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○月×日『王様』
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「大丈夫かなぁ、この子」
将平くんがソファに座り、長い脚を組む。
胸の前で腕を組み、花村さんにあからさまな疑いの目を向ける。
「やばい、イケメンじゃん、脚ながー」
花村さんは将平くんの前に座ってキャッキャと女子高生のようにはしゃいでる。
ちなみにここは花村さんの部屋だ。
僕は花村さんにバレたことを将平くんに話した。
すると将平くんはすぐに花村さんと話がしたいから会わせてくれと言ってきた。
そして今に至るわけだ。
「顔は昂平なのに兄貴のがイケメンじゃん。まことって面食いだなぁ」
花村さんは相変わらずマイペースで、僕と将平くんはそのテンションに若干引いてしまってた。
「こら、茜くん。話を聞いてもらっていいかな」
将平くんが花村さんの顎を指で……いわゆる顎クイてやつをして見下ろす。
花村さんは将平くんに見下ろされてほのかに頬をピンク色に染めてる。
「俺とまことのことは他言無用だよ。約束できるかな」
将平くんがとびきりの作り笑いで花村さんに微笑む。
「約束するする、まかせてよ。誰にも言わないからさ」
花村さんがキメ顔でウィンクをする。
将平くんは作り笑いのままだけど、額に血管が浮き上がりそうで怖い雰囲気を出してる。
「信用ならないな。なにか人質か物質とろうか」
将平くんが僕に向かって優しく微笑む。
けど言ってることは物騒だ。
「えー、嘘じゃないよぉ。」
「黙ってるかわりにまことと友達に?」
「別にそういうわけじゃないけどさぁ」
「茜くん。まことから聞いてるけど、きみはまことにかなり酷いことをしてきたよね。またなにか企んでると思うのが普通だろ?」
正直、僕も花村さんを信用するのは怖い。
たぶん、花村さん……茜さんは、歩くんと付き合って、自分は変わったとアピールしたい節があるんだと思う。
それと、やっぱり面白がってるんだとも思う。
でも、変わろうと、そういう努力をしてるなら、信じてみてもいいかな……とは思うけど、頭を殴られたり、乱交に巻き込まれそうになったことがある事実が根強くて、どう信じていいかわからなかった。
「酷いことしたのは、悪かったよ。ごめんね、もうしないよ」
茜さんが僕と将平くんを交互に見る。
「まぁ、俺とまことの関係のことで俺たちを脅すメリットも君にはないのかな」
「ないない」
また茜さんがヘラヘラと笑う。
「まぁ、前の俺なら俺にも味見させろ、位はいってたけど、今はあゆ一筋だからねー」
なぜかドヤ顔で言う茜さん。
それを将平くんが呆れ顔でみる。
「あゆって彼氏?まさかその彼には話してないよね」
「え?」
「え、じゃないよ。話してないよね?」
「えーとぉ」
茜さんが将平くんから目をそらす。
「茜さん……っ」
さすがに僕もたまらずに茜さんを不安いっぱいな気持ちで見る。
「いやいや、だってあゆとラブホ行ったんだよ?あゆも見ちゃってるもん。あゆが変に勘ぐるより先に説明しとかないとさぁ」
茜さんが最もらしいことを言う。
「なるほど。それで彼は?」
「不満そうだったよ。まことが浮気とかさ、あゆは想像も理解もできないみたいだったよ」
…………そうかもしれない。
歩くんは純粋な子だ。
彼と付き合ってた頃、お互い純粋な気持ちで付き合ってた。
その純粋さが茜さんを包み込んだから、2人は付き合い始めたんじゃないかな……。
僕はもう、歩くんとは違ってしまったんだ……。
「あゆのことなら心配ないよ。ムカつくけどさぁ、あゆはまことのこと好きだからぁ?まことが嫌がることしないよ」
茜さんがさっきまでとは打って変わって真面目な顔で僕を見てくる。
「…………はい、」
「好きは好きでもライクだからね。ラブは俺だから」
「ぁ、はい…」
念を押されて苦笑いが漏れる。
「そうだな。じゃあ、俺とまことのこと口外したら、歩くんヤっちゃうおうか」
「はぁっ!?」
「えっ」
僕と花村さんが声を揃えて驚く。
そんな僕らに将平くんがとびきり綺麗な笑顔を向ける。
……人質て、そういうこと?
将平くんが怖くなる。
茜さんも少しだけ青ざめて見える。
「うそうそ、冗談だよ。そんな事しないって」
将平くんは笑ってるけど、茜さんにはかなりのダメージがあったみたいだ。
たぶん自分が平気でしてきたことだからだ。
因果応報とでもいうのか、茜さんも将平くんを信用していないから、将平くんの嘘を間に受けている。
でも、将平くんには嘘だと思わせないような空気を感じる。
それが怖いんだ。
「……誰にも言わない。約束するよ」
「うん、そうしてくれると助かるな。茜くん。」
これはお願いなんて可愛いものじゃないのはわかった。
脅しに近い。
矢野くんが王子様なら、将平くんは王様だ。
茜さんも、僕も、きっと逆らえない。
また新しい将平くんの一面を見てしまった。
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