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〇月×日『元気の無い背中』
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「好きだって言ってくれた」
矢野くんがポツポツと聞いたことないくらい覇気のない小さな声で話してくれる。
「でも俺は一番じゃないんだって」
そう言ってうなだれる。
「……一番じゃないから、別れたの?」
矢野くんの背中にそっと触れる。
元気の無い背中を優しく撫でる。
「俺は別れたくないって言った。けど、無理だった。俺が何言っても、もう決めてるって目だった…」
先輩は、矢野くんを受け入れて、少しずつだけど好きになってると思った。
でも、数日前の先輩はおかしかった。
僕が歩くんを好きだと言ったら、矢野くんを好きな方がいいと言った。
花村さんのことがあるにしても、おかしいと思った。
…………先輩と矢野くんが別れたと聞いて、もしかして……と、思ったことが一つある。
僕が歩くんを好きだと言ったから、先輩は矢野くんと別れたのかも。
僕が矢野くんをまた好きになれるように。
もし、本当にそんな理由だったらどうしよう。
そんな理由だったとしても、こんなに弱ってしまうほど先輩を想ってる矢野くんを好きだなんて思えない。
「……矢野くん……」
何も言えない。
何を言っても矢野くんを元気付けることなんてできる気がしなかった。
ただ矢野くんに寄り添うしかできない。
無力だ。
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