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〇月×日『問題児』
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新しい学年、新しい教室。
また矢野くんと同じクラスなのは嬉しい。
けど、問題が一つ。
花村茜さん。
どうやら彼は留年したらしく、また1年間高校3年生をやらなくてはいけないらしい。
そんな彼がクラスメイトとあっては、教室の中は落ち着かない様子だった。
遠巻きに花村さんを眺めながら、彼との距離感に戸惑っている感じ。
問題児、花村茜は有名だ。
彼が校内で不順行為を行ってることは誰もが知ってる。
もしかしたらこのクラスにも、矢野くん以外にも花村さんと関係した生徒がいるかもしれない。
そのくらい花村さんの乱れた行動は噂になってる。
けど花村さんを気味悪がったり、馬鹿にしたりする人がいないのは、花村さんの容姿が美しく整っているのと、彼の性格のせいだと思う。
男性というよりは女性に近い透明感のある美しさだ。
白い肌に、脱色したのか白に近い色の髪、カラーコンタクトなのか自前なのか、瞳の色も日本人離れした色だ。
飄々とした、まさに自由といった性格。
周りのことなんかお構い無しに好き放題。
そんな彼だからこそ、怖いもの見たさで近づくものもいれば、遠くから眺める者もいる。
彼の個性に、知らないうちにみんな翻弄される。
「マジうぜぇ」
矢野くんは苛立ちを隠そうともせず花村さんを睨む。
「ひっどーい。ねぇ、まことくんもそうおもうでしょ?」
花村さんが僕の腕に撓垂れ掛かる。
それを矢野くんが引きはがす。
「ゆずに触るな」
「えー」
さっきからこんなやりとりの繰り返しだ。
まだクラスに馴染めていない花村さんは授業中は寝ているか、たまに居ないこともあるけど、教室にいる時は大体矢野くんと僕のそばに居る。
今も、お昼を一緒に食べてる僕と矢野くんの側でノンストップでお喋りしてる。
「あ、そうだ、あゆと約束してたの忘れてた」
花村さんは急に席を立つと、もう僕と矢野くんは眼中に無いのか、教室を出ていってしまった。
矢野くんはウンザリした顔。
僕は、……心中は穏やかじゃない。
花村さんの言った"あゆ"とは、"あゆむ"の事だ。
音沙汰がないから余計気になってしまうのか……。
「昼間っからよくやるよな」
矢野くんがお弁当をつつきながら呟く。
矢野くんの言う通り、……そういう事なんだろうか。
今、この時間、歩くんは花村さんと……。
胸が痛い。
きっと叶わないと思いながらも、恋してる相手が他の誰かと……なんて。
しかも相手は花村さんだ。
なんの取得もない地味な自分と花村さんを、比べるのもおこがましいくらい、自身は皆無だ。
……矢野くんも、花村さんと関係をもってた。
その時も、凄く切なかった。
恋人じゃないから、嫌だって言えない。
他の人に触れてほしくない、やめてって……言えない。
その日、花村さんは教室に帰ってこなかった。
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