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○月×日『秘密』
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矢野くんの家の玄関で立たずむ。
緊張して、吐きそうだ。
でも、もう1人で悩むのは限界だった。
「……、」
呼び鈴を押す。
反応はない。
一応ここに来る前に矢野くんにLINEはした。
ポケットからスマホを出して、矢野くんに送ったメッセージを確認するけど、既読はついていなかった。
でかけているんだろうか。
LINEじゃなくて、電話すれば良かったかな……。
でも、会って話したかった。
「まこと」
呼ばれて顔を上げると、玄関のドアを開けて将平くんが姿を現した。
「昂平なら出かけてるから、中で待ったら?」
正直、矢野くんがいないなら帰ろうかと思った。
それに将平くんとの接触は極力避けたい。
けど、待っていれば矢野くんに会えるなら……。
天秤にかけて、後者を選んだ。
「……じゃあ、お邪魔します」
家の中に入れてもらう。
将平くんに招かれるままにリビングに通される。
大きなテレビの前のソファーに座る。
テレビでは映画が流れてる。
将平くんは僕の隣に座ると、映画に目を向ける。
将平くんの意識は完全に映画に向いてるみたいだし、隣に座っていることに焦りはあったけど、意地悪される心配は無さそうだ。
矢野くんがいつ帰ってくるかわからないけど、早く帰ってきて欲しい。
暫く、隣にいる将平くんが気になって仕方なかったけど、時間が経つと、僕も映画に夢中になってた。
映画は洋画で、みたことがないものだった。
映画の主役は女性だったけど、字幕を目で追ってるうちにそのストーリーに共感してしまっていた。
幼馴染みに恋心を抱きつつも、学校の先輩に同級生と次々と恋をしていく主人公。
最終的には幼馴染みと結ばれるのかと思ったけど、幼馴染みとは破局し、突然現れた男と結ばれてしまった。
……共感する部分があった分、その結末に少しだけ落胆してしまった。
主人公は男の腕に抱かれ、愛おしそうにキスを繰り返す。
急に始まったラブシーンに少しだけ恥ずかしくなる。
前に矢野くんと映画を見た時も、ラブシーンが始まって恥ずかしくなって、僕は部屋を出ようとしたけど、矢野くんに捕まってそのまま丸裸にされてしまった。
一人でラブシーンを見る時は冷静なのに、なんで他に人がいると気恥しくなるんだろう……。
少しだけ俯いてラブシーンが終わるのを待つ。
将平くんは平気なのかな……。
気になって将平くんを見ると、いつからそうしていたのか、将平くんは僕のことをじっと見ていた。
青い瞳が真っ直ぐに僕を見てる。
将平くんはいつもの僕をからかうような表情ではなくて、見たことの無い、男の顔をしていた。
色気のあるその表情に、胸がドキドキと高鳴り出してしまったのは不覚だった。
だって、矢野くんにはこういった雰囲気は無い。
10も歳上の将平くんはやっぱり大人で、これが大人の男の色気なんだと思わされた。
将平くんが矢野くんに似てるのも悪い。
お兄さんなんだから、当たり前だけど、変な気分になる。
「まこと、どこ見てるの」
「え、」
問われて、自分が将平くんの唇を見ていたことに気づいて顔が熱くなった。
映画の中でキスをしながら抱き合う男女のせいか、将平くんの形のいい唇に目が釘付けになってた。
こんな所も矢野くんと同じ形をしてる。
「あ、将平くん……」
将平くんが身を乗り出して僕に近づくのを手で制す。
将平くんが何をしようとしてるのか予想できてしまったから、防衛本能が働いた。
「まことはさ、少し強引なくらいが好きなのかな」
「え、っ」
将平くんを制していた手を取られ、引き寄せられる。
バランスを崩して、将平くんの体にもたれる形になってしまう。
「ぁ、だめ……」
将平くんが僕の腰に片腕を回してホールドすると、首筋に顔を埋めてくる。
もう片方の空いた手が服の中に侵入して、胸の突起を摘むと、体が正直に反応する。
首筋から耳にかけて、唇と舌で愛撫されるのも、気持ちが良くて腰がガクガクと震え出す。
「ぁ、あ……だめ、だめ……」
口では嫌がるのに、体は全然嫌がってない。
将平くんがくれる愛撫に体は逃げようとしない。
「ん、んぅ、」
唇を割って舌がはいってくる。
口の中まで気持ちいい。
こんな快楽、しらない。
「ここで繋がらなくても、気持ちいいだろ?」
将平くんの指が、ズボンの上から僕のお尻の割れ目をなぞる。
「ん、ゃ……」
キスと、体を撫でられただけで骨抜きにされてしまった。
ズボンの中が苦しい。
将平くんの愛撫に夢中になってる内に勃起してしまったんだろう。
信じられない……、それでもまだ放心状態で、将平くんにもたれかかりながら呼吸を落ち着かせた。
「今日はもう帰りな?」
耳元で将平くんが囁く。
「昂平には内緒にしててあげる」
僕は言われるまま、家を出た。
落ち着かない、浮遊感がある。
体が熱い。
家に帰らなきゃ……
熱い。
早く、家に……
自分の家に入って、自分の部屋に駆け込んだ。
ズボンを脱いで、下着の中でぱんぱんに膨れ上がった自分のものを手にとって扱いた。
熱い、
熱い、
目を閉じて、さっきまで将平くんにされてた愛撫を思い返す。
「んんっ」
掌の中で果てる。
暫く放心して…………途端に、罪悪感でいっぱいになる。
自分の掌の中にある欲望を見下ろす。
これは、将平くんに与えられた快楽で出たものだ。
矢野くんじゃない、将平くんに。
僕は、矢野くんに会いに行ったのに、なんでこんなこと……
泣きそうになりながら後始末をすると、スマホに着信が入った。
「っ、矢野くんっ?」
ディスプレイに表示された名前を見て、何かに縋るような気持ちで通話ボタンをおしていた。
「ゆず、わるい、寝てたわ……」
矢野くんは眠そうな、いかにも今起きましたって声色だ。
「ぇ、寝てたの?」
「ああ、昼飯食った後横になったらついな……。LINEも今見た。今から来るか?」
僕は、矢野くんに"家に行ってもいいですか?"とLINEした。
結局、既読がつかなくて、待ちきれなくなって家を訪ねた僕に、将平くんは"昂平なら出かけてるから、中で待ったら?"と言った。
「矢野くん、…今起きたの…?」
「……?そうだけど。つか、昂平だって何回言えば……」
僕の手からスマホが落ちた。
落ちた衝撃で通話は切れたみたいで、矢野くんからの折り返しのコールが部屋に響く。
…………信じられない。
矢野くんの家で、矢野くんが居たのに将平くんは僕にあんなことしたの?
ゾッとした。
"昂平には内緒にしててあげる"なんて言ってたけど、その行為は大胆そのもので、あと30分も遅くあの場に居たら矢野くんの目にふれてたかもしれない。
抵抗できないものじゃなかった。
なのに将平くんに好き勝手されてた。
あんな姿を見られてたかもしれないなんて……
怖い。
将平くんも。
将平くんから逃げない僕自身も。
矢野くんにまた、秘密ができてしまった。
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