アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
理数科一年ビビらせ隊
-
週明け。
球技大会が終わったばっかりだというのに、学校はすっかり体育大会モードに切り替わっていた。
窓から中庭に垂れる横断幕とか、屋上から聞こえる応援合戦の練習の声とかで大会ムード一色だ。
今さらだけど、ウチの学校って……イベントに力入れんの好きだよなあ。
***
「その前に期末があるけどね」
バスケの副賞である『食堂タダ券半年分』を早速活用しながらラーメンを食べてると、
目の前に座ったAランチの桐島がおもむろに切り出した。
おもむろ過ぎて、隣の全然知らない普通科の生徒が「ブフォ」って吹き出しちゃったよ。どーすんの。
「いま…期末の話ししてたっけ?
俺週末の合宿の話ししてたつもりなんだけど」
「そーだけど! 期末もあるじゃん!」
「期末は今週じゃねえよ」
「気持ちの問題として!」
「心先走りすぎだろ」
「そしたら夏休みだよ…」
「なんか色々飛んでますけど」
「受験……!」
「なんで二年も飛ばした!?」
週末の話が再来年になったよ。
受験ノイローゼ来るの早えよ。
なんか桐島の方向性が面倒くさくなってきたので(定期試験が近づくとすぐこんなんになる)、
ナナメ向かいの席に座ってる柏木と今週末の合宿の話を再開。
「で…なんだっけ? その合宿って俺ら理数科の二年だけ?」
「いや、なんか一年とも合同?なんだって。三年は違うとこに泊まるってよ?」
「ふーん」
「でもさあ、」
いい匂いがして顔を上げると、オムライスを持った水無月だった。
席に着きながら「学校に泊まって勉強したって何にもなんねーと思うんだけどなー」と口を挟む。
あ、ちょっと旨そう。
さっき食券買う時悩んだんだよなー。
「ひと口食べたい」
「ダメー」
「わかったお前の彼女たちに同じ日に祝われると困るからって適当に『誕生日じゃない日万歳』って言ってる水無月の本当の誕生日は1月1日だってツイッターに「半分どうぞ」
「水無月やっさしー」
「ユズすっごい悪い顔してるよ」
三口しか食べてないラーメンを水無月に押しやってオムライスをほぼ完食した頃(「柚木のバカー」って言われた)、
「で、さっきの話だけど」って柏木がまた話を戻した。
「男だけ体育館でザコ寝?だって」
「痛い痛い痛いー」
「風呂とかどーすんの?」
「銭湯じゃない? ほらあの…バス停のとこのさぁ」
「遠っ」
「二泊っていうのも長いよね?、どうせ馬鹿みたいな量の課題出されるだけだし」
「うえー」
話を聞きながら、意識したつもりはないけど…視線の先に篠が居た。
こういうのを目ざといっていうんだろーな。
ここから三つ向こうのテーブルで頬杖をついてクラスメイトと楽しそうに話してる姿は新鮮で、思わずぼうっとなってしまった。
それと同時に、
好きだなあって思う。
揺れる髪の一房だって。
にしても、なんかあいつ…すっげー難しいカッコしてんな。
足は…こうか?
左足と右足が…こうなってて(ヤバいちょっと足つりそう)、
手が…胸の前で交差してて左手で顔を支えて、指はこんな感じで…あっ出来
「柚木何してんの? モデルみたいなポーズだけど」
「……なんでも、ないです……」
恥っ…っずううう…!
ま、まあ(動揺)、こここんなの篠がやるからサマになるんだよな。うん。
水無月に注意されて、いそいそと苦し紛れに姿勢を直す。
あー俺ほんと、何やってんだろうなあ!
最後にチラッと篠を見ると、感づいたのかこっちを振り向きそうだったから慌てて顔を逸らした。
「で、恒例の肝試しなんだけど」
議題はちょっと変わったらしい。
肝試しに覚えがないから尋ねると、
「あれ? 柚木知らねーの?」
「知らね。合宿の話?」
「そお。ユズは去年合宿には参加してなかったもんねえ」
「そうだっけ?」
「法事で出らんなかったんだよ。
それで?」
簡単な説明によると、
毎年(季節外れだけど)行われてる裏行事で、二年生が一年に催して最終的にどう転んだのかプールに連れて行って水をぶっかける…というモノらしい。
「リ…リアル肝試しだな」
良かった合宿行かなくて。
「怖いよね?。ユズは本当セーフだよ。
おれアレ以来学校のプール苦手でさぁ」
背景に花を飛ばしながら控え目に笑う柏木は男の俺から見てもかわいくて、なんか癒される。
大変だったな、と相づちを打つと、「だから」
ガシッと両手を掴まれた。
「委員ちょにも言ったんだけど、
もう今年はプール掃除しないまま泥水に一年突き落としたら良いんじゃないかって思うんだ」
「黒い部分が…! 水無月、柏木の黒い部分が…!」
「柏木、さすがにそれはかわいそーだって。柚木の幼馴染みもいるしさー」
「だから?
去年なんてねえ、プールで滑ったら危ないからって、わざわざ廃棄用のマット敷いて待ち構えてたんだよ今の三年!!
薄暗いし水張られてないプールマジ不気味だしただでさえおれ肝試し系大っ嫌いなのに、頭から冷水を浴びせられる恐怖……!」
「そういや結構年季入ってたよなー。あれなんでかマットの処分は俺らがさせられたんだよな」
「のん気か!!」
えええ、なんでか俺まで怒られた。
「キレた柏木おもしれー」
あああ水無月ほんとこいつ余計なことばっか言うこいつ。
焼き鳥決定。
「でもさ、プールは止めたほうがよくね?
プール事故って怖いし」
極力、柏木を刺激しないようにできるだけ下手に意見を言うと、「アア?」ってメンチ切られた。
だーめだ。
なんで俺の周りって、こいつといい桐島といい頭に血が上ったら手がつけられなくなる奴ばっかなんだろう。
こういう空気を読んで逃げるのが上手い水無月(たぶん女の子関係で身についたスキル)は、絶賛現実逃避中の桐島を掴んでさっさと席を立ってしまった。
てか、急激にガラが悪くなった柏木のせいでこのテーブル一帯に居た生徒散っちゃったんだけど。みんなひどい。
「柏木…俺らもそろそろ教室、」
「まだ話終わってないよね??」
ですよねー。
「プ…プールはやめた方がいいと思うけど…」
「じゃあどうするの?」
「そうだなぁ……」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 37