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〇月×日『キスマーク』
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「ん、ん……」
唇を啄まれて、舌が触れ合う。
髪を優しく撫でられながら何度もキスをしてくれる。
放課後の図書室で、2人きり。
本棚に背中を預けて、歩くんに一生懸命応える。
激しい身長差は歩くんが埋めてくれる。
腰をかがめて、僕が背伸びをしなくても届く位置にいてくれる。
ほんの小さな優しさにも胸がときめく。
「先輩…」
唇が離れると頬に、耳にとキスされて、擽ったくて、凄く恥ずかしい。
「ん……ぅ、ぁ…」
図書室の一角。
死角を見つけてそこでこうして触れ合う。
誰もいない、2人きりだとわかっていてもヒヤヒヤしてしまう。
歩くんに首筋を愛撫されながら、視線は人の気配がないかさまよってしまう。
「んん、」
歩くんの手が僕の腰を抱く。
背筋が震える。
歩くんの肩に顔を埋めながら身をゆだねていると、ハッとして歩くんの体を押し返した。
「ぇ、何…?」
歩くんが驚いた顔で僕を見る。
「……それ、」
至福の時にいっきに幕が下ろされた。
僕が指さした先を歩くんは手で探る。
そこにはべったりとついた鬱血痕。
歩くんの首筋から鎖骨にかけて見えるそれは間違いなくキスマークだ。
もちろん僕がつけたものではない。
「あ…、」
歩くんからは見えない位置かもしれない。
けど、歩くんはそこに何があるか分かったみたいで、気まずそうに顔を俯かせる。
「…………はな…むらさん?」
わかっているけど、僕の口から出たのはその人の名前だった。
「ごめんなさい、俺…」
気持ちが落胆する。
考えなかったわけではないけど、歩くんと花村さんは切れてはいないんだ。
まだついたばかり、というような真っ赤なキスマークだった。
もしかしたら花村さんを抱いたその足でここにいるんだろうか。
考えれば考えるほど気持ちが沈む。
「……僕、帰るね」
いうが早い、歩くんに止められる前に荷物を持って図書室を出た。
好きな人が自分以外の人と寝てる。
まただ、
矢野くんの時と一緒。
だったら、歩くんとこれ以上先には進めない。
"ごめんなさい"
歩くんは何に対して謝ったんだろう。
花村さんのこと?
……僕のこと?
彼から"好き"て、言ってもらえてない。
キスも抱擁も、好きだからする。
好きじゃなくても、できる人はいる。
僕て、全然学習してない……
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