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〇月×日『三年生』
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春、
僕と矢野くんは3年生になった。
もうこの学校に山梨先輩はいない。
矢野くんはまだ吹っ切れていないようだし、僕も、先輩とはスッキリしないままだ。
いつでも来ていいと言ってくれた先輩の部屋を訪ねて、矢野くんとの別れについて追求したい気持ちもあるけど、聞いたところで今の僕には何も出来ないから……。
始業式を終えて、クラス表の貼り出された通路に向かう。
既に自分の新しいクラスを確認して賑わう生徒が大勢いた。
また同じクラスだと喜ぶ者もいれば、離れてしまったと悲しんでいる者もいた。
「お前ここでまってろ」
「え」
矢野くんは一言そう言うと、僕の返事も待たずに人波の中にズカズカと押し入っていった。
……女生徒並な体型の僕に比べたら、矢野くんは他の男子生徒の頭1個、2個分大きい。
僕が生徒にもみくちゃにされないように気を使ってくれたみたいだ。
さり気ない優しさになんとも言えない気持ちになって、小さく俯いて照れ隠しをする。
「やっさしーねぇ」
聞き覚えのある声に顔を上げると、予期しない人が目の前にいた。
「僕とまことくん同じクラスみたいだよ、よろしくねー」
そう言って花のように綺麗に微笑んだのは花村さんだった。
一方的に握手をされる。
僕は呆然としてしまって、何も言葉を返せなかった。
今日から1年間、けして平穏には過ごせそうにないと悟った。
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