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〇月×日『進歩』
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矢野くんがイラついてるのがわかる。
勇気を出して、矢野くんの家を訪ねた。
矢野くんのお母さんが出て、快く矢野くんの部屋に案内してくれた。
部屋を開けると、矢野くんは携帯片手にベッドで寛いでた。
母親の手前、僕をあしらうことも出来ず、渋々部屋に入れてくれた感じだ。
「……で、何のようだよ。」
僕はベッドの前に正座して、矢野くんを見上げた。
「山梨先輩と、会ってるの?」
「…は?」
矢野くんが体を起こす。
「……街で見て、気になって」
「会わないなんて決めてねぇし。」
「…………そっか、…そうだよね、」
喧嘩別れした訳でもないし、矢野くんの言う通りだ。
「……じゃあ、花村さんとは?」
「花がなんだよ」
「……学校で、一緒にいた……」
「クラスメイトだろ、一応。」
「でも、好きじゃないでしょ?……歩くんが花村さんに気に入られて、自分は開放されたと思ってたでしょ?それから自分からは近寄ろうなんて思わなかったでしょ?」
「だったらなんなんだよ、俺が蘭さんや花と会ってたらなんなんだよ」
「わかんないよ、わかんないけど、嫌なんだもん……」
矢野くんが誰かと時間を共有するのも、誰かのものになるのも嫌なんだ。
モヤモヤする。
イライラする。
どうしていいか分からない。
「……勝手なこと言うなよ。お前あの1年と付き合ってるんだろ、俺の身辺気にするなんておかしいだろ」
「わかってるけど、わかってるよ……」
おかしいよ、こんなの。
矢野くんがそばに居る時は大胆になれたのに、離れた所にいると気になって仕方がなくなる。
「俺の代わりだろ、あの1年」
「……ぇ、」
「俺が蘭さんと付き合ってたから、俺の代わりにしたんだろ。お前の性格じゃ俺と蘭さんに割って入るなんてできないもんな。あの1年、俺と同じでデカいし見た目もハーフぽいし、ちょうど良かったろ」
代わり?
そんなこと……
「お前は結局は俺なんだよ。誰とヤろうが、結局は根っこに俺がいる。あの1年と付き合ったって満足できないだろ。俺が他のやつと会っただけでこれだからな。アイツとはもう寝たのか?俺の代わりとヤって満たされたか?」
「してないっ、歩くんとは…まだ……」
「なんでだよ。得意だろ、俺だけじゃないだろ、ここにくわえ込んだの」
矢野くんに引き寄せられて、ズボン越しに尻を掴まれる。
体が震えた。
恐怖か、快楽かなんてわからない。
でも、矢野くんの体温に触れて、体が何かしらの反応をしたのは事実だ。
"根っこに俺がいる"
……わかってた。
わかってたから篤也さんとも駄目になった。
矢野くんから逃れたくて歩くんに逃げた。
好きだって気持ちは確かにあった、けど矢野くん以上じゃない。
だから誰に逃げても矢野くんが気になって、気になって……
「矢野くんは、ずるい」
「あ?」
「ウザイって突き放すのに、僕が誰かのものになろうとすると取り戻しに来る、矢野くんの傍にいるのに、矢野くんは僕じゃなくて先輩に恋して、僕は寂しくて、誰か別の……矢野くんの代わりを探して……また矢野くんのところに帰ってきて……」
それを繰り返す。
「どうにかしてよ…」
矢野くんの胸に顔を寄せて、ぐずって、子供みたいだ。
僕は、花村さんみたいに綺麗じゃないし、山梨先輩みたいな温かい人でもない。
チビで、平凡で、矢野くんの玩具。
矢野くんみたいな人に、構ってもらえるだけ幸せなのかな。
玩具で満足できなくて、高望みして、振られて、反抗して、別の人のものになって、……汚れた玩具はこんどこそ捨てられるんじゃないのかな。
もう一度捨てられたら、もう戻ってこれないかも。
「……俺が悪い。」
矢野くんの手が、僕の背中を撫でる。
「俺が、ガキなままだから」
「……?矢野くん?」
「……初めて会った頃からゆずが居るのが当たり前だった。俺の味方になってくれるのはゆずだけだって、ずっと手放さなかった。年重ねて、王子扱いされるようになってからも、ゆずだけは……」
顔を上げてまっすぐに矢野くんを見た。
冗談を言っている感じではない。本気だ。
「……俺たち、何度目だろうな、こんな風に話すの……。なんで上手くいかないんだろうな……」
「…………僕のせいだね、」
僕が矢野くんを好きになったから。
友情を、恋愛感情に変えてしまったから…
「違う。……俺が先に手を出した。独り占めしたいからって、お前は小さくても男なのに、」
心だけじゃ満足出来なくなった。
「……僕のこと、抱きたいと思う?」
「ああ」
「……あの、勃起する?」
「は?」
矢野くんくんが何いってんだ、て笑う。
「いつもしてるだろ?」
「……歩くんが、その、勃たなくて……」
「はぁ?あいつインポかよ」
「でも、花村さんとはシてたみたいだし…」
「まぁ、そうか。つか、別れろよ。」
「え」
「え、じゃねぇ。俺の代わりだってわかったろ。もう必要ねえだろ」
必要ない?
「あの、でも……」
「でもじゃねぇ。お前俺と付き合う気あるのかよ」
付き合う?
矢野くんと?
……………………なんで?
「……僕のこと、好きなの……?」
「…………別れてきたら、教えてやってもいい。」
「えぇ……」
何それ、
すごく勝手。
でも、もしかしたら、僕が1番聞きたかった応えが、今なら返ってくるかもしれない。
「付き合ったばっかりなのに、もう別れるんだ…… 」
「は?まさか惜しんでるのか?」
「え、違うよ……けど、上手く別れられるか不安で…」
「一言だろ。そんなの。」
「僕はそんな矢野くんみたいなことできないよ…」
「グズだな」
「ぇ、あっ、」
ベッドに寝かされる。
矢野くんの体が覆い被さって、首筋に顔を埋められる。
「ん、やのくん?」
「僕、歩くんが抱いてくれないから浮気しちゃったんだ…………ていうのはどうだ?」
「え?」
「別れる理由になるだろ?作ってやるよ、理由」
矢野くんの手が僕の体をまさぐる。
服を捲り、平らな胸を指と舌で愛撫される。
「ぁ……駄目、…だめだよ、」
「なんでだよ」
「……ちゃんと別れてくるから、別れたら、別れられたら……その時して?」
「………ゆずのくせに、なに可愛いこと行っちゃってるんだか」
矢野くんが僕を見下ろしながら困ったように笑う。
「しかたないから、待っててやるよ」
矢野くんが優しく髪を撫でてくれる。
「うん、待ってて」
矢野くんの青い瞳を真っ直ぐに見て、誓った。
ここがあるべき場所なら、帰ってこよう。
絶対に。
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