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〇月×日『応答無し』★
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「僕、恋人部屋に呼ぶの初めてで」
照れくさそうに笑いながら、歩くんが自室へ招いてくれた。
もちろんご両親と同居しているけど、今日は出かけているらしくこの家には僕達二人きりだ。
そう、二人きりになれるからと部屋に誘ってくれたのは歩くんだ。
僕でもその意味くらいわかる。
この誘いの意味はわかるよ。
「まことさんはー……あ、すみません、こんなこと野暮ですよね。僕なにか、飲み物とかもってきますね」
緊張からか、どこかギクシャクした歩くんが部屋から出ていく。
「……」
歩くんの部屋に1人になって、とりあえず座って待っておくことにする。
「まことさんはー……か、」
確かに野暮だ。
あるよ、なんて言えるわけない。
前付き合ってたのは、木崎篤也さん。
僕の初めての恋人。
少しの間だけど、同棲みたいなこともした。
…………元気かな。
「まことさん、珈琲好きですか?あの、いれてから先に聞けばよかったなって……」
歩くんが気まずそうにマグカップを2つ机に置く。
「ホットかアイスかも聞けばよかったですね……」
「大丈夫だよ、ホットコーヒー好きだから」
マグカップを1つ手に取って口をつける。
「美味しいよ」
歩くんがホッとしたように微笑む。
「……ないよ、呼んだこと」
「え?」
「恋人、部屋に呼んだこと、無いよ」
これは嘘じゃない。
恋人の部屋に訪れたことも、好きな人の部屋に行ったことも呼んだこともあるけど、恋人を部屋に入れたことは無い。
「そうなんですね」
歩くんが柔らかく微笑んでくれることに、少しだけの罪悪感を感じながらカップに口をつける。
でも、歩くんも僕と同じかも。
花村さんと、このベッドで寝たことがあるのかも。
急に自分の背後にあるベッドに醜い感情が湧いてしまう。
誰もいないから、歩くんと、好きな人とそういうことになるのかもしれないってドキドキしてた気持ちが薄れてきてしまってる。
だからって、恋人は呼んだことなくても、花村さんは?なんて聞けない。
僕だって僕の部屋で数えきれないくらい矢野くんに抱かれた。
……これって、嫉妬だよね。
花村さんに嫉妬してる。
歩くんは僕とは違って、花村さんと望まない体の関係を強いられてたのに、嫉妬なんて……
ポジティブに考えなきゃ。
今は、僕が恋人なんだ。
うん、花村さんは恋人ですらなかったんだ。
歩くんの恋人になれた僕は、歩くんに想われてるよね。
花村さんに妬く必要なんかないよ。
「まことさ……」
強気になった気持ちのまま歩くんの体に抱きついた。
黙って珈琲を啜ってた急な僕の行動に歩くんが戸惑った声で僕の名を呼んだけど、歩くんの胸の鼓動と体の熱さに変な自信が湧いてきてしまう。
「歩くん、好き」
身も心も歩くん一色にしてほしい。
矢野くんや、花村さんなんか入り込めないくらいに。
「まことさん、」
歩くんの腕が僕の体を抱き締め返してくれる。
僕がすっぽり収まってしまうくらい大きな体、優しい匂いに包まれて安心して体の力が抜けると、キスされながらベッドに寝かされた。
僕は夢中で歩の舌を舐めた。
少し苦いのは珈琲のせいだ。
歩くんも僕の舌に応えてくれながら、体を撫で、1枚ずつ服を剥いでいく。
「まことさんて、年上の人なのにどこもかしこも可愛くて……」
「ぁ、」
歩くんの唇が体をなぞる。
僕、好きな人に抱かれるんだ……。
気持ちが良くて体かビクビクと跳ねる。
歩くんに身を委ねるこの安心感がたまらなく幸せだ。
唇に、指に、体を解されて、もういつだって歩くんを受け入れられる。
「ん、もぅ、大丈夫……僕もする」
歩くんが僕の股の間から顔を上げる。
僕は体を起こして歩くんのベルトを外し、ズボンのチャックを下げ、下着の中から……
「ぇ」
僕が歩くんの下着に手をかけたまま間抜けな声を漏らすと、歩くんは気まづそうに僕から顔を背けた。
「……すいません」
歩くんの背けられた顔に動揺の色が見える。
歩くんは、勃起してなかった。
僕の体を解している間、すごく積極的に唇も、舌も、指も動いていたのに、興奮はしていなかったってことなのか。
一方の僕は準備万端で早く抱いて欲しくて仕方ないくらいなのに。
「ぇ、と……触っても、駄目なのかな……?」
手で扱いたり、唇にくわえたりしたら流石に勃つんじゃないのか。
「…すいません、いつもは……ぁ、いや、その……すみません」
いつもは?
花村さんには勃起するってこと?
…………流石に萎えた。
「……帰るね」
服を身につけて、早々に歩くんの家から飛び出した。
さっきの発言から想像するに、今日がたまたま勃たなかったってことじゃないんだろう。
歩くんは、僕に興奮しないってこと?
愛撫すれば勃起するかもという提案に対して、あの答えだ。
動揺してたにしろ、普段なら愛撫されなくても勃つんだろう。
僕や、矢野くんが思うほど、歩くんは花村さんのこと嫌じゃなかったのかも。
少なくとも花村さんには反応する。
今、恋人の僕に対しては……。
もう、恋人だから花村さんより好かれてるなんて思えない。
思えないよ。
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