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深層心理の深いとこ
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介抱されてから、少しだけど…篠を見る目が変わった。
登下校はまだ一緒じゃないし、会う度「かわいい」とか「好きです」とか言われるのはドン引きに変わりないけど、
根はいい奴って思う。
だから…前よりは5%くらいは嫌いじゃないかもって、思ったりもするんだ。
球技大会までの6日間、そんなことを考えたり宿題やったり委員会活動したりしてたら、あっという間に当日になった。
鼻歌交じりに更衣室でTシャツと短パンに着替えて廊下に出ると、
(うっわあ…)
先に着替え終わってたらしい水無月が右側で数人と、庄司が左側でそれぞれ女の子と仲良さそうに喋ってる…光景が目に飛び込んできた。
なんとなく見てはいけないものを見ちゃった気になって、ちょっと小走りで前を通り過ぎようとした。
…ら、
「あれ、柚木もう体育館行くの?」
なんで話しかけてくるかな鳥頭あああああ!
「まあ…もう、時間だし」
「えっマジ? じゃあ俺も行ーこうっ」
「ぅわ、」
がすっと肩を組まれて前のめる。
水無月は軽い口調で「俺10時くらいの試合に出るからねー」って手をヒラヒラさせて、女の子たちに引き止められながらも俺と一緒にその場を離れた。
角を曲がったところでため息。
他人事のはずなのに、すっごい疲れた。
「ったく…俺を巻き込むなよ」
「ごめんごめん。
あの子たち他校の子なんだけどさー、なんか懐かれちゃって」
こいつホントにいつか刺されるな。
「なんでもいいけどほどほどにしとけよ。
あと重い」
「柚木つれなーい」
「気色悪い」
「辛辣って言葉知ってる?」
「あーなんか重さで肩が脱臼しそう。脱臼したら水無月の家に賠償金ふっかけて請求しよう」
「悪代官みたいな思考だけどそれ!?」
それからしばらく「重い重い」とか「今日はこれのせいで調子出ないな」とかさんざん嫌味をぶつけると、
「ハイハイ、どかせばいいんだろっ」てやっと離れた。
「柚木ってさあ、ほんっとーにスキンシップダメだよね」
「はあ? なんだよ急に」
開会式が行われる体育館の近くまで来ると、生徒でごった返してた。
赤とか黄色とか、クラスカラーで揃えたのか似たようなTシャツを着てる生徒が目立つ。
水無月は頭一個分背が高いから窮屈な思いはしなくていいだろうけど、平均並かそれ以下の身長の俺としては、この状況で誰かの声を拾うのは結構至難の技なんですけど。
「だからぁ、触られたりするの嫌いでしょ?」
「しつこいって。なんでそう思うんだよ?」
「自覚ねーの?」
「ねーよ。っていうかなんでこんなに人多…」
「じゃあ無意識なわけ?
後輩くんには平気みたいだけど」
「そうそう無意識………はあ!?」
水無月の間延びした声が一瞬遠のいて、『後輩くん』のとこだけリフレイン。
後輩って、篠?だよな?
どこをどう経由したら篠の話に!?
「なんでそこで篠が出てくんの…?」
「仲良いじゃん」
「仲!? 良いの!?」
「いや知らないけど。後輩くんには触られても嫌そうじゃない?みたいに見えたから」
「あ………そう、」
篠に触られても嫌じゃない?
なんだそれ? そんなわけない。
え、でも待って待って、触られて…嫌だって…そりゃもちろん嬉しいことじゃ、ない…わけで。
でも嫌がって見えなかったってこと?
俺の表情筋は天邪鬼で、思考と行動が逆さにでもなってるってこと!?
思わずペタペタ顔を触った。
自分の顔だよな、感覚あるよな。
嫌だって思ってるのに、周りからは嬉しそうに見えてたりしたら……何それ想像しただけでもすっごい迷惑話すぎる。
「あ、水無月おっはよー。柚木も」
「おー桐島気合入ってんねー」
「まあね。てかなんでここにこんな人並んでんの? 体育館そんな狭かったっけ?」
「さあ。わかんね。それより庄司見なかった? さっき声かけ損ねたー」
「柏木が連れて来るってよ。
あとここに来るまでに『水無月くんの連絡先教えて!』って6人くらいに聞かれたんだけど」
「え、」
「…切り損ねたんだろ」
「ちゃんと別れたはずなんだけどなー…」
「しっかり教えといたから」
「ウワやめろよ拡散しちゃうだろ!!!」
「友情に感謝しろよ…!」
「そういうのは薄情っていうの!」
そもそもスキンシップってどっからがスキンシップ?
手を繋ぐとか、腕引っ張られるとか、ハグもそれ!?
だけど…だけどキスとかは域を逸脱してる気が…する!!
激しく!!
「で? 柚木は何を一人で固まってんの?」
「さあ?」
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