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○月×日『目撃者②』
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ワンルームに笑い声が響く。
声の主は花村さんだ。
「あの……」
そんなに笑える内容だったんだろうか?
そんなはずはないと思うけど……。
僕は花村さんの部屋で、花村さんに正直に話すことにした。
本当は将平くんに相談したかったけど、花村さんはそんな隙はくれなかったし、事情を話さないなら矢野くんに話されてしまう。
「あの……花村さん?」
「いやいや、マジで笑えるよ、きみ」
花村さんはやっと笑いを収めると、一息ついてから僕を見る。
「きみのこと見直した」
「え、」
「昂平に一泡吹かせたいってさ、俺も思ってたんだよねぇ」
え、なんで花村さんが……?
花村さんは矢野くんを脅して好き勝手してたわけだから、いい思いしかしてないんじゃ……?
「きみってわかりやすいよねぇ。失礼なこと考えてるでしょ。俺に対する昂平の態度、普通にムカつくじゃん。あっちだってそれなりに楽しんだくせにさぁ。」
被害者の僕からしたらその言い分は全く理解できないけど、下手な事言って機嫌を損なってもらっては困るから、黙っておく。
「で、昂平の兄貴はどうなの?」
「……どうって…」
「セックス上手いの?」
「……、」
なんで僕花村さんとこんな話してるんだろ。
花村さんも、将平くんとのセックスが良かったかどうか聞いてどうしたいんだろ。
……まさかとは思うけど、黙ってる代わりに自分にまわせなんてこと……。
そんなことを考えていると、花村さんはまた僕の考えを読み取ったみたいだった。
「……きみってマジで失礼すぎ。俺が昂平の兄貴とヤるわけないじゃん。俺にはあゆっていう彼氏がいるんだし」
「え、彼氏?」
今、彼氏って言った。
「付き合うことになったんですねっ」
歩くんは明らかに花村さんに好意があったけど、体だけの関係に不満があった。
付き合うことになったのなら、歩くんにとっていい出来事だ。
僕にとっても嬉しい出来事だ。
「……きみさ、あゆのこと好きだったんじゃなかったっけ?なんでそんな嬉しそうな顔ができるの」
花村さんが心底不思議って顔で見てくる。
「え、なんでっていわれても……」
そんな顔て、素直に嬉しいからだと思うんだけど。
「歩くんが花村さんを好きなのはなんとなく知ってたから……、花村さんも歩くんを好きで、付き合うことになったなら、良かったなって」
「…………きみって、いい子だね」
花村さんが大きな瞳をまんまるくして、ポツリと呟いた。
それはからかいとか、馬鹿にした言葉じゃなくて、素直な気持ちが溢れ出た、という感じだった。
「あ、ありがとうございます。」
とりあえず褒められた?ぽいので、お礼を言っておく。
「ぁ、僕今は歩くんのことは何とも……、だから、気にしないでください」
「そこは別に気にしてないけど。」
「ぁ、そうですか、すみません……」
余計なお世話だったか……。
でも、あの頃のことはほんとに、いい思い出というか、歩くんに恋してた気持ちだけ大事に取っておきたいというか……。
花村さんに色々されたことは正直、忘れたいけど。
「話戻すけど。きみの浮気相手取ったりしないからさ、むしろ協力する。もっと色々教えてよ」
なんか、恋バナしよって言われてるみたいだ。
花村さんは矢野くんにバラす気はないようだし、いいのかな……。
「えっと、将平くんは、最初は怖かったけど、今は凄く優しくて……それは将平くんにも目的があるって解ってるけど、そう感じさせないくらいに優しくて、」
「優しいのはわかったよ。エッチは?エッチも優しいの?」
「…ぇ…ん、凄く……、…凄く気持ちよくて」
「へぇ、優しくてエッチ上手いとか最高じゃん。いい浮気相手だねぇ。昂平てテク無しだからねぇ」
「え、花村さんでも気にするんですか、そういうの」
「ちょっと、馬鹿にしないでよ。数こなせばいいってもんでもないよ。質がいいに越したことないっしょ。昂平は乱暴だし相手のこと気遣うタイプじゃないじゃん。まぁ、俺に対してだけかと思ったけどさ、君に対してもなんだ?恋人に対してもそれってさ、セックスじゃないよ。オナニーっしょ」
「……、」
そっか。
そうだよね。
わかってたことだけど、今しっくりきたかも。
オナニーか。
なるほど……。
だから、虚しさがあったんだ。
「……ありがとうございます、」
「え?」
「自分でも解ってたんです、でも……花村さんに言葉にしてもらって、スッキリしたっていうか……」
「……まぁ、しんどいよね。好きだと余計にね」
「はい……」
矢野くんが好きだ。
だから辛い。
「なんかさ、今のきみとなら仲良くできそうかも。」
「え」
「どう?愚痴りたくなったら聞いてあげてもいいよ?俺と仲良くしといて損は無いっしょ?」
綺麗な顔がニヤリと笑う。
いたずらっぽいそれは、企んでると言うよりは、素直に楽しんでるって感じだ。
「友達てことですか?」
「友達!うわ、友達とかいないからわかんないっ」
ケラケラと花村さんが笑う。
「恋バナできる友達ていいかも。」
いたずらっぽい顔が、少し照れくさそうにする。
花村さんと友達。
考えたこともなかった。
でも、面白いかもしれない。
ほんとに友達になれたら、いいよね。
「じゃあ、よろしくお願いします……友達、」
「ウケるけどね、ぼくときみが友達とかさ。ま、よろしく」
軽く握手を交わす。
「ぁ、もう闇討ちしたり、乱交とかは無しで……」
過去の嫌な出来事を口にすると、花村さんが気まずそうな顔をする。
「友達にそんなことしませーん」
口をとんがらせながら花村さんが呟く。
「約束ですよ。花村…………茜さん、」
少し控えめに名前を呼んでみる。
「約束ね。まことくん」
うわ、なんか、友達っぽい……。
油断はしない方がいいのはわかってる。
けど、これは嬉しい展開だと思う。
友達が出来てしまった。
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