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○月×日『パスワード』
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ベッドに腰掛けて、携帯を操作する。
ロック画面を解くためのパスワードは自分の誕生日にしていた。
…変更しなくちゃいけない。
万が一に備えなくてはいけない。
次に矢野君が僕の携帯を手にしたら、見破ってしまいそうな気がするから。
「…あの、誕生日、いつですか?」
「あ?」
僕の作った夕食を食べていた篤也さんが顔を上げる。
「誕生日…」
「……もうとっくに過ぎてるけど?祝う気か?」
「ぁ…ちがくて…、あの…」
言い淀む僕に、篤也さんは怪訝そうに顔をしかめる。
だけど、夕食に目をうつして出し巻き卵を口に放り込みながら一言。
「6月9日」
僕は嬉しくなった。
「ありがとうございます」
お礼を言って、携帯を操作した。
パスワードの変更画面を開いて、今聞いたばかりの数字を打ち込んだ。
「そういや、したことなかったよなぁ」
パスワードの変更がすんで満足する僕に、篤也さんは「ご馳走様」と手を合わせながら視線を送ってくる。
「シックスナイン」
篤也さんの綺麗な形をした唇が怪しく弧を描く。
聞いたことない単語に首を傾げていると、腰を上げた篤也さんが近づいて来て僕の身体をベッドに押し倒す。
「試してみる?」
僕を見下ろす彼を、ゆっくり見上げた。
言葉に詰まる僕を、篤也さんは胸に抱くと小さく笑った。
「嘘だよ」
穏やかに微笑む彼に、僕は言い表せない気持ちを感じた。
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