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○月×日『大好き』
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「何日か前に、蘭さんに会った」
矢野くんが僕の手を握りながら、少しずつ、ゆっくり話し始める。
何日か前とは、僕が街で見かけたときのことだろう。
「俺はゆずを取られた気になって、あの人に甘えに行ったんだ。けど説教されたよ。自業自得だって。」
矢野くんが僕を見る。
「お前が側にいるのは当たり前なんだ。そんで、俺は好き勝手やって…、確かに自業自得だ。でも俺はお前が他に行くと不安になって、何かしてお前の気を俺に戻したくなる。……ガキの頃から何も変わってないんだ…」
僕の好きなオモチャ、話題、プレゼントのヘアピン。
幼い頃は幼いなりに。
なにかしらの手段で引きつけてた。
大きくなってからは肉体的に。
「セックス、……中学のときの、あれ初めてだった。」
「ぇ、ほんとに?」
「嘘ついてどうするんだよ。」
「そうだけど…、矢野くんはとっくに経験あるんだと思ってたから…」
「興味はあったけど、シたいやつはいなかった。初めては好きなやつとするもんだろ。」
……なんか、可愛いこと言ってる。
「お前の初めても俺がよかったんだ。」
「でも僕まだ童貞だけど…」
「だれがお前にヤらせるかよ」
矢野くんに睨まれる。
「お前は誰にも突っ込むな。突っ込ませるな。」
「……最初から矢野くんだけだったんだよ…?」
篤也さんも、歩くんも予定に無かったんだから。
「それは、悪かった。ごめん。……俺も、ゆずだけだから、ゆずも俺だけって約束しろよ」
「……矢野くんが先に約束してよ」
「は?」
「矢野くんばっかりずるい。僕はなんでも言いなりになるような……子分みたいになるのは嫌だよ…」
矢野くんに愛されたい。
そういう対象になりたいんだから。
前の矢野くんなら、ふざけるな、生意気だって怒ってたと思う。
けど、今の矢野くんは違う。
怒ったりも、茶化したりもしないはずだ。
そう瞳が語ってる。
真剣に僕だけをそのブルーの瞳に映してる。
「ゆず、好きだ」
僕の手を握ってた矢野くんの手が、僕の体を抱きしめた。
「お前だけだから、ずっと、この先ずっとだ。だからゆずも、俺だけだって言えよ」
矢野くんの顔は見えないけど、鼓動が早く聴こえる。
ドキドキしてる。
「矢野くんとずっと一緒にいる。矢野くんだけだよ、ずーと。」
嬉しくて涙が零れる。
矢野くんの体に腕を回した。
僕の今の気持ちを矢野くんに伝えたい。
「大好き」
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