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○月×日『3度目の』
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篤也さんから呼び出されてアパートへ向かうと、篤也さんの部屋から人が出てくるのが見えて思わず身を隠してしまった。
篤也さんとの関係は誰にも知られたくない。
その思いからか体が勝手に反応してしまった。
篤也さんは僕や矢野くんの通う学校の先輩だ。
顔見知りが篤也さんとも知り合いの可能性だってある。
それに、矢野くんは篤也さんと仲がいいみたいだし、万が一もある。
僕はそっと物陰から篤也さんの部屋から出て来た人物を確認する。
「え…」
間抜けにも、驚愕のあまり声を漏らしてしまった。
それに当然気づいた彼は僕に近寄ってへらりと笑った。
「あれ、柚野ちゃんじゃないのー」
山梨先輩だ。
「先輩…あの、…僕…」
「木崎さんに用でしょ?」
「ぇ…いえ…、…あの…はい」
「木崎さんとは…」
僕の心を読んだみたいに先輩が自分と篤也さんとの関係を話してくれた。
山梨先輩が一年生の時に仲の良かった先輩の友達が篤也さんで、今日は篤也さんに借りていたものを返しに来たという話だった。
「だから、心配しないでね」
「…え?」
何を?とは聞けなかった。
見上げた先輩の顔が、いつかの表情と同じだったから。
先輩のこんな表情を見るのは3度目だ。
「じゃあ、バイバイ」
先輩は僕の言葉を待たずに去ってしまった。
『心配しないでね?』
どういう意味だろう。
でも、なぜだか背筋がヒンヤリした。
嫌な予感がする。
僕は慌てて篤也さんの部屋に飛び込んだ。
「…篤也さ…?」
ベッドに腰をかけて俯く篤也さんに恐る恐る声をかける。
だけど、篤也さんから返事は無く、俯いたその顔から表情は見えなかったけど、酷く落ち込んでるようなそんな雰囲気が見て取れた。
無言で、強く握った拳を真っ直ぐに見下ろしている。
「また、来ます…」
篤也さんに向けて放った言葉に、やっぱり篤也さをから答えは返ってこなかった。
僕は静かに部屋を出て、真っ直ぐ家へと向かった。
帰路、山梨先輩と篤也さんのことで頭の中がぐちゃぐちゃだった。
心配しないでねと言った山梨先輩。
見たことない雰囲気を放っていた篤也さん。
二人に何があったのか…
そんなの想像もつかなかった。
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