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〇月×日『泥棒猫』
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僕は呆然とした。
僕の隣に座っていた矢野くんも、蒼く大きい瞳をいっぱいに開いて最大限に驚いた顔をしてる。
たった今、教室の真ん中で、花村さんに、渾身の平手打ちをくらった。
一瞬何が起こったか理解できなかったけど、打たれたんだとわかった頃には、頬にジワジワ痛みも広がってきた。
「……花、なにやってんだよ」
矢野くんも、我に返ったようで、慌てて花村と僕の間に割って入った。
「この泥棒猫っ」
そう叫んだ花村さんは、今まで見てきた飄々とした彼とはかけ離れてた。
ボロボロと涙を零しながら、もう1発僕にお見舞するつもりなのか、手を振りあげたけど、矢野くんに抑え込まれて抵抗してる。
「昂平っ、この子があゆのこと誑かしたんだよっ、大人しそうな顔して、このビッチっ」
怒り泣き叫ぶ花村さんが罵声を浴びせてくる。
教室の、ど真ん中で、クラスメイトも見てるのに。
矢野くんが花村さんを教室から連れ出してくれるまで、花村さんからの罵声はやまなかった。
…泥棒猫でビッチて……
呆然としてる中で、その言葉がコダマした。
歩くん、花村さんに言ったんだ……今の関係をやめたいって。
でも、あんなに花村さんが取り乱すなんて思わなかった。
花村さんは、興味本位で、快楽のためだけに歩くんにつきまとってると思ってたから。
あの様子は、そんな軽いものじゃなかった。
花村さんは、泣き叫ぶほどに、歩くんを好きだったんだ。
クラスメイトの白い目の中、その事実にうちひしがれた。
歩くんと花村さんが切れた、その事に心の底から喜べない、後味の悪い何かが僕の中に残ってしまった。
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