれてるのは分かってる・・
けれど、皆は突然の出来事にお祭り騒ぎで。
まさかここで俺達の事を言うワケにはいかねーし、この状況をどうしたらいいの分からない俺は、ただ固まって二人を見つめていた・・・・・・。
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