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○月×日『躊躇う』
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学校から帰宅して部屋に入ると同時に、スマホに着信が入る。
ディスプレイには"将平くん"の文字。
指がスワイプするのを躊躇う。
ついさっきまで矢野くんと一緒にいた。
学校から家までの帰路、一緒に過ごした休日の話で盛り上がった。
すごく楽しかった、また行こうと約束した。
いくら矢野くんと過ごした日が楽しくても、今更将平くんのことをなかったことには出来ない。
意を決してディスプレイをスワイプする。
「まこと、もう帰った?」
スマホを耳に当てると、将平くんの柔らかい声が聞こえる。
「うん、今帰ってきたところ」
カバンを床に置いて、ベッドに腰掛ける。
「そろそろ今後のこと話とかないとと思って」
「今後……?」
「そろそろ昂平に話す頃かと思って」
「え」
そもそもはそれが目的だ。
将平くんとの関係は、僕の口から、僕のタイミングで話すつもりで、今まで温めてきた。
……でも、正直今は迷がある。
矢野くんが僕に夢中になれば夢中になるほど矢野くんに与える傷は大きくなるからいいと思ってた。
けど、僕は……今の時間を手放したくないと思い始めてる。
「ん?どうかした?」
僕の動揺を感じ取ったのか、将平くんが様子を伺ってくる。
「ぁ、ううん。えっと、ちょっと、まだいい伝えた方考えてなくて……」
「そっか。でももう大丈夫だと思うけど?まことと出かけたあとから昂平のやつご機嫌だから。」
水族館でデートしたの、矢野くんも楽しんでくれたんだ。
しかも将平くんに分かるほどご機嫌とは。
「もしかしてまだ俺と寝たいとか?」
「えっ」
「はは、嘘嘘。まぁ、任せるよ。俺はただの協力者だからね。たださ、あんまりのんびりしてると良くないかもね」
そうだ。
僕と将平くんの秘密だったのに、今では茜さんに、歩くん、山梨先輩までもが知ってる。
口止めしたと言っても、いつどこから漏れるかわからない。
自分で決着をつけると決めたんだ。
「うん……、近いうちに、」
「わかったよ。楽しみにしてる」
通話が切れる。
さっきまでの暖かい気持ちが、一気に吹き消されてしまった。
楽しみに……か、
将平くんには、何かあるんだろうな。
僕が矢野くんに伝えた時、将平くんはどうするんだろう。
何をしようとしてるんだろう。
僕も、決めないと。
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