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おまけ? 空白
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【体育大会の次の次の日】
朝目が覚めた時、背中や顔が痛かったけど視界は良好、むしろ大気が輝いて見えて、心はなんだかぽかぽかしてた。
おととい玄関でぶっ倒れて丸々一日寝てたけど…あれ? なんで俺こんなに気分いいんだろう。
なんか…すっごい…大事なこと忘れ……?
学校に行く準備しよう、とデスクをふと見た瞬間、ピシャーッと雷に打たれたような衝撃が走った。
そこにぽてって置かれたドラムバックは、間違いなく戦利品として(なんの成果も無かったのに厚意で)せ、先輩にもらったやつ。
どうしよう発光して見える。
そうだよ俺、先輩のことすっ………!
うわあああああああ!!!
「おっはよー篠、原……くん…?」
「………」
「えっ篠原? とうとう無視?
おーい」
「…ああ、おはよ松田。待ってたんだ」
「うっそお待ってたの!?
完璧に目ぇ合ったのに無反応だったよね!?」
教室の端っこで松田を待ち伏せして「ちょっと」と廊下に引っ張る。
わざわざこんなことして聞くような事でもないんだけど、やっぱ俺にとっては大事な問題だし、聞いておこう。
「えッ何、なんか篠原怖いんだけど」とブツブツうるさい松田(ひどい)を壁際に立たせ、「体育大会を早退した後さ、」って切り出した。
ついでに喉も渇いたから自販機の方に誘導する。
「大会? ああ、ケガ大丈夫?」
「俺の荷物って誰が家まで届けたの? 松田?」
「おれの心配丸無視!?」
「答えて」
「(ええええ超怖いんだけどー!)」
「ねえ」
「なん、なんかごめんね!?
何にキレてるのか知らないけど!」
「松田が持って来たの…?」
「(うへええ謝ったの逆効果あああ!)
ちっ、違うよ! 違いますよ!? 荷物届けたのは多分っ柚木先輩!」
「ゆ…」
柚木先輩、その単語だけで時間が止まる。
「篠原が心配だって言うから、家も隣だし荷物持ってってやるよって放課後ウチのクラスまで来てくれて」……
そっか、先輩が俺の荷物届けてくれたんだ。
心配させちゃったのは申し訳ないけど、すごく嬉しい。空飛べそうなくらい嬉しい。
そういえば母さんがそんなこと言ってたような気もする…。そっか。
…「で、とりあえず篠原の荷物よくわかんなかったから着替えだけまとめて、って聞いてる?」
「あ、ごめん途中から全く聞いてなかった」
「全く!?」
「もう無いと思うけど、金輪際俺のバッグには触んないようにね。あとシャーペンも。っていうか俺の私物全部」
「おれへの扱いホント、ホンっトひどいよね」
後で消毒しとこうかな、とか真剣に悩みながらポケットに入れた財布を引っ張り出す。
チャリンチャリン、と小銭をいれたところで、「あ、なあなあ」と声をかけられて振り向いた。
「あそこ…って、なんなのその嫌そうな顔」
「いや…何」
無意識に眉間にシワが寄る。
ダメだダメだとシワを摩りながら聞けば、ちっちゃな声で「噂をすれば柚木先輩だって知らせようと思って。ほら」とあごで指された。
その方向に顔を向けたら、軽い足取りでこっちに先輩が向かって来る。
向こうも俺たちに気づいたようで、「あ、篠」と(俺の!)名前を呼ばれた。
くっきり二重で長いまつ毛に縁取られた瞳が眩しい。
声は溶ける様に耳に馴染む。
それでもってどうしてもその薄紅色の唇に意識が行っちゃって、面白いくらい体がかあっと熱くなった。
「っ……!」
「先輩、おはようございます」
「おはよ。松田だっけ?」
「はいー、今ちょうど先輩の話してて、なっ篠原」
「俺の話?」
人使いが荒いとかじゃねえだろな、っていたずらっぽく笑う笑顔に後光が差してる。
そんなワケないでしょ。
どんだけ俺が先輩のこと好きか再確認してるだけ。
調子に乗ったそんな発言も出来ないくらい緊張しちゃって声が出ない。
ううう前なら言ってた、言えてたのに、過去の自分が勇者すぎる。
バックに花も舞ってるし、色んなフィルターで加工されてて先輩が…先輩を、直視できない…!
ジリジリと無言で後退りする俺を不審に思ったのか「篠?」って追い打ち、
一歩踏み出して手が伸びて来て???つい先日の体育大会の先輩とダブった。
目に涙を溜めて俺だけを見てて、どうしようもなく抱きしめたくなるあの表情。
うっわああ!
やばいやばいそんなことしたら俺捕まっ…!(大混乱)
勝手に腕が動いたりしないように素早く腕組みをして、「じゃ、じゃあ」と震える声でうつむいたまま二、三歩下がる。
「おい篠?」
「篠原? どしたの?」
「そっ…それじゃあ!」
「えっ篠!?」
篠、篠って頭真っ白になるからやめて。
ひゃーーー!!と心で叫びながら猛ダッシュで教室に駆け込んで、
バッターンとドアを閉めたら、クラス中の視線を一気に浴びてしまった。
だけど今それどころじゃない。
せっ、先輩と目が合っちゃった。
篠って呼ばれちゃった。
呼ばれちゃったよ…!
うっわあああ!
「……あいつどうかしたの」
「いや…わかんないんですけど…この前誰かに貰ったとかいうバッグ、ほらあの大会の後先輩に渡したやつ、あるじゃないすか」
「えっ(どきーっ)」
「あれ触られんのすっごい嫌みたいで、触られたくないからってわざわざロッカーに入れたりとかしてるんですよ」
「へ、へえ(どきどきどきどき)」
「あいつあんなに潔癖だったかなあ…」
「さ、さあ…どっどうだったかなあ」
「ていうか飲み物買わずに行っちゃいましたね。これ貰っていいのかな。
あ、せっかくだから先輩がもらったら……って、顔赤いですけど大丈夫ですか?」
「でっ、ええ!? ねえよ!」
「ねえよ!?」
「じゃあな、」
「ええっちょっと…!
(おれの周りの人ってホント話聞かないなあ…)」
***
本編29話につづく
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